電磁波問題とは - Ⅰ.電磁波とは

1.電場と磁場

(1)電気の力が働く空間(電気のプラスとマイナスが引き合う力、プラス同士・マイナス同士なら反発する力が働いている空間)のことを電場(電界)と言います。

(2)磁石にはN極とS極があり、同じ極同士は反発し、違う極同士は引き合います。そのような力が働いている空間を磁場(磁界)と言います。

図の出典:東京電力パワーグリッドのウェブサイト

2.電場と磁場の関係

(1)鉄の釘に導線を巻いて電流を流すと、釘は磁石になります。このことから電場の動きが磁場を作ることが分かります。

(2)導線のコイルの中に磁石を素早く出し入れすると導線に電流が発生する(この現象を電磁誘導と言います)ことから、磁場の動きが電場を作ることが分かります。この原理を利用して発電が行われています。

図の出典:関西電力のウェブサイト

3.電磁場、電磁界、電磁波

(1)電場(電界)と磁場(磁界)をまとめて電磁場電磁界)と言います。

(2)プラスとマイナスが周期的に入れ替わる交流電流を電線に流すと、それによって周辺に起きる磁場(磁界)の変化が新たに電場(電界)を生み出し、この電場の変化がさらに新しい磁場を作り出して、次々と磁場と電場が相互に振動しながら空間を波のように伝わっていきます。このように、電場と磁場の大きさと向きが、時間とともに周期的に変わり、その変化が遠くまで伝わるような波を、電磁波と言います。

(3)「電波」は電磁波と同じですが、一般的には、放送や通信に使われる高周波電磁波のことを「電波」と言います。なお、法律(電波法)での電波の定義は「300万MHz(3THz)以下の周波数の電磁波」です。

4.波長と周波数

(1)波長=波の1周期の長さのことです。

(2)周波数=1秒間に何周期するかを表した数字です(60Hz=1秒間に60周期の波)。

(3)電磁波は光と同じ秒速約30万km(光も電磁波の一種)なので「波長×周波数=約30万km」となります。

(4)送配電線や家電から漏れる50Hz(東日本)の波長は、約6000km(地球の半径=約6300km)。携帯電話で使う800MHzの電磁波の波長は約37.5cmです。

  ※1KHz(キロヘルツ)=1000Hz
   1MHz(メガヘルツ)=1000KHz=100万Hz
   1GHz(ギガヘルツ)=1000MHz=10億Hz
   1THz(テラヘルツ)=1000GHz=1兆Hz

(5)電磁波(電磁場)は、周波数・波長によって性質が変わります。光や、ガンマ線・X線なども電磁波に含まれます。
 ガンマ線・X線はエネルギーが強く原子中の電子を引きはがす作用(電離作用)があり、これが細胞中の遺伝子を傷つけることでがんを引き起こすことが分かっています。そのためガンマ線やX線を「電離放射線」と呼び、それより周波数が小さく電離作用がない電磁波を「非電離放射線」と呼びます。
 当会によるウェブサイト、会報を含む出版物、講演、その他において、当会が使う「電磁波」という言葉は、特に断らない限り、原則として「非電離放射線」を指しています(電離放射線は含みません)。

(6)電磁波(電磁場)の周波数・波長の違いによる区別の例

図の出典:電磁界情報センター(主として電力会社からの資金で運営され,電磁波は安全だとPRしている機関)のウェブサイト

5.電磁波(電磁場)の強さの単位

(1)静電磁場、超低周波電磁波
・電界:V/m(ボルト/メートル)
・磁界:µT(マイクロテスラ)

(2)高周波電磁波
・電界:V/m(ボルト/メートル)
・磁界:A/m(アンペア/メートル)
・高周波は、波長が小さく、電場と磁場が一体化しているので、まとめて電力密度(電力束密度)という単位を用いることがあります。
 電力密度:µW/c㎡(マイクロワット/平方センチ)、mW/c㎡(ミリワット/平方センチ)など
 10W/㎡=1mW/c㎡=1000µW/c㎡
 1V/m=0.26µW/c㎡

6.自然界の電磁波(電磁場)

 自然界には主として、以下のような電磁波(電磁場)があります。

(1)地磁気 0Hz(静磁場) 日本約46μT 赤道付近約25μT 極地約65μT
 出典:気象庁地磁気観測所「地球電磁気のQ&A」

(2)雷放電 数Hz~数百MHz
 参考:総務省「コラムvol.21 シューマン共振(共鳴)」

(3)シューマン共振波(雷で発生した超長波電磁波が、大地と電離層の間を何回も反射しながら伝わっているもの)7.8~41.3Hz
 参考:総務省「コラムvol.21 シューマン共振(共鳴)」

図の出典:総務省のウェブサイト

(4)太陽光線 100THz(波長3000nm)~赤外線~(780nm)~可視光線~(400nm)~紫外線~1070THz(280nm)
 参考:国立環境研究所「絵とデータで読む太陽紫外線」 7頁 図2.3

7.人工電磁波(電磁場)

 人工の電磁波(電磁場)は、以下のようなものがあります。

(1)静電磁場 0Hz MRIなど

(2)超低周波電磁波 50Hz, 60Hz 送電線や家電から漏れてくる電磁波です。

(3)高周波電磁波 数十MHz~数十GHz 放送・通信(テレビ、ラジオ、携帯電話、無線LAN(Wi-Fi)、ブルートゥース、スマートメーターなど)のために作られている電磁波、電子レンジで利用する電磁波です。

(4)中間周波数電磁波 IH調理器、電子タグなどで利用されています。

8.自然界の電磁波と人工電磁波の違い

 自然界の電磁波と人工電磁波の違いは、何でしょうか。

(1)周波数が違います。
 上記4(6)の通り、実に幅広い周波数帯の電波利用が人工的に開発され続けています。

(2)強さが違います。
・最近の技術革新により、最大で地磁気より10万倍も強い静磁界が利用されるようになりました。
 出典:WHO「ファクトシート 299」  1頁「発生源」
・50Hzまたは60Hzについて、日本の電界規制値は3000V/m、自然の電界は0.0001V/m。
 出典:WHO「超低周波電磁界に関する健康保健クライテリア」 25頁

(3)放送や通信のために作られる高周波電磁波(電波)は、情報を載せるために、さまざまな変調を行うので、電波の波形は様々な形になります。
  人工電磁波の波形の例
    正弦波(変調されていない電波)
     
    AM変調
     
    直交振幅変調(QAM)
     

(4)電磁波による健康影響について「自然界にも電磁波はある。太陽光も電磁波だ。だから電磁波が危険なはずがない」と、しばしば反論されます。
 しかし、太陽光など自然界にある電磁波は、生物にとって無前提に「安全」なものではありません(たとえば、紫外線を浴びすぎると皮膚がんになるかもしれません)。人間を含む生物は、長い進化の過程で、自然界にある電磁波へ適応してきたのです。
 一方で、産業の進展、技術革新によって、さまざまな周波数、変調方式、強さの電磁波が複合して生活の至る場所に存在しているという現在の環境は、ごく最近になってから出現したもので、生物は進化の過程でこの状況を経験してきませんでした。このような環境が生物にとって危険ではないという結論を下すのは時期尚早なのです。

Ⅱ.電磁波の影響 >

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