欧州最初の5G開始国スイス 5Gによる健康被害の報道

 スイスのジュネーブで5G基地局が設置されてから、住民に健康被害が出ていると、スイスのローザンヌで発行されている週刊消費者雑誌『L’Illustré』のウェブサイトに掲載された7月18日付記事「5Gでモルモットになった気分だ」[1]が報じています。
 スイスは欧州で最も早く今年4月に5G商用サービスが開始されました。通信会社スイスコムによって5G基地局が急ピッチで整備され、今年中に人口の9割が5Gを利用できるようになると報じられています。スイスでは5Gへの反対運動が全国的に広がっています(会報前号参照)。また、ジュネーブ州などのスイスの州議会が5Gの一時停止を決議しました(会報第118号既報)が、この記事などからは、決議に5Gサービスを強制的にストップさせるまでの力はないことがうかがわれます。
 この記事の概要を紹介します。

5Gによる健康被害を訴えるElidan=L’Illustréのウェブサイトより

不眠症、耳鳴り、頭痛
 ジュネーブ中心部の同じ地区に住む2人の男性は、ともに5Gが始まった4月から、不眠症、耳鳴り、頭痛に悩まされています。
 Johan(ヨアン) Perruchoudは健康で活動的、前向きな29歳の青年で、この家に11年間住み、4年ぶりにニューヨークから戻ったばかりでした。メディアや個人のためにビデオや映画を作る仕事をしていて、しばしば自分の部屋のコンピュータを使って作業します。
 それまでJohanはWi-Fiでトラブルになったことはなく、睡眠の問題もありませんでした。しかし4月以降、眠りにつくことに苦労するようになりました。家にいると幽霊に囲まれているかのように気分が悪く、夜中に目が覚め、口笛のような耳鳴りが始まりました。
 彼はフェイスブックやスイス連邦政府のウェブサイトを調べ、近所に5Gアンテナが3基あること、そして、自分と同じ問題を抱えている人がいることを知りました(スイスを含む多くの国では日本とは異なり、ネットで基地局の位置が公開されています)。
 Johanはこの2カ月間副鼻腔が詰まっていた(これまで経験がない)ものの、体調は当初より少し良くなりました。しかし、自分に子どもが出来たときに家族で基地局の近くに住むことは論外だと、彼は考えています。「私たちがもっと年をとってから、今起きていることの影響が出てくるでしょう」と彼は言います。

心臓はスポーツマン並みに健康
 もう一人、俳優でステージディレクターのElidan(エリダン) Arzoni(50歳)は、「基地局が設置されてから、一晩で症状が出た」。それまでは「耳鳴りが何であるかさえ知らなかった」のに、急に大きな耳鳴りが始まりました。同時に後頭部などに痛みを感じました。心臓に激しい不快感があり、心臓発作を疑って医療機関で検査したところ「スポーツマンの心臓です」と言われました。
 Elidanが5Gアンテナの存在を告げると、看護師から「アンテナで起こるかもしれない影響について情報提供するためのトレーニングを受けた者はいません」と言われ、唯一「(家から)移動すること」というアドバイスをもらいました。
 Elidanにとって、基地局設置が症状の原因であることは疑う余地がありませんでした。「スイスコムも(基地局設置と発症の)タイミングについては認めました。私の健康は極めて良好です。酒もたばこもやりませんし、医者へ行ったこともありません」。彼の妻と、9歳、16歳、21歳の子どもたちも不眠症になりました。
 Elidanはジュネーブ州知事のAntonio Hodgers(ホジェルス。緑の党)に手紙を書きましたが、この新しい技術はすべて合法である、と言われただけでした。Elidanは「スイス連邦政府がスイスコムの過半数株主であることを忘れるわけにはいきません。彼らの経済的利益と衝突すると、彼らは完全な否定に入ります。だれも市民のことに関心を持っていません」と憤っています。
 彼は耳の痛みに対処しようとしていますが「非常に強くて、ここには住めない」と言います。ジュネーブからすぐ近くのフランスへ行くと痛みが治まり、帰ってくるとすぐ痛みが戻ります。「ジュネーブの市民で、ここで税金を払っているのに、なぜ家を出なければならないのですか? それは完全に非民主的です」と彼は訴えています。
 JohanとElidanの別れ際のコメントは波長が合ったもので「私たちはモルモットのように感じます」だったと記事は述べています。

すべてが速すぎる
 この記事は、開業医のBertrand Buchs(ブフス)のコメントを紹介しています。彼はジュネーブ州議会へ5G一時停止を申し立てた議員(キリスト教民主党)でもあります。
 一時停止を求めた理由について彼は「当局は私たちを馬鹿のように扱っています。この点では当局は常識に反しています。明らかに予防原則に違反しています。なぜわずか2か月でこんなに多くのアンテナが現われるのでしょうか。どのような薬でも、それが良いか悪いかを評価するには何年もかかるのに? すべてが速すぎます。5Gを設置する客観的な緊急性はないのに、私たちは5G競争のただ中にいます。それは事実上、住民に役立ちません。5Gが特定のビジネスに制限され厳重に監視されているドイツのように、スイスもできたはずです」「何も見られないし感じられないので、一般の人々は、原子力分野のようにリスクがゼロであると信じています。ただし、たとえば腫瘍などの点で、数年で大惨事を経験するリスクがあります。州には責任があります」。【網代太郎】

[1] Avec la 5G, nous nous sentons comme des cobayes

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