携帯基地局の電磁波で糖尿病リスク

 携帯電話基地局からの電磁波で糖尿病リスクが高まる可能性についてサウジアラビアの研究者が論文を発表しました。なお、記事中の「HbA1c」は、過去1~2カ月の血糖の平均的な状態を知ることができる指標で、糖尿病患者では顕著に増加します。出典「New study links cell phone tower radiation to diabetes」12月27日Arab News【網代太郎、訳も】


 [リヤド] キング・サウード大学(KSU)の有名な教授は、密集した携帯電話タワーとその非科学的増殖のため、タワーからの電磁波が多くの健康被害を引き起こす可能性があると述べ、タワーからの電磁波の危険を警告した。KSU医学部のサルタン・アイオウブ・メオ(Sultan Ayoub Meo)教授の新しい研究は、タワーからの放射線によって糖尿病が起きることを初めて証明した。
 携帯電話基地局からの電磁波についての研究結果が一流のスイスの科学ジャーナルである「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されたサルタンは、「これは電磁波と2型糖尿病との関連について科学文献に書き加えられる世界初の研究である」と述べた。
 研究は携帯電話基地局によって生じた高周波電磁波(RF-EMFR)のヘモグロビンへの影響に基づく。
 サルタンの新しい研究は、サウジアラビアと中東諸国の携帯電話タワーの安全性に対して、疑問符をつけるものでもある。携帯電話の使用が王国や世界中で両性およびすべての世代にわたって、最近20年間に著しく増加したことにここで注目することは、興味深いことである。「世界中でおよそ73億のモバイル利用があり、そして、この数字は世界の人口より多い」と彼は述べた。スルタンは彼の研究の主な結果を説明したアラブ・ニュースの独占インタビューで「携帯電話とその基地局タワーで生じる電磁波は、400MHzから3GHzに及ぶ」と話した。
 携帯電話会社が校舎や校舎の近くを含む住宅や商業地域に設置したタワーが、高周波電磁波の危険についての懸念を広範囲に渡る市民に引き起こした、とサルタンは述べた。
 彼は、タワーからの電磁波が生殖システムだけでなく神経、心血管にダメージを与える他、頭痛、抑鬱、高血圧、睡眠障害のような多くの他の健康被害を引き起こすとも述べた。
 世界でおよそ3億8200万人が糖尿病を患っていて、この数は国際的糖尿病連盟によって共有されているデータによれば2035年までに5億9200万まで急増すると予想されている、と彼は述べた。「2014年だけで合計490万人が糖尿病の合併症で死亡した」と述べたサルタンは、この致命的な病気が7秒に1人の人生を奪ったと付け加えた。
 初めて携帯タワー電磁波と糖尿病の関連を発見したこの新しい研究では、サルタンと彼の同僚は、リヤド地域で二つの異なる小学校を選んだ。サルタンのチームは、同じ性別、世代、国籍、地域、文化、社会経済地位の明らかに健康な159人の学生(一つの学校から96人ともう一つの学校から63人)を選んだ。
 血液サンプルをすべての学生から集め、HbA1cを分析した。チームは、携帯電話基地局から生じる高い電磁波に曝露された学生が、低い電磁波に曝露された学生よりかなり高いHbA1cを持つことを見いだした。


 サルタン教授らの論文のアブストラクト(要旨)部分をご紹介します。原題「Association of Exposure to Radio-Frequency Electromagnetic Field Radiation (RF-EMFR) Generated by Mobile Phone Base Stations with Glycated Hemoglobin (HbA1c) and Risk of Type 2 Diabetes Mellitus(糖化ヘモグロビン(HbA1c)及び2型糖尿病のリスクと携帯電話基地局が発する高周波電磁波(RF-EMFR)曝露との関係)」【網代・訳も】

要旨
 住宅地での携帯電話基地局の設置は、ヒトの健康に対する悪影響の可能性について公衆の議論となっている。この研究は、糖化ヘモグロビン(HbA1c)及び2型糖尿病発症と、携帯電話基地局が発する高周波電磁波(RF-EMFR)曝露との関係の決定を目指した。この研究のために、二つの異なる学校(学校-1と学校-2)を選んだ。私たちは、全部で159人の生徒を集めた。学校-1から12~16歳の96人の男子生徒、学校-2から12~17歳の63人の男子生徒を。校舎からおよそ200m離れて携帯基地局が存在した。高周波は、両方の学校内で測られた。学校-1の高周波は、周波数925MHzで9.601nW/cm2。学生は1週間のうち5日間、毎日6時間、高周波に曝露された。学校-2の高周波は、周波数925MHzで1.909nW/cm2。学生は1週間のうち5日間、毎日6時間曝露された。5~6mlの血液がすべての学生から集められた、そして、HbA1cがディメンション・エックスパンド・プラス統合化学システム(シーメンス)を用いて測定された。高いRF-EMFRに曝露された学生の平均HbA1c(5.44±0.22)は、低いRF-EMFRに曝露された学生の平均HbA1c(5.32±0.34)よりかなり高かった(p=0.007)。さらに、携帯電話基地局によって生じる高いRF-EMFRに曝露された学生には、低いRF-EMFRに曝露された学生と比較して、2型糖尿病のかなり高いリスクがあった(p=0.016)。携帯電話基地局から生じる高いRF-EMFRへの曝露がHbA1cの高いレベルと2型糖尿病のリスクと関係していると結論される。

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