白熱灯の製造・輸入 政府が「実質禁止」方針か

 政府が2020年度をめどに、白熱灯の製造と輸入を実質的に「禁止」する方針を打ち出しました。電磁波過敏症の方々の中には白熱灯でないと使えない方々もおり、実現すれば大変なことになります。
 報道によると、安倍晋三首相が11月26日、官邸で開いた「官民対話」で、省エネ性能が最も優れた製品の基準を満たさないと製造や輸入をできなくする「トップランナー制度」の対象に、来年度から白熱灯を加えると表明しました。政府はこれを踏まえ、白熱灯と、すでに制度の対象となっている蛍光灯を、省エネ性能が最も高い発光ダイオード(LED)とまとめて一つの品目とし、同制度を適用する方針で、今後、詳細を詰めるとのことです。

禁止ではないが違反すると社名公表や罰金
 トップランナー制度は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づく制度です。この制度の対象とされた機器について、メーカー及び輸入業者は、機器ごとに定めた目標年度において、出荷した製品のエネルギー消費効率と出荷数の加重平均値を算出し、品目区分ごとに設定された基準値を上回るよう努めなければなりません。これに違反すると経済産業大臣が勧告を行い、さらに、勧告に従わなかった場合には事業者名の公表、命令がされます。そして、命令に従わなかった場合には100万円の罰金に処されます。
 省エネでないとの理由で国内のほとんどのメーカーは白熱灯製造から撤退しました。しかし輸入はされているので、消費者は100円ショップなどで安価で購入にきています。しかし、今度は、輸入もできなくするというのです。

「白熱灯はなくなっていく」
 甘利明経済再生相は会見で、「効率の良いところに誘導していくと、生産、輸入が事実上なくなる結果になる」「蛍光灯は圧倒的に効率を上げれば(LEDのエネルギー消費効率に)ついて来られるが、白熱灯はそこまで効率が上がる技術はない。結果としてなくなっていく」と述べました。蛍光灯もLEDと互角かそれに近いエネルギー消費効率が求められることになり、それが実現できたとしても価格が高くなり、結局は蛍光灯も「なくなっていく」のではないかと気になります。
 LEDは省エネだと言いますが、蛍光灯などにはない生物への悪影響を示唆する研究報告があります(会報前号参照)。「LED照明だと目が痛くなる」などの声も聞かれます。時に、電磁波過敏症の方々からは、LED照明だと体が疲れる、体調が悪くなるという訴えを聞きます。まだ新しい技術には慎重に向かい合うべきです。
 また、蛍光灯は電磁波が強いので、蛍光灯の下にはいられないという過敏症の方々もいらっしゃいます。白熱灯がないと生活に重大な支障をきたす方々がいらっしゃるのです。
 さらに、低所得者や中小企業にとって、LED照明への交換は大きな経済的負担になります。テレビの地デジ化の時のような、国が買い換えを強制するような愚は繰り返すべきではありません(またもや補助金をばらまくつもりでしょうか)。このようなことは、ぜひ、やめさせましょう。【網代太郎】

参照:『朝日新聞』2015年11月27日

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