総務省第3回検討会の傍聴報告

「インターフォン研究」8月中にも結果公表へ

 総務省の「生体電磁環境に関する検討会」の第3回が7月13日に開かれ、これを傍聴してきました。同検討会は「電波による人体への影響に関する研究を促進する」ことなどが目的だとしていますが、「電磁波は危険ではない」という国の見解にお墨付きを与えるための機関であることは、当会報の前号でも述べました。とは言え、新しい情報が得られるなど、傍聴する意義もあります。【網代太郎】

 携帯電話使用と、頭や首のがん・腫瘍との関係を調べるために、世界保健機関の下部組織である国際がん研究機関(IARC)が中心になって「インターフォン研究」が行われました。世界13カ国による大規模な疫学調査です。すでに終了していますが、国ごとの結果などが発表されているだけで、全体の発表が遅れていました。
 このインターフォン研究の「論文の第1報(神経膠腫と髄膜腫について)が現在、科学ジャーナル(学術論文誌)で査読中であり、近く(早ければ8月中にも)掲載される予定であることが、5月28日にIARCのホームページに掲載された」と、この第3回検討会で報告されました。第3報まで続くとのことです。「査読」とは、論文をジャーナルに掲載して良いかなどを審査することです。
 これまで公表された国ごとの結果などのうち、一部は「携帯電話を10年以上使用すると、通話の時に携帯電話機をあてる側(右にあてる人なら右側)の脳腫瘍の発症リスクが、統計学的有意に高まる」ことを示しました(デンマーク、英国など5カ国のプール分析で神経膠腫が1.4倍、スウェーデンの研究で聴神経鞘腫が3.9倍)。このため、世界中が同研究に注目しています。

座長が“意味深”発言
 このインターフォン研究の結果が、早ければ8月中にジャーナル掲載という形で公表されることについて、検討会座長の大久保千代次委員(以下、当研究会事務局長・大久保貞利との混同を避けるため「千代次氏」と呼びます)が次のように発言しました。「このインターフォン研究の論文が掲載された際には、いろいろな意味でインパクトが大きいことが想定されます。その対応が必要な場合には、当検討会としてひとまずの対応は私にお任せいただきたいと思います」。これに対して他の委員や事務局からの発言はありませんでした。
 千代次氏はこれまで、いくつかの国の委員などを歴任して、電磁波は安全であると宣伝し、電磁波過敏症は「電磁波への恐怖によって発症する」と決めつけている方です。「インパクトが大きい」場合の千代次氏による「対応」とは、すなわち、「掲載された論文が、既に伝えられている通りリスク増加の可能性を示す内容であった場合、そのリスクを過小評価するようなコメントを、総務省検討会の立場でマスメディア等を通して発信する」ことではないかと、筆者は推測しました。
 この推測が当たっているかどうかは別として、論文掲載の際には、すかさず市民の側から正確な情報を発信することが必要だと感じました。

WHO等の今後のスケジュール

 WHOおよびICNIRPの今後の想定されるスケジュールが、千代次氏より以下の通り報告されました。

  • 2009年末 超低周波電磁波について2007年にWHOが出したEHCを受けて、ICNIRPが新たなガイドラインを勧告
  • 2011年2月 ICNIRPが高周波電磁波の発がん性評価のタスク会議を開催、2011年内に評価を発表
  • 2013年 高周波電磁波のEHC策定

 多氣昌生委員(首都大学東京)からは、ICNIRPによる高周波ガイドライン見直しまでまだ時間がかかるため、中間声明が行われる予定であると報告されました(時期は示されず)。

市民から応募の研究テーマ15件 委員らが実施に否定的コメント

 本会報前号で報告した通り、総務省は、今後国が行うべき研究について、市民に意見を求めました。これに対し、以下の通り計15件の提案があったことが、第3回検討会で報告されました。

  • 電磁波過敏症について=4件
  • 携帯電話中継基地局やテレビラジオ放送塔周辺の疫学検査・インターフォン研究の追跡調査など疫学調査=8件
  • 電車内など閉鎖空間で反射し強まる電波による影響についての調査=2件
  • 生活環境中の電波発生源の調査=1件

 座長の千代次氏は「これらの提案については、すでにWHOから見解が出されていたり、関連研究がなされているものがあるので、資料を添付しました」旨述べ、添付資料を提出した各委員・事務局から説明がありました。これらの説明は総じて、市民から提出された研究課題に取り組むことに否定的または消極的な評価を与えるものでした。
 たとえば、山口直人委員(東京女子医科大学)は、市民から提案があった、携帯電話基地局と電磁波過敏症(不定愁訴)の関連を調べる疫学調査について、以下のようにコメントしました。

  • 地域内の居住者で条件に当てはまる者は全員調査を行うことが不可欠だが、それは不可能。
  • 調査目的を知らせないことが不可欠だが、知らせなければ参加率が下がり、知らせれば偏った集団になる可能性が高い。
  • 曝露評価は実際の測定が不可欠だが、個人曝露測定は実質的に不可能。基地局からの距離が曝露評価の代理指標にならないことは明らか。
  • 以上から、このテーマの研究を実施したとしても、有意義な疫学データは得られない。

 この山口委員のコメントの妥当性について、私たちはしっかりと検証したいところです。
 各委員などから以上のような説明があった後、千代次氏が「電磁過敏症については、関心が高いことから、リスクコミュニケーションの意味からも再検討したい」旨、発言しました。

結局採用はゼロ?
 結局、市民の提案を採用するのかしないのか、筆者には理解できなかったので、検討会の終了後に、事務局である総務省の担当者に話を聞いたところ、概ね以下のような回答でした。

  • 電磁波過敏症については、研究テーマとするのではなく、検討会委員とは異なる立場の人にも入ってもらって別枠で取り組む。(→つまり、懇談会のようなものを設ける?)
  • 疫学調査については考慮する。インターフォンの追跡調査は、すでに取り組んでいる。(→つまりは、提案は採用しないということ?)
  • 閉鎖空間の電磁波については、今後新たな研究が発表されたら委員に報告させる。
  • 生活環境中の電磁波発生源については、総務省が既に行った測定結果について広報する。

 募集前からの予想通り、提案の採用は限りなくゼロに近そうであるという印象でした。
 ただ、電磁波過敏症については、検討会メンバーでない立場の人も交えてのリスク・コミュニケーションの場を設けることを検討しているようにも受けとめられたので、それを本当にきちんとやるのであれば、意味はあるとは思います。

カテゴリー: 携帯電話, 過敏症, 行政, 調査研究 

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