GIGAスクール構想とは

※以下は、会報125号に掲載した記事に加筆したものです。

 「GIGA(Global and Innovation Gateway for ALL)スクール構想」は、小中学校でタブレットなどの端末を児童生徒が1人1台ずつ使いながら授業を受けるための端末配備と、校内無線LAN(Wi-Fi)などの高速ネット通信整備とを一体的に行うという政府の施策です。国内で相次いだ災害からの復旧や、東京五輪後の景気悪化リスクに対応するためとして、昨年(2019年)12月に政府が閣議決定した「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」の中に初登場しました。新型コロナの流行前の決定であり、「リモート学習」とは直接の関係はありません。

「経済対策」として登場
 同対策には次の通り書かれています。「新たな時代を担う人材の教育や、特別な支援を必要とするなどの多様な子供たちを誰一人取り残すことのない一人一人に応じた個別最適化学習にふさわしい環境を速やかに整備するため、学校における高速大容量のネットワーク環境(校内LAN)の整備を推進するとともに、特に、義務教育段階において、令和5年度までに、全学年の児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指すこととし、事業を実施する地方公共団体に対し、国として継続的に財源を確保し、必要な支援を講ずることとする。あわせて教育人材や教育内容といったソフト面でも対応を行う」。
 GIGAスクール構想の予算は4年間で合計約4300億円。このうち、2318億円が2019年度補正予算案に計上され、今年(2020年)1月に参議院本会議で可決、成立しました。
 国は以前から「教育のICT(情報通信技術)化」と称して、学校内へのコンピュータ、プロジェクタ、電子黒板などのICT機器やWi-Fi導入を進めてきました。たとえば「第2期教育振興基本計画(2013~7年度)」では、児童生徒3.6人に教育用コンピュータ1台、無線LAN整備率100%などを目標としていました。目標達成率は地方によるバラツキが大きく、全国的には達成されませんでした。文科省の統計[1]によると今年3月現在、教育用コンピュータは児童生徒4.9人に1台、普通教室の無線LAN整備率は48.3%(有線LANを含めると91.2%)てす。文科省の目論見通りにICT化が進まない理由として、2016年に電磁波問題市民研究会が文科省にヒアリングをした際に、主に教育予算の制約から自治体の判断でICT化が後回しにされがちである旨の説明がありました。GIGAスクール構想によって、これが一気に進みそうです。

教育のICT化による効果は不明

 文科省は「1人1台端末」の授業により「教師は授業中でも一人一人の反応を把握できる」「一人一人の教育的ニーズや、学習状況に応じた個別学習が可能」などとメリットをうたっています。しかし、教育のICT化の有効性は十分に検証されておらず、むしろ逆効果との指摘さえあります。
 たとえば、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は前述の通り全国平均で4.9人ですが、1.8人とダントツでコンピュータが多い佐賀県は、2019年度の全国学力テストの正答率が43位(下から5位)でした。
 また、慶応大学のグループが「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2015」のデータを分析したところ、プロジェクタを除くICT機器の使用は各国とも概ね学力に対して負の影響を与えており、政策意図とは逆に学力を引き下げていることが分かりました[2]。その理由として同グループは「教員のICT活用能力や教材の内容・質が現状では十分ではないことが考えられる」としながら、それらが「十分」になったとしても「学力に正の影響を与えない可能性も考えられる」とも述べています。
 テストの点数が学力のすべてではないとも言えますが、教育のICT化に点数で表現できない学力向上効果や、その他のメリットがあるという客観的な根拠も、これまで明確に示されたことはありません。

電磁波による健康影響
 GIGAスクール構想でますます加速すると見られる校内のWi-Fi整備も、大きな問題点です。電磁波過敏症の子どもは校内の居場所がなくなり、教育を受ける権利が侵害されるおそれがあります。
 通信で利用されている電波(高周波電磁波)がヒトの健康に影響を与える可能性を示す研究報告が増え続けています。子どもに関しても、学校の近くの携帯電話基地局の電波によって生徒たちの認知機能が悪化することを示す研究報告[3]などがあります。電磁波過敏症ではない子どもへの電磁波の影響は、すぐに目に見える形で現れず、10年以上たってそれが分かった時には手遅れという可能性もあります。そのため、予防原則の考え方から、フランスは2015年、法律で保育園でのWi-Fi使用を禁止し、小学校では授業に使わないときにWi-Fiの電源をオフにすることを義務づけました。イスラエル、キプロスなども同様の対応をしています。
 ICT機器の有効な活用法が未確定である以上、1人1台の端末、全教室へのLAN導入を急ぐべき正当な理由はありません。校内LANが必要な場合はWi-Fiではなく有線LANにすべきです。やむを得ずWi-Fiにする場合には使用中以外は電源オフにすべきです。【網代太郎】

[1]文部科学省「令和元年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)(令和2年3月現在)」
[2]慶應義塾大学山田篤裕研究会「ICTを活用した教育効果について」2018年11月
[3]Sultan Ayoub Meoら「Mobile Phone Base Station Tower Settings Adjacent to School Buildings: Impact on Students’ Cognitive Health」2018年

 

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする