Aさん(東京都、電磁波研会員)
KDDIが周辺住民に事前の説明なしに設置した東京都板橋区の携帯電話基地局の撤去を求めて、地元住民4名が、昨年(2023年)12月、東京簡易裁判所に民事調停を申し立てました(会報前号参照)。この調停が2月27日、簡裁墨田庁舎で行われました。KDDI側は弁護士が1人出席し、調停に応じる意向はないと述べ、調停は不成立で終了しました。
調停期日に先立つ2月21日、KDDIの代理人弁護士から「回答書」と「別紙」がファクスで申立人宛てに送られてきました。「回答書」には「電波防護指針を遵守するなど、電波法に則った適法な電波利用を行っており、本基地局からの電波が人体に健康影響を及ぼすことはないものと考えているため、本基地局の稼働を停止し、これを撤去することはまったく考えていない」と記載。「別紙」には、調停申立書に書かれていた「質問および要求項目」20項目への回答が書かれていました。「(基地局の)稼働日時を地域住民に連絡しなかったのは、KDDI株式会社の決定事項なのか」との質問に対しては「相手方(KDDI)の準備が整ったら本基地局を稼働する旨は、近隣の方々の代表者に複数回にわたって連絡をしており、相手方としては、社会的な説明責任は果たされているものと考えている」として、住民に知らせる必要はないと開き直りました。また、「なぜ稼働前に住民への説明会を実施しなかったのか」との質問に対しては、「住民の方々から新型コロナウィルス感染症の拡大等を理由に(説明会の)先延ばしを要請され」たからなどと、住民側へ責任を転嫁しました。
調停を申し立てた住民の一人、Aさんにご報告いただきました。
KDDIの携帯基地局撤去を求める民事調停を申し立てた結果についてご報告致します。
今回の申立書の中には、KDDIに対する20の質問、要求項目の記載がありました。事前に、それらに対しての回答がKDDIの弁護士より、申立人宛てに送られてきました。冒頭には「電波法に則った適法な電波利用を行っており、本基地局からの電波が人体に健康影響を及ぼすことはないものと考えている」とあり、「本基地局の稼働を停止し、撤去することは全く考えておらず、本調停に応じる意向は全くない」とありました。個々の質問や要望に対しての回答は、一つ一つ記述しているものの一方的な言い分に終始しており、誠実に対応しようとする意志が全く見られない内容で非常にがっかりしました。
KDDI側と直接話せず
裁判所に電話をしたところ、相手は誰かわからないが当日来ると言っているとの確認がとれましたので、当日、申立て人4人で出向きました。
KDDI側は弁護士1人のみの出席で、初めは別室で待機していました。まずは私達の言い分を調停委員2人が聞きました。私達がいったん部屋を出て、入れ替わりで部屋に入った相手側に調停委員と調停のまとめ役がこちらの言い分を伝えるという進め方です。そのため、相手の弁護士と実際に話をするわけでなく、言いたいこと、反論したいことが山ほどあっても直接伝えられないもどかしさがありました。その後、部屋に呼ばれて取りまとめ役に言われたことは、「相手側が調停する意向がないとのことです」という言葉でした。あまりに簡単に終了となってしまい驚きましたが、調停でできることはここまでとなりました。
社外取締役に調停出席を求めていたが
実は、調停の前、KDDIの社外取締役6名全員に、今回の民事調停にKDDIの担当者が出席して真摯に住民側と話し合うようにというお願いの手紙を出しています。しかしながら手紙に対する反応は何もありませんでした。KDDIはステークホルダーエンゲージメントの一つとして、「地域社会」を特定し「すべてのステークホルダーの皆様との対話を尊重し、共創を積み重ね、社会的課題に積極的に取り組む」と謳っていますが、全くその気はないということがわかりました。
民事調停というものの限界は、以前のマンション管理会社を申立てた際にも思い知らされましたが、基地局を設置している通信会社本体の不誠実な対応には、住民一同全く納得できない思いでいます。