CS支援センター会報に掲載されたスマートメーター記事への疑問

 「NPO法人化学物質過敏症支援センター(CS支援センター)」と言えば(同センター発足時から約5年間事務局長を務めた私が言うのも恐縮ですが)日本を代表する過敏症発症者支援団体であり、国内初の転地療養施設を設置運営するなど、その功績が大であることに異論を唱える関係者は、ほとんどいないのではないかと思います。
 そのCS支援センターが、会報「CS支援第90号」(4月25日発行)に、たいへん疑問のある記事を掲載しました。

「電磁波過敏症でも無視できる」
 羽根邦夫氏による「付録 スマートメーターについて」と題された記事は「一般市街地用は10mWの無線通信機で、帯域が狭いので家庭用の無線LANやWiFiより送信電力は小さい。室内のメーター背面から1m離れれば検出不能」「通信の頻度は、無線マルチホップ方式が周辺のメーターの密度に依存するので、一概に言えないが、30分ごとに0.1秒程度の送信を行う程度」として、「マルチホップ方式とWiFi方式は電磁波過敏症でも無視できます」と断定しています。
 しかし、すでに10人近い電磁波過敏症の方々が、スマートメーター設置によって症状が悪化したと訴えています。当会とCS支援センターはお互いに会報を交換していますので、スマートメーターによる健康被害情報についてCS支援センターも把握していることでしょう。
 にもかかわらず、CS支援センターはこのような記事を掲載しました。この記事を信用してスマートメーターへ交換させた過敏症の方の症状が悪化する場合もあるのではと、心配です。
 そもそも、この記事のデータの正確さも疑問です。市街地で主に採用される通信方式である無線マルチホップの最大出力は「10mW」ではなく「20mW」です。周囲のスマートメーターからバケツリレー方式でデータを受け渡しするわけですから通信頻度も「30分ごと」ではなく、コンセントレーターにもっとも近いスマートメーターは、30分間に数百回通信する場合もあり得ると考えられます。
 また、スマートメーターはすべての家庭や事業所に設置されようとしているので、高密度設置による影響も考慮すべきです。
 そもそも、電磁波過敏症の方が「無視できる」電磁波の強さについて確たるデータはあるのでしょうか?
 CS支援センターには、発症者の声をきちんと受け止めて発症者のために活動するという原点に立ち返って、今回の記事を検証していただきたいです。【網代太郎】

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