来年度から始まるデジタル教科書 国が提供するクラウド版ではWi-Fiつけっぱなしの恐れ ダウンロード版の提供求める署名

東麻衣子さん(アナログメーターの存続を望む会、電磁波研会員)

 来年度から導入されるデジタル教科書について、国が提供するのはクラウド版だけだということが分かりました。「クラウド」とは、データをパソコン・タブレットなどの端末内に保存するのではなく、ネット上に保存するものです。子どもがデジタル教科書を読むときに、基本的にネットに接続し続けなければなりません。このことを知った中西泰子さんは、データ(教科書の内容)を端末内に保存できるダウンロード版の提供を求めて、署名運動に取り組むことにしました。中西さんはご自身が電磁波過敏症で、小学生のお子さんにも電磁波被曝で頭痛がすることがあり、学校でのWi-Fiの利用時間が多くなると症状が悪化して学校へ行けなくなり学びの機会を失ってしまう事を危惧されています。中西さんからのご依頼により、署名用紙をこの会報に同封しました。
 中西さんからこの情報を受けて文部科学省に問い合わせた東さんに、ご寄稿いただきました。


文部科学省のウェブサイトより

 いつも大変お世話になっております。アナログメーターの存続を望む会の東です。
 過敏症の中西さんからデジタル教科書について相談を受けました。中西さんが文科省の教科書課に問い合わせたところ、令和6年から英語をデジタル教科書にしていくことがわかりました。文科省はデジタル教科書のクラウド版を提供し、出版社によってダウンロード版も用意していますが、その場合は学校や教育委員会でダウンロード版を購入することになるようです。クラウド版が税金で支給される形になったら、わざわざダウンロード版を
購入することを、学校や教育委員会がしてくれるとはとても考えられません。また、ダウンロード版を用意していない出版社もあるそうです。
 現在、電磁波過敏症で苦しんでいる人もいるのに、小学校から大学までの16年間、使うことに不安があると中西さんは懸念しています。
 リスクのあるクラウド版デジタル教科書を使い続けるより、高周波の影響のないダウンロード版にお願いしたいと思うのですが、問い合わせた教科書課では自分のところに決定権はないとのことでした。
 中西さんが電話をかけてわかったことは、Wi-Fiを使ったクラウド版教科書でデジタル化を進めるにあたって、電磁波過敏症になるかもという観点は全く考慮されていないことでした。3年前から心配していたのに、地元の教育委員会にしか働きかけをしておらず、もっと大元の方針を決める文科省に早くから働きかけるべきだったと悔やんでいます。中西さんはWi-Fiにつないだ状態のクラウド版だと頭痛や胸痛、めまいの症状が出ますがダウンロードされたものを使うと全く影響はありません。

ダウンロード版は自治体負担
 中西さんからデジタル教科書を担当する部署の連絡先を教えていただいたので、私も問い合わせてみました。
  問い合わせ先
  文部科学省初等中等教育局教科書課教科書情報係
  TEL:03-5253-4111(内線3288)
 確認してわかったことは

  • 令和6年度に英語のデジタル教科書の配布を全国一斉に行う
  • 対象学年は小学校5年生~中学校3年生
  • 令和7年度から算数・数学など他の教科も増やしていく予定
  • デジタル教科書は紙の教科書と併用する
  • 国が配布するのはクラウド版のみ
  • ダウンロード版は出版社によっては用意がない
  • ダウンロード版を購入する場合は自治体負担になる

 地元の教育委員会にデジタル教科書を導入するときにダウンロード版の購入予定はあるか問い合わせたとろ、まだ何も決まっていないことが分かりました。現在、タブレットPCを使わない時以外はアクセスポイントの電源を抜いて対応してもらっていること、デジタル教科書がクラウド版になると子どもの体調が悪化する可能性があることを伝えました。教育委員会には過去に相談したことがあり、担当の人は私のことを覚えていました。ダウンロード版も購入してほしいこと、もし予算的に難しい場合は子どもが在籍するクラスだけでもダウンロード版を買って寄贈させてほしいと意見を伝えました。教育委員会の人はまだ何も決まってないので、即答はできないがご意見は参考にしますといって電話は一旦終了しました。
 教育委員会に連絡した後、「いのち環境ネットワーク」の加藤やすこさんにデジタル教科書の件を共有しました。
 加藤やすこさんからは下記のようなアドバイスをいただきました。

  • 自治体ではなく国レベルでダウンロード版を利用するべき。
  • 障害者差別解消法に基づく合理的配慮として、教育委員会や議員、学校にダウンロード版を提供するよう求める。
  • 同法では、障害者が社会的障壁の解消を求めた場合、合理的配慮(「無理のない範囲」で対応すること)を自治体に義務付けている。「無理のない範囲」というのが曲者だが、合理的配慮を提供しなければ障害者に差別的対応をしたことになる(例:バニラエア車椅子事件)
  • 文科省は障害のある子もない子もともに学ぶインクルーシブ教育を推進しているので、クラウド版はこの方針にも反していると主張できる

 デジタル教科書がクラウド版のみだと常時Wi-Fiが接続された状態になり、電磁波に過敏な児童、生徒、教員は体調を崩すリスクが高まります。また、現在は健康でも電磁波被曝が続くことで、突然電磁波過敏症を発症する可能性もあります。

デジタル教材の在り方を検討する委員会
 中西さんはデジタル教科書のダウンロード版配布を求めて、署名活動を行うことにしました。
 5月16日、デジタル教材の在り方などを検討する文部科学省の「デジタル学習基盤特別委員会(第1回)」が開催され、その取りまとめをしている方が文部科学省初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチームリーダーの武藤久慶さんである事がわかりました。
 TEL:03-5253-4111(内線2085)
 同委員会の次回の日取りは未定ですが、夏前に会議を開催させたいとのお話があったので、短い期間で申し訳ありませんが、署名にご賛同してくださる方は6月末日までに送付をお願いしたいと思っています。来年度からのクラウド版の導入を止めるために、なんとか早急に会議の場の議題にしていただきたいと考えております。
 7月以降にご返送いただいたご署名はその後々の委員会に追加で提出したいと考えております。
 電磁波研会員の皆様にもご協力いただけますと大変助かります。
 何卒よろしくお願いいたします。
送付先:〒651-1299 神戸市北区松が枝町2ー1ー2 神戸山田郵便局留め
     こどもの学習環境を守る会 中西泰子宛

署名用紙はこちら

Verified by MonsterInsights