障害者差別解消法に基づき 市役所が仲立ち、 アナログメーター認めさせる

 滋賀県大津市在住の化学物質過敏症(MCS)のAさんが、転居先の候補にした同市内の賃貸住宅にスマートメーターが設置されていたことから、市役所の障害福祉課に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」に基づく相談を行い、同課が関西電力(関電)に事情を聞くなどした結果、アナログメーターに交換するという回答を関電から得ることができました。同法を根拠としてスマートメーター問題について行政機関が仲立ちをした画期的な事例です。

すべての障害者が対象
 障害者差別解消法は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする」(第1条)法律で、2016年4月1日に施行されました。
 同法第2条は、同法における「障害者」の定義を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」としています。すなわち、行政に障害者と認定され障害者手帳を持つ者だけでなく、すべての障害者をこの法律は対象にしています。
 同法は、事業者による差別の禁止として「事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」(第8条)と定めています。
 また、行政に対して「国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする」(第14条)と規定しています。
 MCSという障害によって社会生活を妨げられるのは差別であることから、Aさんは大津市役所の障害福祉課に「障害者差別解消法に基づく相談をしたい」と伝えて、市役所内や公共交通機関の空気質の改善について相談してきました。

市の職員が関電に事情を聞く
 Aさんは、MCSを発症したために仮住まいをしている現在の自宅からの転居先を探していて、UR賃貸住宅を候補にしました。そこにスマートメーターが設置されていたため今年4月、自分が電磁波によって体調を崩しやすい体質であり、電磁波を避ける必要があることからアナログメーターに交換してほしい、と関電に要請しました。関電は「一度設置したスマートメーターは交換できない。メーターの安全性は国の指針に基づいているので問題ない」と回答しました。
 Aさんは何度も不愉快な思いをしながら、関電と交渉しました。関電の電話窓口の担当者は「スマートメーターは国の指針値を満たしているので安全である」「アナログメーターはすでに在庫がない」「電磁波過敏症の人がアナログメーターの物件を探して転居すればよい」などと言いました。何か資料を見ながら対応している様子がうかがわれ、相談者の知識量に応じて要望を退けるためのマニュアルが存在しているようにAさんは感じたとのことです。Aさんが「アナログメーターの設置された物件が減っている中、そういう物件を探して転居すればよいと述べるのは、電磁波の影響を受けやすい者の転居の自由を侵害しているのではないか」などと反論すると、関電の担当者は言い返す言葉がなくなったのか「応じる必要はない」とだけ繰り返すようになったとのことです。

市職員が電話で事情を聞く
 Aさんは、スマートメーターについて、大津市の障害福祉課に相談しました。同課の職員は、関電に電話して事情を聞いてくれました。
 関電はこの市職員に対して「スマートメーターは国の基準を満たしたものであり、国の政策に従って交換している。安全性については電磁界情報センターのホームページを参照してほしい。時々、アナログメーターの使用を継続させてほしいという要望はあるが、スマートメーターからアナログメーターに交換することはほとんどない」などと説明しました。
 結局、5月になって、関電は「今回は特別の対応」として、Aさんが入居した場合は、このUR賃貸住宅のスマートメーターをアナログメーターに交換することを了承しました。
 その後、この賃貸住宅は、改装(室内の建材をアルミホイルで覆うなど)をしても化学物質の問題が残りそうだということが分かり、Aさんは別の物件を探しています。関電は地域ごとに別の事業所が管轄していますが、今回交渉した滋賀県南部を担当している事業所の管轄内であれば、今回の交渉結果をもとに、新たな転居先がスマートメーターの場合、アナログメーターに交換してもらえることになりました。
 Aさんは「今回は障害福祉課の担当者の方が私の訴えを電力会社に伝えてくださり、第三者を入れたことで交渉がうまくいきました。自分が生きやすい環境を得るためには、諦めずに声を上げ続けることが大切だと思いました。障害者差別解消法は、誰もが生きやすい社会になるように作られた制度ですので、制度を利用して、より良い話し合いを進めて頂ければと思います」と話しています。【網代太郎】


最近24時間の訪問者上位記事

Copyright(c)電磁波問題市民研究会 All Rights Reserved.