スマートメーター拒否権 (オプトアウト) エネ庁からの聞き取りで問題点が明確に 「アナログではなく通信部外し」「追加料金」

エネ庁担当者(手前2名)から聞き取る当会大久保事務局長(奥右)と網代(奥左)

 経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)の「次世代スマートメーター制度検討会」(以下「今回の検討会」と言います)が、電磁波問題やプライバシー問題などを理由としたスマートメーターのオプトアウト(拒否)の権利を容認する方向を示した(会報前号参照)ことについて、当会はエネ庁の担当者から聞き取りを行いました。オプトアウトの具体的方法としては、通信部はずしを想定していることが確認できました。また、オプトアウトした需要家(電力消費者)へ追加料金を求める方針については、米国の事例のみをもとに安易に決めたことが明らかになりました。
 現行スマートメーターの交換が始まる2024年ごろからの設置を目指している新たなスマートメーターについて検討した今回の検討会は、2月18日に「次世代スマートメーターの標準機能について(中間とりまとめ)」(以下「中間とりまとめ」と言います)を公表しました。中間とりまとめに、オプトアウトの権利を容認する方向が示されました。電力会社の嘘や脅しに屈せずスマートメーターを拒否してきた皆さんや、この問題を訴え続けてきた当会による運動の成果と言えます。 中間とりまとめは、オプトアウトについて、以下の通り記載しています。

<本年度の検討結果>
・オプトアウトの権利を認めるとともに、選択に伴う追加コストは需要家に求めるべきという点について合意を得た。
<来年度の検討課題>
・具体的な手続きや金額、開始時期等について、今後その対象や方法も含めエネ庁の審議会等において議論を進める。

 また、中間とりまとめの中の「まとめスライド」の下のほうに「オプトアウト制度は、現行のスマートメーターの設置が完了する時期の導入を目指し引き続き検討」と記載されています(図1)。

図1 「中間とりまとめ」より

 聞き取りは5月11日、衆議院第一議員会館の大河原雅子議員事務所で行われました。エネ庁からは、電力・ガス事業部政策課電力産業・市場室のI課長補佐と、同室のM係長が出席、当会からは大久保事務局長と筆者(網代)が出席、大河原事務所からは野村宗平秘書が同席しました。これまで省庁側は職位が高い方が主に説明することがほとんどでしたが、なぜか今回は係長の緑川さんが中心になって説明していました。

「エネルギー基本計画」云々は何だった?
 まず、中間とりまとめにオプトアウト容認が盛り込まれた経緯について尋ねたところ「次世代スマートメーターの機能を検討するにあたって海外の事例を調べていったところ、オプトアウト制度が海外であったので、日本でもスマートメーターの設置に懸念がある需要家さんたちのニーズに応えるために検討し始めた」との説明でした。
 これに対して当会は「海外でオプトアウトが行われていることは、今のスマートメーターを導入するための「スマートメーター制度検討会」(以下「昔の検討会」と言います)でも報告されていた。また、私たちはずっとエネ庁にも電力会社にも拒否する権利を認めてほしいと申し上げてきたが、『エネルギー基本計画で全ての需要家についてスマートメーターを取り付ける旨が閣議決定されている』と壊れたレコードのように繰り返して、拒否する権利を認めてこなかった。オプトアウト容認は前進だが、なぜエネルギー基本計画が変わったわけでもないのに今度は認めようという話になったのか腑に落ちない」と指摘。これに対してエネ庁は「エネルギー基本計画は変えられていないが、次世代スマートメーターに焦点を当てて、ゼロの状態から検討し始めてもらったので、過去の経緯とはまた異なるものと考えている」と答えました。
 この答えを聞いて、筆者は内心あきれかえりました。これまで国や電力会社が金科玉条のように
唱えていた「閣議決定されたエネルギー基本計画」は何だったのでしょう。この国の官庁には理屈も道理もないのだと、あらためて感じました。

