スマホ市場に異変! 成長路線は曲がり角に

 2007年に米アップル社が「iPhone」(アイフォン)発売を発表してから、右肩上がりに成長を続けてきたスマホ市場に「バブル崩壊」現象が起こり始めた。月刊誌『選択』5月号は具体的数字を挙げて、スマホ市場の将来に厳しい見方を示した。

巨大スマホ企業アップル社
 「世界のスマホ端末の利益の86%は米アップル社が独占している。」 米市場調査会社カウンターポイントは今年4月、スマホ市場の調査結果を公表した。調査によると、昨年11月に発売された「iPhoneX」を筆頭にスマホ端末トップ10機種のうち8機種はアップル社の歴代機種が占めている。サムスン電子(韓国)や華為技術(ファーウェイ・中国)などその他のメーカーは市場の残り1割強を分け合っているにすぎない。ちなみにドコモのギャラクシーはサムスン電子製のスマホである。サムスンはスマホの世界シェアの4分の1を握っているが、自社スマホ「ギャラクシー」のあげる利益総額より、アップル社向け有機ELディスプレー販売の利益の方が大きい。売上と利益を混同しないように。したがってアップル社の動向はスマホ市場を左右する。

スマホに「飽き」がきた
 昨年の世界スマホ販売台数は14億7240万台で前年比0.1%減となった。初めてマイナスに転じた。マイナスの原因は①スマホ平均価格の上昇②新技術・機能のネタ切れなど、いくつか挙げられているが、本質的にはユーザーのスマホに対する飽きとみられている。たしかにiPhoneXは14万円台と高い。その割に期待されたほどの新機軸は盛り込まれなかった。そのためiPhoneXは発売から数週間で失速し、アップル社は部品調達見通しを下方修正した。その影響で、スマホに部品提供している日東電工、村田製作所、アルプス電気、日本航空電子工業、ヒロセ電機、TDK,ソニー、日本電産、など名だたる電子・電機メーカーの業績が狂い始め「夏まで生産ラインは止まることになるかもしれない」企業まで出ている。

スマホ市場はパソコン市場と同じ運命
 スマホの需要飽和化は明らかで、今年1月から3月は前年比27%減まで来ている。スマホの運命を映し出すのがパソコンである。今もパソコンは世界中で使われているが、世界需要は2011年をピークに6年連続で前年比マイナスになっている。この間、世界人口は7億人増加し、世界のGNPは38%増加している。スマホは着実にパソコン化の道をたどっている。たしかに南アジア、中南米、アフリカなど新市場は残っているが、高機能より低価格が選択基準であり、過去10年間のスマホ需要の伸びはのぞめない。
 私は、会報第107号(2017年7月号)で「細るスマホ市場、基地局共有化も 模索し始めた携帯業界!」という記事を書いたが、それが現実化し始めたようだ。【大久保貞利】

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