平成24年10月29日 原告団長 岡田澄太
大貫町の住民は、この6年間、KDDI携帯基地局からの電磁波によって耳鳴り、肩こりや鼻血等の健康被害に苦しんできました。この間、住民一丸となって、あらゆる方策を講じて基地局の撤去を求めてきましたが実現に至らず、やむを得ず平成21年12月、裁判を起こしたのです。
宮崎地裁延岡支部は、最後の手段としてすがるような気持ちで起こした裁判の判決において、①本件基地局周辺には他に電磁波の発生源はなく、電磁波を発しているのは専ら本件基地局であること、②原告を含めて40人余りの住民が、基地局設置後に発生した健康被害を訴えていること、③各々が述べるとおりの症状が発生していること、④その症状は耳鳴り、頭痛、肩こり、鼻血、めまいなどが共通していることなどを認めながら、そのことから直ちに、それが電磁波による健康被害であると認定することはできないとして原告の請求を棄却しました。 裁判官は、判決に当たって徹底的な真相の究明、当事者を思いやる心が求められているにもかかわらず、この判決にはそのかけらもありません。
太田敬司裁判長以下3人の裁判官は社会の秩序を維持する重大な責務を担う「法の番人」としての矜持は持っていないのでしょうか。
私たちは、時にはやけっぱちになったり諦めの言葉を発しようとする原告や住民を「裁判官は絶対に私たちの苦しい気持ちを分かってくれるはず」と励ましながら、3年間、裁判を続けてきましたが、その判決はわずか5秒で終わる、声も出ないほどのあっけないものでした。
今日で苦しい日々は終わると考えていたのに、まだまだゴールの見えない、ゴールがないかもしれない苦しい毎日が続くと思うとやり切れない思いでいっぱいになります。判決直後、住民の一人が「家で待つ母ちゃんに何と言えばいいの、今日で楽になるからねと言って出てきたのに」というつぶやきに涙しました。
私たちは、健康被害を認めながら「被害者を思う気持ち」を持とうとしない裁判官に対して激しい憤りを感じるとともに、今も、電磁波という「見えないムチ」で住民を日夜、たたき続けているKDDIを許すことはできないとして、控訴することを決めました。
私は陳述でKDDIの行っている行為は犯罪そのものであり、KDDIは刑事事件の被告人として裁かれるべきであるといいました。今もその考えは変わっていません。私たち住民は今、民事事件の原告として、多大な時間と労力そして金銭的負担、精神的負担を強いられながら、そして電磁波による健康被害を受けながら、被告と対峠させられています。
しかしながら、このような国民の生命に関わる問題については、国民の健康と安全を守る国の責務として国が行うべきことです。年間売上高3兆5千億円、営業利益5千億円になろうとする日本を代表する大企業と、力も組織もない住民を民事事件として法廷で争わせる日本の法律、裁判制度はフェアーではないのです。
私たち大貫町の住民は電磁波という見えないムチに日夜、たたかれ続けて6年になります。もう限界です。
私たちに何の責任があるのでしょうか。
私たちに何の落ち度があるというのでしょうか。
なぜ、たった1本の携帯基地局でこんな苦しみを私たちは受けなければならないのでしょうか。
幼い子供がいる夫婦がいます。この夫婦が倒れたら幼い子供はどうやって生きていくのでしょうか。親の介護もしなければなりません。自分の生活も維持しなければなりません。このままでは仕事が続けることができない体となり、収入が途絶えてしまいます。不動産を処分しようとしても誰も買ってくれません。
私たちはどうやって生きていけばよいのですか。
私たちを助けてください。
控訴審では私たちの「助けてください」という思いが伝わることを固く信じます。