「コロナ拡大の原因は5G」情報 根拠なく、明らかな誤りも

SNSで拡散されていた図

 第5世代移動通信システム(5G)の電波が新型コロナ感染症(COVID-19)の原因である、または5GがCOVID-19を拡大させているなど、両者を結びつける様々な情報がネットなどで出回っています。もちろん、多くの科学者が指摘しているように5G電波によって何らかの健康影響が発生する可能性はあるのですから、5G電波で免疫力が低下したためにCOVID-19が重症化する可能性を完全に否定することはできません。しかし、今のところ、そのような報告はありません。
 5GとCOVID-19の関連についてはそもそも、COVID-19が発生したとされる中国武漢市が、中国国内の5G先進地の一つであることから言われ始めたように思われます。中国では昨年11月、50都市で5G商用サービスが始まりました。中でも武漢市では、同月時点で市内5,800カ所に5G基地局が設置され、中国国内でも3番目の規模であったと報道されています[1]。
 しかし、中国に先立ち、米国、韓国、スイスで昨年4月から、英国、オーストラリアで同5月から、それぞれ5G商用サービスが始まっています。もしCOVID-19の原因が5Gであるとすれば、なぜそれらの国で中国より先に発生しなかったのかという疑問が生じます。

コロナ発生国と5G展開国は一致しない
 また、上の図に「コロナが発生した国と5Gが展開されている国が見事に一致」という文言が付けられた投稿を、SNSで何度か見かけました。図が荒いので「見事に一致」しているのかどうか、図だけからはハッキリしません。事実としては、5Gの商用サービスが始まっていないフランス、イラン、トルコといった国々でもコロナの感染者・死者が多数出ています。ですので「見事に一致」は明らかな誤りです。
 英国などでは、5GとCOVID-19の関連を信じた人々により、基地局の放火が3月30日以降で77件起きているとのことです[2]。また、基地局工事の作業員が脅迫されたり暴言を浴びせられるなどの事件も起こっているといいます。
 世界保健機関(WHO)は、ウェブサイトに「5GモバイルネットワークはCOVID-19を拡大させない」と掲げています。
 根拠のない情報を事実であるかのように流布させ、また、明らかに誤った情報を流布させることは、電磁波問題に対する市民の誤解を助長し、また、電磁波問題に取り組む方々への市民の信用を損なわせるものと考えます。【網代太郎】

[1]「武漢の5G基地局数、国内3番目の規模に」NNAアジア経済ニュース2019年11月28日
[2]「「5Gが新型コロナウイルスの感染を加速」という偽情報が拡散、英国で基地局や作業員が狙われる事件の深刻度」WIRED 5月8日

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