ロンドン科学博物館に続き、ドイツ・ミュンヘンにあるドイツ博物館=写真=に取材で行きました。ここは世界最大級の科学博物館なので行かれた方もいるかもしれません。そこで見たこと、考えたことをレポートします。
ドイツは2度の大きな戦争を期に科学技術が進歩しました。ドイツはその過程で科学技術を進歩させ、戦闘機や弾道ミサイル潜水艦などを生み出しました。そして原子力発電事業大手のシーメンスもあります。ドイツ博物館は、それらの技術を単に展示しているのではなく、しくみやその影響などを紹介しています。博物館に来た観客は、それを見て技術の本質を知るのです。展示品をひけらかし、ドイツの技術力を示すものではなく、技術やその利用方について見た人に考えさせるのです。よって戦争に使われた戦闘機も潜水艦などの負の遺産も、隠す事なく展示しています。そしてドイツでも関心が高い原子力発電所のしくみについて紹介するコーナーもあります。
それらの展示物に関して日本だと「こんな戦争を思い出させるものを置いて不愉快だ」とか「原発の事故が起こったのに、こんな原発に関する展示物は不謹慎だ」などという人がいるでしょう。しかし、そうすると原発に関してはなぜ事故が起こったのか、どういう影響があるかなどの事実が見えなくしてしまうのです。
展示物に恣意的な解説はありません。どんなものか、そして技術に関することだけです。それから先は見る人の判断です。そうすることで、技術に対して考え、冷静に判断できるようになるのです。
博物館を案内してくれたミュンへンに在住して30年になる日本人の方にお話を聞きました。福島の原発事故については、毎日大きく取り上げられ、多くの国民が関心を持っていた、今も持っているそうです。その結果が、ドイツの脱原発につながったと。
あらゆる技術に関しても、原発事故で国民の関心が高くなり、そして見る目が厳しくなっているともお話されました。
また、ドイツでは電気はいくつか会社を選ぶことができて、少しくらい高くても、その方は自然のことを考えた電力会社から電気を買っているそうです。この方に限らずそう考えている人は多いとのことです。
専門家が安全とか、難しい言葉を並べてけむに巻く日本と、技術をわかりやすく解説し、 国民に考えさせるドイツ。2つの国の違いを改めて考させられたドイツ博物館でした。【鮎川哲也】