「通信部を外すという形態になるのでは」
 オプトアウトしたら具体的にどうなるかとの質問に対し、エネ庁は「アナログメーターはもう作られていないので、それをまた作ることはしない。通信部を外すといった、そういった形態になるのではないかなと思っているが、それについては電力会社の詳細な仕様設計のほうにお任せしていくというふうに考えている」と回答しました。海外ではオプトアウトした需要家にアナログメーターを設置している、と当会が指摘すると、エネ庁は「アナログメーターのほうが合理的だと一般送配電事業者[1]が判断したならばそうなると思うが、基本的に通信部だけ外せば問題がないと考えるならば、通信部を外す仕様になるのでは」と答えました。エネ庁の回答が最初とは違ってきたため、当会は「要するに一般送配電者がアナログメーターを付けると言えば、それをエネ庁として妨げるものではないということですね?」と確認すると、エネ庁は「妨げるものではございません」と答えました。アナログメーターにするかどうかは「事業者の判断」であると官僚として答えるべきなのに、事業者との間では「アナログメーターは作らない」方針を確認しているから、つい本音が出たということなのでしょうか。
 また、エネ庁は、通信部を外せばアナログメーターと同じになるという認識を示しました。当会は、通信部を外したほうがデータ送信のための電波が出ないので全然良いのは確かだが、スマートメーター自体が電子機器なので、そこから出るノイズなどで体調が悪くなる電磁波過敏症の方もいることを、エネ庁へ伝えました。

「オプトアウト開始時期は決まっていない」
 オプトアウトの開始時期について「現行スマートメーターの設置が完了する時期」と書かれた理由を質問したところ、エネ庁は「中間とりまとめには、そう書いていない」と回答。当会が、表(図1)に書いてあると指摘したところ、「これは目処で、一案。『引き続き検討』なので、何も決まっておらず、今後の審議会で検討するのかなと考える」とのこと。決まっていないことがなぜ書かれるのかと首をひねりつつ、次の質問へ。

追加料金も米国追従?!
 オプトアウトのコストを需要家負担とした理由を質問。エネ庁は「海外の制度を参考にしたところ、需要家負担がほとんどだったので」と回答しました。当会が「検討会では米国の例しか紹介されていないが、なぜか」と質問すると、「米国が最も公開している情報が多かった。米国以外の調査もしようとしたが、オープンにされているデータがなかった」と説明しましたが、筆者は内心で再びあきれかえりました。米国以外はデータがなくて調べられなかった? 多くの国々でスマートメーターを導入しているのに、そんなわけないでしょう。小学生の自由研究じゃないんだから!
 昔の検討会ではオランダやスウェーデンでのスマートメーター拒否事例も紹介されていて、ともに追加料金を取るとは書いていなかったことを、当会はエネ庁の2人に指摘しておきました。
 そのうえで、「米国で追加料金を取っているから日本も取ろうという、それだけの話なのか」と質問。エネ庁は「その人にしかかからないお金を需要家みんなで負担するというのは違うだろうという考え方だ」と述べました。
 当会は「スマートメーターを選ぶか選ばないかは、需要家の権利だと私たちは考える。スマートメーターを拒否する人を例外扱いして、そこから料金を取るのは非常に違和感が大きい。そもそもスマートメーターのBルート[2]を使ってる人は、ほとんどいない。それなのにBルート機能を勝手に埋め込んで、その分スマートメーターの単価が高くなり、総括原価方式[3]だからBルートを使わない大部分の需要家の電気代も上がっている。国や電力会社の方針や都合で標準と例外を決めて、オプトアウトをする人を例外にして、総括原価方式からも例外にするのは納得できない。もうちょっと掘り下げて考えたのかなと思っていたら『アメリカしか例がありませんでした、アメリカはこうでした、だからこうします』というのは安易過ぎないか」「(今回の検討会の事務局である)三菱総研にもう一度お願いすれば、彼らはプロだから他の国も調べるはず」などと指摘しました。

