来年度から小中学校に導入のデジタル教科書ダウンロード版の提供要望に文科省から回答

中西泰子さん(こどもの学習環境を守る会、兵庫県)

文部科学省のウェブサイトより

 来年度から導入されるデジタル教科書で、国が提供するのはクラウド版だけであるとの国の方針について、電波による通信がより少なくなるダウンロード版の提供を求めて、中西泰子さんが署名運動に取り組みました。当会もこの活動に協力し、会報第142号に署名用紙を同封しました。中西さんは9月26日までに、2624筆の署名を文部科学省へ提出しました。
 署名による要望に対して、文科省の佐々木葵・初等中等教育局教科書課課長補佐から10月上旬に電話で中西さんへ回答がありました。回答内容について、中西さんがご報告くださいました。
 文科省は「デジタル教科書を必ず使えという法律はありません。クラウド版、ダウンロード版というところよりは、紙の教科書をぜひ使ってもらいたいところ」と回答したとのことです。中西さんらと文科省との話し合い(会報第143号参照)でも感じましたが、自らデジタル教科書を推進している文科省が「紙の教科書を使って」と言うのは大きな違和感があります。中西さんもご心配されている通り、今は「義務じゃないから」と言いつつ、デジタル教科書導入後、将来的には義務化するつもりではないでしょうか。今後とも、文科省の動向を注視する必要があります。【網代太郎】


「紙の教科書をぜひ使って」
 要望事項①:全国のデジタル教科書をクラウド版ではなくダウンロード版に変更してください。
 文科省:政府全体でデジタル化を進めている状況の中、総務省が安全と言っているものに関して、文科省はそれに則った対応になります。文科省としましては、いろいろある教材へのアクセス、学習支援ツールとの連携を図るためにも、クラウド版である必要があると考えております。一方でデジタル教科書を学校の外で利用する際に常に通信環境が整っているわけではないことがあり、非通信環境下でも閲覧ができる様なオフライン機能というものにニーズがあり、実際にそういうニーズを受けてデジタル教科書発行者の方でもオフライン機能というものを備えているところもあるため、使用ページを開いた後にオフラインにすることで対応できるのではと考えています。
 そもそも紙の教科書は法律上使用義務が課せられており、公教育の質の担保がされています。一方デジタル教科書は使用義務がかかっていないので、当然紙の教科書があっての上でのデジタル教科書というところなので、デジタル教科書を必ず使えという法律はありません。クラウド版、ダウンロード版というところよりは、紙の教科書をぜひ使ってもらいたいところです。

「省内の関連部署で要望内容を共有」
 要望事項②:Wi-Fi環境下でひどい頭痛やめまい、胸痛などを起こす子供たちがいることを、文部科学大臣、文部科学省各関連部署、デジタル学習基盤特別委員会委員の方々全員にこの署名を見ていただき、誰一人取り残すことのない学びの実現のために、次回のデジタル学習基盤特別委員会の会議の議題に挙げていただき、具体的にご対応を明示してください。
 文科省:デジタル学習基盤特別委員会では、たくさんの議題があるので取り上げることはできませんが、文科省の関連部署で、情報共有させていただきます。デジタル学習基盤特別委員会では、省庁外の方々の意見を出す場でそれを実行するかどうかは文科省内部で決めることなので、文科省内での情報共有で大丈夫です。

過敏症等の子については「自治体が対応」
 要望事項③:全国の学校に対してダウンロード版が難しい場合、保護者からの申し出があった時は、周囲がWi-Fiに常時接続状態だと症状が出てしまうため、対象の子供がいる学校全員分のデジタル教科書を国の税金でダウンロード版に変更できる様にしてください。地方自治体での対応となりますと、国の税金と自治体の税金の2重の費用がかかるのでそう言ったことのないようにしてください。また出版社や教科によりダウンロード版の用意がないということがないようにしてください。
 文科省:文科省としましては、クラウド版の必要性があるので、対象の子供がいた場合、設置者(地方自治体)での対応になります。


 (中西より)今回の署名では2624筆の方々にご賛同いただき、誠にありがとうございました。
 文科省からのお話の中で、上に記載した以外に、「英語でのデジタル教科書は主に音声を聞くものになるかと思いますが、学校でWi-Fi下でできない場合、各自、家で発音の練習を宿題でしてきて、学校ではその実践の形をとることで対応できるのでは。また算数では立体図形の展開図などでよく使うことになるが、それも事前に家で見てくることで対応できるのではないか」とお話しいただきました。こういったご提案はありがたかったです。
 問題は、本格的に導入された後、デジタル教科書が浸透してきたときに、電磁波過敏症の子供に対して紙の教科書をベースに対応していただけるかということかと思いました。文科省は紙の教科書を使えばいいとのお話ですが、政府はデジタル化を進めており、法律で定められている紙の教科書も今後変わりうるのではないかという心配がなくなっておりません。現場の先生方もPCの活用状況を日々チェックされている側で、デジタルを取り入れないといけないプレッシャーを感じておられることと思います。
 今後もこの問題にご一緒に向き合っていただきたいと思います。

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