カネミ油症新認定訴訟 「除斥」を理由に高裁でも敗訴

大久保貞利(カネミ油症被害者支援センター共同代表)

判決時間わずか30秒
 2月24日、福岡高裁でカネミ新認定訴訟控訴審が開かれ、原告(患者)の請求を棄却する不当判決が出されました。裁判長は判決主文のみ読み上げ、判決理由は読まずわずか30秒で終わり、裁判官3人は逃げるように法廷を去りました。内容は、1審同様に加害企業カネミ倉庫の責任は認めていますが、「除斥(じょせき)期間」が経過しているので、原告の請求権は消滅しているとしました。除斥期間とは「不法行為の時から20年を経過すると請求権は消滅する」という民法724条後段で規定されているものです。

PCDF(ダイオキシン類)が主原因と判明し「新認定患者」が生まれた
 カネミ油症事件は1968年に起こった我が国最大の食品中毒事件です。当時保健所に被害を届けた人は1万4千人以上に上ります、当初はカネミ食用油にPCB(ポリ塩化ビフェニール)が混入したとし、塩素ニキビや目やにといった外見症状を中心に判断した認定基準により、約1800人が認定されました。この人たちを旧認定患者といいます。しかし、何年経っても病状は改善せず、むしろ内臓疾患など全身に症状が拡大するため、PCB以外にも原因があるのではと推測され、結局、PCB(これ自体毒性は強いが)よりはるかに猛毒なダイオキシン類のPCDF(ジベンゾ・フラン)主原因と判明しました。
 こうして2004年に、PCDFの血中濃度判定を含む新認定基準に改訂され、新たに「新認定患者」が生まれました。この時点で事件発生以来20年以上が経過していました。

一時金はわずか23万円で我慢しろというのか
 旧認定患者には、カネミ倉庫が支払う医療費負担の他に、一人当たり少なくとも300万円以上が賠償金として支払われました。しかし新認定患者は認定されるまでの医療負担は自己負担ですし、認定された時の一時金はカネミ倉庫からの23万円の見舞金しか支払われません。健康を害した被害者は仕事選択も狭められ、生活は厳しい状態です。そこで2008年に「一人当たり1100万円の賠償金を求める」新認定被害者損害賠償訴訟が提起されたのです。

2004年の最高裁判例は除斥期間開始時を柔軟に解釈している
 争点は除斥期間の解釈です。民法724条は「不法行為の時から20年間」を除斥期間としています。1審も控訴審も除斥期間の起算点を「油症事件が起こった1968年から1年経過した1969年末」とし、それから20年で除斥期間は終了し、損害賠償請求権は消滅するとしています。つまり1989年末で「訴える権利」は無くなるというのです。
 不法行為の時を「加害行為の時」(被告カネミ倉庫主張)とするか、「認定時」(原告被害者主張)とするかついては、2004年4月24日の「筑豊じん肺最高裁判例」で「起算点を加害行為の時と狭く限定するのでなく、権利行使が客観的に可能なほどに損害が顕在化した時を起算点とする」画期的な判断が示されました。これをカネミ新認定訴訟に当てはめれば、「事件が起こった1969年末」でなく「認定された時」つまり2004年が起算点にすべきです。なぜならば、認定されていないのに訴訟を起こせば、「患者ではないから」と請求が棄却されるのは火を見るより明らかだからです。

司法の責任を放棄したデタラメ判決
 原告らが「認定されなければ被害者としての権利行使はできなかった」との主張について、判決は「油症認定は法的証拠でないから、認定を受けていないことは事実上の障害に過ぎず、法律上の障害には当たらない」としています。これはカネミ油症において「認定されているか否か」が天と地ほども違うという現実を知らない意見です。また「行政上の認定は、損害賠償とは別の次元で公益的な救済のための法律でなされるべき」と言っています。これは被害者救済における司法の役割を放棄した無責任極まる見解です。

2世、3世だけでなく、原発被害者救済にも悪影響な判決
 加害行為の時から20年で権利消滅という今回の福岡高裁判決がまかり通れば、2012年に成立したカネミ救済法で新たに認定された約300名の患者、2世や3世の被害者、はたまた福島第1原発事故により、やがて発症するかもしれない人も、損害賠償請求ができなくなる事態も起こりえます。

私たちは最高裁に上告し、闘います
 こんな時代遅れで不正義の判決を許すわけにはいきません。原告、弁護団は最高裁に上告し、争うことを決めました。カネミ油症被害者の救済は国民的課題だと思います。

カテゴリー: 寄稿・投稿 

最近24時間の訪問者上位記事

Copyright(c)電磁波問題市民研究会 All Rights Reserved.