国が「規制緩和が不十分」とすべての提案に“落第点” スーパーシティの“不必要さ”逆に証明

内閣府のウェブサイトより

 「丸ごと未来都市」を目指す国のスーパーシティ構想に、31の地方公共団体が応募しました(会報第130号既報)。しかし、8月6日に開かれた内閣府の「第1回スーパーシティ型国家戦略特別区域の区域指定に関する専門調査会」(以下「調査会」と言います)は、これらすべての応募について「大胆な規制改革の提案が乏しい」などと“落第点”をつけ、再提出を求めることにしました。裏を返せば、自治体や住民は「大胆な規制改革」など求めていないことの現れと言えます。問われているのは、自治体の姿勢ではなく、スーパーシティの必要性のほうです。

申請31地方団体へ再提出を求める
 スーパーシティ構想とは、「AI(人工知能)やビッグデータを活用し、社会の在り方を根本から変えるような最先端の『丸ごと未来都市』を、複数の規制を同時に緩和してつくる」というものです。日ごろから電磁波による健康影響で悩んでいる方々は「最先端の未来都市⇒5G基地局設置⇒電磁波増加」に注目しがちです。もちろんその問題はありますが、国がスーパシティで一番やりたいことは「大胆な規制改革(規制緩和)」です(スーパーシティにならなくても、携帯電波を多用するような事業などを企業、行政などが導入すれば5G電波は増えるでしょう)。とりわけ「複数のサービスのデータ連携」を重視しており、個人情報保護規制が緩和され個人情報データが「活用」されることによるプライバシー侵害、監視社会化が懸念されています。

「例外者」へ強制せよ
 8月6日の調査会の「議事要旨」がネットで公開されています。これを見ると、調査会の委員らが、口々に地方公共団体からの申請内容を批判しています。たとえば、以下の通りです。
 「ワーキングの私どもが特に注視したのは、どれだけきちんとした岩盤規制の改革を目指しているかということであります。その一つの基準としては、住民合意を要する規制改革をするというのがあります。例えば、安全性を理由にこれまで阻止されていた規制改革を、住民が、安全性に関するリスクを受け入れても、改革すべきだと合意するならば、非常に大きな岩盤規制改革を行えます。そういう規制の改革を含むということが一つの基準です。(略)結果的に今回の提案は、改革の規制の規模が小さかったり、本当に住民合意を必要とする改革ではなかったりといった問題を抱えていました。そこで、本来の制度趣旨に立ち返って、提案自治体において提案内容の見直しをしていただ(略)くべきではないかということが(地方公共団体からヒアリングした)結果でございます」(八田達夫委員=アジア成長研究所理事長、大阪大学名誉教授)
 「(地方公共団体からの提案は)規制改革がなくても実施可能なサービスが多かった」(三浦聡・内閣府地方創生推進事務局審議官)
 「日本でよくあるケースは、新しい仕組みを入れると必ず古い仕組みを残すのです。(略)代表的な例は、高速道路はいまだに(略)ETCと例外者向けの(有人)ゲートがあって(略)。だから今回の個々の取組もそれぞれの小さな町で2つのシステム、新旧が並存して続くようだったら最悪です。したがって例外者はちゃんと説得して、強制力を持って全体最適でやっていくのだという覚悟を負うべきだと思います」(坂村健=東洋大学情報連携学部INIAD学部長、東京大学名誉教授)
 「(地方公共団体の再提出を助けるために)ブレーンストーミング[1]型のハンズオン[2]の形を今回つくってみたらどうだろうかというのを一つ提案したいと思います。これはやはり首長に来ていただきたい。(略)ここで首長が出てこないようなところは、もう(スーパーシティの指定を)御遠慮いただいたらいいということなのだと思います」(竹中平蔵委員=慶應義塾大学名誉教授)
 調査会委員らの発言を読んで、筆者(網代)はスーパーシティは断固阻止すべきという思いをさらに強くしました。
 委員らは「規制改革」を自治体へ迫ります。さまざまな「規制」の中には、問題があったり、時代遅れのものもまったくないとは言いませんが、そもそもは必要だから規制が行われてきたはずです。市民の安全が企業の営利活動によって脅かされないように、あるいは中小企業を大企業から守るためなど、強者が力任せに好き放題することを防ぐために規制があります。そのような規制を「住民合意」を行わせることによって「住民が、安全性に関するリスクを受け入れても」改革(緩和)せよ、と委員らは迫っています。委員らが考える「住民合意」は、少数の「例外者」(反対者)の声を押し切ることで得られた「合意」で十分なのでしょう。そして「住民合意」が一度なされた後は「例外者」の言い分は「強制力」をもって排除すべきだと、委員らは言っているのです。
 規制を緩和、撤廃して、企業に自由に活動させれば経済が活性化するという委員らの新自由主義的な信念を実現するためには、地方自治、民主主義を破壊し、市民の安全を犠牲にしても構わない、それがスーパーシティであることを、委員らは口々に自白しているのです。
 一方で、自治体、住民側は「規制緩和」など必要としていないのです。補助金がもらえれば良いというのが、スーパーシティに名乗りを上げた多くの地方公共団体の本音ではないでしょうか。
 スーパーシティの危険性がますますハッキリしてきた以上、国による再提出要求などはねつけて、きっぱりと申請を取りやめる道を選ぶべきではないでしょうか。
【網代太郎】

[1]ブレインストーミングとは、集団でアイデアを出し合うことで互いに刺激しあい、その場で創造的な発想を生むこと。
[2]ハンズオンとは、ここでは、国の担当者や調査会の委員が、自治体を手取り足取り指導する、という意味か?

 

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