ドコモがマンホール型基地局設置へ 気付かないまま電磁波被曝のおそれ

 NTTドコモは、マンホール型の携帯電話基地局の試作機を開発して3月6日から実証実験を開始したと、4月11日に発表しました。道路の下などにマンホールを設けて、その中に基地局を設置するものです。外観上基地局の存在に気付くことが難しいため、近隣住民や通行人が知らない間に電磁波に曝露され続けるおそれがあり、たいへん問題です。

マンホール型基地局のサービスエリアイメージ(NTTドコモのウェブサイトより)

 ドコモの報道発表文は「観光地や景勝地などにおいては、アンテナ設置に適した建物がなく、人の目につかないように通信設備を設置することが難しいため、安定したサービスエリアの構築が困難となっており、景観を保護しながら設置が可能な基地局が必要となります」とマンホール型基地局設置の理由を述べています。
 また、報道[1]によると、ドコモは動画をスマホなどで見たいというニーズに応えるため基地局を高密度に設置したいのですが、都心部では多くのビルの屋上にアンテナが設置され、建物の強度や景観などの面で新設の余地がほとんどなくなっているとのことです。そこで、ドコモは2016年からマンホール型基地局の開発に着手。半径数百m~数kmの広範囲をカバーする800MHz帯や2GH帯zのマクロセルではなく、特に利用者が多い都市部や観光地で、マクロセルを補う半径数十m~数百mをカバーする1.5GHz帯のマイクロセルの基地局として設置することを目指しました。マンホール内に無指向性の2本のアンテナを相互に干渉しないように設置できるよう、マンホールの直径を決めました。マンホール型基地局の設置コストは通常の基地局の数倍かかるとのことです。
 マンホール型基地局の本格運用にあたっては、あらゆる環境で下記の3点を満たすことが必要だとドコモは説明しています。
①利用客に快適な通信環境を提供できるサービスエリアが確保できること
②マンホール上を含むマンホール型基地局周辺の電波の強さが、電波防護指針に基づく電波法令を順守した値であること
③設置場所の安全基準に準拠したマンホール蓋の強度であること
 ドコモはまず札幌市の同社管理環境内に実験用基地局を開設して上記3点を満たすかどうかを実験。鉄製のマンホール蓋と同様の耐荷重性能(マンホール上にはしご付き消防ポンプ車などの大型車が停車する可能性を考慮した耐荷重規格)がある樹脂製マンホール蓋を用いて、想定通り半径90m程度のサービスエリアを確保できることを確認したとのことです(サービスエリアの広さは設置場所によって異なる)。蓋の上に圧縮状態の雪が45cm積もった状態でも電波の通りに影響がなかったそうです。また、電波による健康影響についてドコモの報道発表文には「マンホール上の電波の強さについて安全性を確保した設計法を検証しているところです」と書かれています。どのような方法で「安全性を確保」するのか、詳しい説明が求められます。
 ドコモは多くの利用客が集まる東京都渋谷区や、高温多湿で降雨の多い沖縄県南城市でも上記3点を満たすかどうか実証実験したうえで、2018年度中に本格展開を始める方針とのことです。将来的な5Gへの応用についても並行して検討を進めていくとしています。【網代太郎】
[1]「ドコモはマンホール基地局、携帯業界で再び場所取り競争」日経XTECH5月9日

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