携帯電話中継基地局の模型を作ったよ 過敏症の杉山さん

 8月24日に「院内集会 4G・5G携帯電話基地局は安全か 」が開催されます(20頁参照)。集会を主催する実行委員会の準備会が開かれた7月4日、委員の一人である杉山英一さんが持参した巨大な物体に、度肝を抜かれました。彼が手にしていたものは、携帯電話基地局のリアルな模型だったのです。
 杉山さんは、会報第140号に「私の電磁波過敏症発症に基づく考察」をご寄稿くださった、電磁波過敏症発症者の方です。他の実行委員からの依頼により、杉山さんは基地局模型の「2号機」も作成しました。
 なぜ作ろうと思ったのか、杉山さんへの誌上インタビューを掲載します。【網代】


「1号機」と、制作者の杉山さん

通行人にも一目瞭然
 -迫力満点の「基地局」ですね。作ろうと思ったきっかけを教えてください。
 8月24日に「院内集会 4G・5G携帯電話基地局は安全か 」が開催されます。とても重要で有意義な集会ですが、仲間内で盛り上がって終わりにしては結果が出ません。この集会を切っ掛けに基地局問題を広く世間に問い掛け、電磁波過敏症の有無に隔てなく一人でも多くの人々の関心集める事が必要と考えました。院内集会の注目度をどこまで高めるかが成功の秘訣なのです。その手段としてSNSのバーチャルな情報伝達を介するのでなく街頭スタンディングで直接訴えようと思いました。人々の大半は「基地局って何?」状態ですから、その時にビルの屋上や住宅地の鉄塔から引っこ抜いて来たような基地局を掲げれば一目瞭然で解りやすいと考えました。目の前を5秒で通り過ぎる通行人相手ですから長いメッセージは受け取りようがありません。強いサブリミナル効果の必要性を意図してインパクトと存在感のある基地局模型を作ろうと思った次第です。
 -作るうえで何か参考にしましたか
 1号機は住宅街に建っている基地局を参考にしました。繁華街や駅前や大通りが苦手なので日々自転車で裏道を走っているのですが、ちょっと走れば探さなくても次から次へとそれが目に入ってきます。一日に何度も何度も遭遇しますから気が付いたら形状を覚えてしまいましたので、そのイメージをそのまま形にしました。

「2号機」

 2号機は写真を提示されてこれと同じものを作って欲しいという依頼が来ました。早速写真と同じ形状の基地局を捜し歩いたのですがビルの屋上に建っている事が多く近くで見られませんでした。先日、用事で沖縄に行った際台風対策でかなり低い場所(2階の屋根の上に)設置されているものに遭遇し詳細なディティールを確認出来ました。「KDDI LTE」の文字があったので2号機は「KDDI LTE君」と勝手に呼んでいます。
 -製作日数は。
 1台2日程度で作りました。設計図を引かなくても頭の中にイメージがありますので、イメージしたものに近い形状のモノをホームセンターや100円ショップで探してきて自由に組み合わせました。切ったり貼ったり削ったりといった加工作業は極力避けて、なるべく作らないで作る事を最大限留意しました。昔の幼児番組「できるかな?」のノッポさんになった気分で楽しんで作りました。私のキャラはどちらかと言うとゴン太くんなのですが。「オホオホオホオホオホ~~」
 -どこで作りましたか。
 製作は自宅の4畳間(板の間)で行いました。元来工作好きで、今乗り回しているスポーツサイクルや蓄音器のメンテナンスもここで行っています。天体望遠鏡の光軸調整や赤道儀のグリスアップ、サバイバルゲーム用のエアガンの調整、ビオトープの底面ろ過装置などいろんなものを作っているので工具や端材は沢山あり、そういう環境があったからこそ作れたのだと思います。

