WHOが資金を提供した、高周波電磁波(電波)曝露とがんの関係を調べた動物実験のシステマティックレビュー(系統的レビュー。SR[1])論文[2]が4月に公表され、2種類のがんについて、電波曝露との関連を示す証拠は高い確実性があると結論づけました。
Meike Mevissen(メビスン)らの論文は、52件の動物実験に関するシステマティックレビューを行い、高周波電磁波と、脳神経膠腫および心臓悪性神経鞘腫という2種類のがんとの関連を示すエビデンスには高い確実性があると結論付けました。また、リンパ腫、副腎の褐色細胞腫、肝臓の肝芽腫、肺腫瘍のリスク増加を示すエビデンスについても、中程度の確実性を認めました。
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)に批判的な研究者らで作る「電磁波の生物学的影響に関する国際委員会(ICBE-EMF)」は、この論文の発表を受けて「この高い確実性を考慮すると、世界中の政府の政策立案者は、公衆衛生と環境を保護するために、高周波電磁波の被曝限度の見直しに直ちに取り組むべきです」とのプレスリリースを出しました[3]。

高周波電磁波についての環境保健クライテリア[4]をまとめるために、WHOは各分野のSRを研究者へ委託しました。本会報の9頁からの記事で紹介している総務省審議会の配付資料に、これらSRの一覧が掲載されています(上の表)。資料の配付時点では、がんについての動物実験のレビュー(つまり今回の論文)だけが未公開でした。
WHOが委託したSRのうち、今回の論文以外のSRの結果は、高周波電磁波による健康影響の証拠は確認できないと結論づけるものが多く、それらの論文に対して「科学的に妥当でない」という批判も研究者らから起きています(会報第149号参照)。【網代太郎】
[1]システマティックレビューは、特定の研究テーマに関する既存の文献を網羅的に収集し、批判的に評価・分析して、その結果を統合する研究手法
[2]Effects of radiofrequency electromagnetic field exposure on cancer in laboratory animal studies, a systematic review
[3]New WHO-Funded Study Reports High Certainty of the Evidence Linking Cell Phone Radiation to Cancer in Animals
[4]環境保健クライテリア(環境保健基準)は、様々な化学物質や騒音、電磁波、放射性核種などがヒトの健康や環境に与える影響について、専門家が評価した結果をWHOなどがまとめたもの
