欧州議会の専門家委が5G健康影響について調査報告書を発表 男性生殖能力に明確に影響

欧州議会専門家委員会の調査報告書

発がん性おそらくあり
女性生殖能力・胚、胎児、新生児へ影響あるかも
ミリ波帯は研究不十分

 欧州議会(EUの立法機関)の「科学と技術の将来についての専門家委員会」が8月に「5Gの健康影響:疫学調査及びイン・ビボ実験[1]報告から生じた5Gに関連した発がん性及び生殖/発達ハザードについての現状」と題する調査報告書を発表しました。
 結論の趣旨は以下です。
①がんについて―450~6000MHz(0.45~6GHz)の高周波電磁波は、ヒトに対して特に神経膠腫及び聴神経鞘腫について「おそらく発がん性がある」。それより高い周波数の高周波電磁波(24~100GHz)については十分な研究が実施されていない。
②生殖及び発達への影響―450~6000MHz(0.45~6GHz)の高周波電磁波は、男性の生殖能力に明確に影響する。また女性の生殖能力に影響するかもしれない。胚、胎児及び新生児への悪影響があるかもしれない。それより高い周波数の高周波電磁波(24~100GHz)についての非熱作用については十分な研究が実施されていない。
 上記の「おそらく発がん性がある」は、国際がん機関(IARC)によるヒトの発がん性分類だと「2A」にあたります。現時点でのIARCによる高周波電磁波の評価は「2B」(発がん性があるかもしれない)なので、今回の調査報告書は、それよりもリスクを高く評価しています。
 EUでは5G(第5世代移動通信システム)に、700MHz(0.7GHz)、3.6GHz、26GHzの3種類の周波数帯が使われています。これらのうち、700MHz、3.6GHzは第2世代(2G)~第4世代(4G)技術でも使われてきた周波数帯です。いわゆるミリ波帯である26GHz(日本では28GHz)はまだそれほど普及していないのは日本と同様です。今回の調査報告書で、がんについても、生殖及び発達への影響についても、26GHz以外の周波数帯で、「おそらく発がん性がある」「男性生殖能力に明確に影響する」「女性生殖能力に影響するかもしれない」「胚、胎児及び新生児への悪影響があるかもしれない」としたのはすこぶる重要です。日本の総務省とは大違いです。【大久保貞利】

[1]イン・ビボ実験は、マウスなど動物の個体を用いた実験のこと。これに対して、動物の個体から、組織の断片や、細胞などを取り出して行う実験をイン・ビトロ実験という。
※報告書はこちらで読めます。

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