建築用素材で耐久性を確保
 -費用は、どのくらいかかりましたか。
 費用は材料代だけで1本約8000円で出来ました。本当はもっと安く作れると思っていたのですが、物価高騰の影響は免れませんでした。ある程度の大きさがあり、安全性を確保する為にも頑丈に作らなければなりません。その為にも主要部品を建築用の素材を使ったため少し割高になりました。
 -大きくて迫力があるのですが、何メートルぐらいありますか?
 1号機、2号機ともに2mの水道管を使っています。最低でもこれぐらいの大きさがないと存在感が無いし、理想を言えば実物大なのですが人力による可搬性の限界が2mだと想定してこの大きさにしました。とりわけ2号機のモデルとなった基地局が余りにも巨大なので1/4ぐらいにスケールダウンしたのですが、そういう風に見えない様に支柱を細くしてリアリティを確保しました。
 -ホームセンターと100円ショップで材料がそろうものなのですね。
 水道管と固定金具などの建築資材はホームセンターで調達、配線や小箱やベニヤ板は100円ショップで調達しました。

作り込み過ぎず、軽く頑丈に作る
 -工夫した点、難しかった点はありますか。
 ①なるべく作らずに作る事。作り込み過ぎない事。作業に時間をあまり割けないので、なるべくシンプルに出来あいの工具箱などを流用して1から作らない様にしました。これは「代用品」を見抜くセンスが必要かもしれません。また、細部のディテールにこだわって作りすぎると「どこからかお金貰っていんじゃないか?」と運動自体が胡散臭くみられても困るので市民目線で作り込みすぎない様に留意しました。
 ②軽く作る事。一人で持って運ぶのが前提ですから、軽量化に留意しました。1号機のアンテナは発泡スチロールのブロックです。2号機のアンテナなどは水道管を流用すればもっと簡単に制作出来たのですが重くなりすぎてしまいます。そこで厚さ2㎜程のプラ板を丸めて作りました。部品点数が増えて手間が掛かりましたが、実物の基地局の構造がアンテナとそれを風雨から守るカバーで覆っている様で結果的には質感があがりました。
 ③頑丈に作る事。安全に作る事。基地局問題は長い戦いになると予想しています。そう簡単に壊れても悔しいし、チャチな安っぽいものを使いたくないしである程度頑丈に作らなければならないと考えました。そこで主要部分は配管部品を用い強固にして、アンテナ部分は万一人ぶつかっても怪我をしない様に発泡スチロールや丸めたプラスチック板を用いて留意しました。
 ④苦労したのは高周波曝露。マイクロ波を放つ震源地に足しげく通ったので気持ち悪くなる事が度々ありました。因果関係は分かりませんが基地局の乱立している所に行くと過活動膀胱みたいになるのでトイレに駆け込む回数が多く難儀しました。また、ホームセンターや100均の照明もどぎつくて難儀しました。

基地局模型を囲んで楽しいお祭りを!
 -とても素晴らしい完成度だと思います。どのような活用されますか。
 活用方法は基地局問題の街頭宣伝です。基地局問題は電磁波過敏症に苦しむ当事者か余程意識が高い人でない限り日常生活の中でその情報に接する事は無いと考えられます。一人でも多くの人にこの問題を周知させるには、この基地局模型を掲げて通勤通学時の駅頭に立って拡声器で直接訴えたり、あるいは住宅地を練り歩くなどの直接行動がその良い切っ掛けを齎すと考えています、
 通行人は目の前を5秒で通り抜けます。言葉やスローガンを受け止めさせるのは至難の業です。スマホの画面の基地局の写真と、目の前に立っている高さ2mの基地局の模型とどちらにインパクトがあるか?が重要です。この存在感はサブリミナルな効果をもたらすのではないかと考えています。目立てば目立つほどマスメディアも飛びつくかもしれません。
 基地局問題は長い戦いになります。悲壮感ばかりを募っても続きません。戦争の不条理に抗う沖縄の人々の様に賑やかで楽しい「お祭り」の様な側面も必要です。皆さん基地局模型の周りに集まって楽器を鳴らしてお祭りにしませんか? そのような事も提案致します。

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