カネミ油症新認定訴訟で最高裁が不当決定

時代遅れな「除斥期間」を理由に
大久保貞利(カネミ油症被害者支援センター共同代表)

6月2日に突然決定出る
 6月2日、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長他3名で構成)は、原告被害者等がカネミ倉庫㈱に一人当たり1100万円の損害賠償を求めた「新認定訴訟」に対し、上告棄却の決定を行いました。
 最高裁審議は非公開で審議内容はわからず、突然決定が出ます。反対にもし口頭弁論等が実施された場合は、下級審判断の変更つまり逆転判決が出る可能性が高くなります。私たちは6月4日に、東京霞が関の日本弁護士会館で「最高裁勝利に向けた集会」を企画していました。最高裁の不当決定を弁護士が知ったのは6月3日のことです。6月4日の集会は、急遽「最高裁決定抗議集会」に切替わりました。

国内最大の食品公害事件今も被害者は被害に苦しむ
 カネミ油症事件は、今から47年前の1968年に起こった事件です。北九州にあるカネミ倉庫㈱が製造販売する食用の米ぬか油(カネミライスオイル)に、猛毒のPCB(ポリ塩化ビフェニール)とジベンゾフラン(ダイオキシン類)が混入し、それを食した人たちに「病気のデパート」と言われるほど全身に被害症状が出た我が国最大の食品公害事件です。健康被害は45年経っても治らず、2世にも被害は出ている悲惨な事件です。
 当時保健所に届けられた被害届は14000人以上でしたが、認定されたのは現在までで約2200人です。当時裁判が何次かに分かれて行われましたが、最終的に最高裁で敗訴が濃厚となり、「提訴取り下げ」で終わりました。これらの裁判を「旧認定訴訟」といいます。当初はPCBが原因とされましたが、その後20年以上経ってからダイオキシン類も関与すると判明し認定基準が改訂されました。新認定基準により認定された被害者が訴えたのが「新認定訴訟」です。カネミ油症被害者支援センターは2002年に結成され、私はこの問題に10数年取り組んできました。

1審、2審同様、除斥期間を理由に原告請求を斥ける
 1審は2013年3月21日に、福岡地裁小倉支部で判決が出ました。内容は、カネミ倉庫㈱に加害責任はあるとしながらも、民法724条後段規定の「除斥(じょせき)期間を適用し、原告被害者たちの賠償請求権は消滅した、としました。除斥期間とは、不法行為から20年経過したら賠償請求権は消滅するというものです。「君たちの主張は正しいが、訴えるのならば事件が起こった時から20年以内にしろ」というのです。2審は2014年2月24日に、福岡高裁判決として出されました。内容は1審支持です。そして今回の最高裁決定です。
 しかし、新認定被害者は、不法行為から20年以上経って、ダイオキシン類が主要な原因だとして認定基準が改訂されてから認定された被害者です。認定されてもいない時点で提訴しても、「あなた方がカネミ被害者だという証拠はない」として門前払いを受けるのは火を見るより明らかです。こんな理不尽なことはありません。

除斥期間はおかしいとして民法改正される直前の決定
 「不法行為から20年で一律に請求権が消滅する」という除斥期間はおかしいとして廃止され、時効として扱われる民法改正案がすでに国会に上程されています。集団的自衛権という戦争法案の扱いで国会が動いているため、今延長国会で可決されるかどうかは未定ですが、次の臨時国会では通過必至の状況にあります。時効ならば「停止」等の規定があり、除斥期間より柔軟性があります。すでに民法改正についての各界への事前ヒアリングではどこも改正に賛成です。最高裁多数派も今民法改正案に賛成と答えています。そんな情勢下でなぜ最高裁は決定を急いだのか、甚だ理解に苦しみます。

「人間の情がない決定」(被害者発言)
 最高裁決定主文は「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない。上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする」とたったの3行です。理由もわずか9行というお粗末さです。6月4日の抗議集会で、岩村定子原告団共同代表は、「あまりにもひどい決定です。もう少し人間の情というものがあってもいいんじゃないか」と涙ながらに訴えました。
 ダイオキシン被害には「晩発性(ばんぱつせい)」といって、食してから一定期間経過してから発症するケースが多々あります。また被害者の2世にも被害は出ています。今後3世以降に出ないという保証はありません。「不法行為から20年で賠償請求権はなくなる」という判断がいかに不当なものかは明白です。福島第一原発事故により今後何十年先に被害が出ることは十分ありえます。実際、広島原爆の被爆者がずっと後になってから症状が出たことがわかっています。

私たちは闘い続けます
 集会で、参加者一同、最高裁決定を糾弾し、「私たちは被害者救済を勝ち取るまで闘い続ける」ことを確認しました。引き続きご支援を。

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