今後の審議は未定
 次世代スマートメーターについて今後は、今回の検討会ではなく、別の委員会とか審議会で検討されるとのことです。具体的にどこで、いつから検討するのか、まだ決まっていないそうです。審議の場は変わっても、エネ庁の担当部署は(当然のことながら)この日、説明にきてくださったお二人の部署になるとのことです。
拒否したい方から直接意見を聞いて
 そこで、今後、開く審議会などで、オプトアウトを求めてる人たちから直接、意見を聞くという考えはないか、と質問しました。エネ庁は「特段その予定はない」と回答。当会は「オプトアウトを求めている人たちが、なぜ求めているのか、何か特別なわがままを言ってるのではないことを、審議してる委員の方々が理解しているのか非常に懸念があるので、意見を聞く機会も検討していただきたい」「過敏症の方や、われわれのような環境団体に、意見を聞く場を設ける努力してほしい。過敏症の方は、かなり深刻だ。東京電力以外は、アナログメーターへの交換もしている」「海外でもどこでも起きていて、特殊な例ではない。もうちょっと真剣に幅広く物事を検討していかないと、次世代スマートメーターでも、またトラブルになる。われわれもできるだけトラブルは避けたい。東電にも言ったが、どうしてもアナログメーターにしてほしいという人は、ごくわずか。アナログメーターを認めたら、みんなアナログメーターを選ぶなどということはない。だから、公共性がある電力会社として、少数の方に対応するぐらいの柔軟性を持ってほしい」と訴えました。

スマートメーターにWi-Fiはやめて
 次世代スマートメーターについて、今回はオプトアウトに絞って聞きましたが、その他の論点で一つだけ、Wi-Fi通信機能の搭載について触れました。Wi-Fi搭載は決定事項ではなく、検討課題です(図1)が、実現した場合の影響が深刻になり得るので取り上げました。
 現行スマートメーターは、Aルート(無線マルチホップの場合[4])、Bルートともに、同じ920MHz帯の電波で通信しています[5]。次世代スマートメーターでは、Aルートは920MHz帯のまま、Bルート用のほうをWi-Fi(2.4GHz帯)で通信させるという意見が今回の検討会で出されました。その通りになると、スマートメーターから出る電波の種類、量が、大幅に増えます。920MHz帯電波の出力20mWに対して、Wi-Fiは(帯域幅20MHzの場合)200mW程度と、かなり強いです。加えて、現在使用されている多くのWi-Fi機器のように、通信していない時にも電波を出す仕様にされたならば大変です。電磁波過敏症の方が自宅のスマートメーターをオプトアウトしても、近隣メーターから強い電磁波が飛んでくるのであれば、たまったものではありません。このことをとても心配していると、当会はエネ庁へ伝えました。
 前述の通り、ほとんどの需要家はBルートを利用していません。三菱総研が今回の検討会の第5回に出した資料「次世代スマートメーター導入に向けた論点について」によると、2019年末までのスマートメーター導入台数6105万台に対するBルートの申込率はなんと0.06%です。そこで、家庭に普及しているWi-Fiをスマートメーターにも搭載することで、Bルート利用を促進するという狙いがあります。しかし、そもそも需要がないから普及しないのではないでしょうか。市民が必要としていない機能のために電波を増やす仕様にすることなど、到底容認できません。【まとめ・網代太郎】

[1]電力小売事業は自由化されたが、送配電事業は、東京電力パワーグリッドなどの「一般送配電事業者」(旧10電力会社)が地域ごとに独占している。どの小売業者との契約していても、電気メーターの設置、計量は一般送配電事業者が担当する。
[2]スマートメーターから電力会社へ電力使用量データを送信するルートが「Aルート」。これに対して、スマートメーターから家庭内などへ送信するのが「Bルート」。Bルート経由で取得した電力使用量を家庭内の装置でリアルタイムに表示して節電意識を促進したり、対応する家電と接続させて戸外から操作したりできるとされている。
[3]「総括原価方式」は、電気、ガス、水道といった公共料金について、かかった費用に利潤を加えて料金を決める方式。赤字にならないので安定供給できるメリットがある一方、コスト削減が進みにくいデメリットがある。
[4]近隣のスマートメーターどうしがバケツリレー方式にデータをやり取りしながら、コンセントレータという携帯電話基地局のようなものへデータを送信する方式を「無線マルチホップ」という。
[5]関西電力の無線マルチホップ式スマートメーターのみ、Aルートで920MHz帯ではなく、Wi-Fiを利用している。

 

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