今後20年間の研究方針を2カ月で検討! 総務省「戦略検討会」は利権確保目的か

 総務省は1月19日、生体電磁環境に関する研究戦略検討会の開催を発表しました。今後「国民生活において電波の利用がより一層拡大するとともに、利用形態が多様化することが見込まれ」ることから「過去20年間程度の生体電磁環境に関する研究動向等を分析の上、2040年頃までを見据えた、電波の安全性に関する中長期的な研究のあり方について検討を行います」と総務省は同検討会の開催理由を説明しています。
 1月25日に第1回が開かれ、3月29日の第5回で報告書(案)を審議、4月以降にパブリックコメント募集および報告書案とりまとめ、というスケジュールです。今後20年間の研究のあり方を、実質わずか2カ月でまとめるという「慌ただしい検討会」(検討会座長の上野照剛・東京大学名誉教授による第1回での発言)です。
 なぜ今、なぜこのテーマなのか、なぜ急ぐのか。いかにも「予算消化のため」という印象です。
 筆者はこの検討会を全部ではありませんが傍聴しています。第2~4回は「有識者」から、これまでの研究動向や今後の提案についてヒアリングを行いました。第2回は「高周波」、第3回は「中間周波」、第4回は「超高周波」を中心に、それぞれヒアリングしました。「有識者」はそれぞれ様々な提案を行いましたが、その中から検討会の委員たちは、このような短期間で、何を基準に選び優先順位をつけるのでしょうか。仮に各提案を網羅するような報告書にしても、それらをすべて研究することは不可能でしょう。結局、これまで総務省から委託を受けていた研究者たちができる研究を選んで盛り込んだ報告書になるのかもしれません。
 総務省が委託したこれまでの研究は、基本的にすべて、利用されている電波について「危険という証拠はない」という結論です。そうであれば、もう総務省として電波の安全性を研究する必要はなさそうなものです。実際、民主党政権の時、いわゆる事業仕分けで「廃止を含めた全面的な見直し」と評決されたことがあります。
 これまで総務省から研究費を得てきた学者たちは、これからも研究費がほしい。また、総務省も既得権としての予算枠を守るために「諸先生方が継続的な研究の必要性を指摘している」と財務省を説得する材料がほしい。そのための検討会なのではないかと思えてしまいます。
 とは言え、多くの専門家が(たとえ御用学者でも)発言しますので、傍聴していると勉強になりますし、貴重な情報を得ることもできます。
 たとえば、多氣昌夫・首都大学東京教授は、生活環境中の電波曝露について、以下の主旨のことを指摘しました。「第3世代携帯電話は平均出力電力が微弱となったため、携帯基地局や家庭内のWi-Fiアクセスポイントからの曝露が無視できないか、むしろそれらのほうが曝露への寄与が大きい状況である」。つまり、携帯基地局からの電波やWi-Fi電波によって健康影響を受けていると訴える人々に対し、訳知り顔の人々が言いがちな「あなたが使っている携帯電話からの電波のほうがよほど強い」というセリフは(多氣教授のような御用学者から見ても)正確さに欠ける、ということになります。【網代太郎】

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