スマートメーターのオプトアウト(拒否)制度はすでに開始 エネ庁担当者が明言

有料化の検討については具体的回答避ける

エネ庁担当者(手前)と交渉する当会大久保事務局長(右)、網代=9月29日、大河原雅子衆議院議員事務所

 経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)の検討会[1]が、スマートメーターをオプトアウト(拒否)した需要家(電力消費者)から追加料金をとる方針を打ち出したことに対して、その撤回などを求める要求書を当会は提出しました(会報前号既報)。一般送配電事業者(電力会社)からの回答は、前号でご紹介しました。前号発行後の9月29日、エネ庁の担当者と会談して回答をいただきました。担当者は、有料化の検討については具体的な回答を避けましたが、ハッキリしていなかったオプトアウト制度の開始時期については、すでに開始しているという見解を示しました。
 交渉は、衆議院第一議員会館の大河原雅子議員事務所で行われました。エネ庁の担当者は異動で前回から2人とも変更となり、電力・ガス事業部政策課電力産業・市場室のG室長補佐と、同室のS専門職が出席、当会からは大久保事務局長と筆者(網代)が出席、大河原事務所からは塩田三恵子秘書が同席しました。

「すでにオプトアウトは対応されている」
 当会による要求書のうち、「オプトアウトを希望するすべての需要家について、無条件にこれを認めてください」「オプトアウトを即時認めてください」の項目に対して、G室長補佐は「すでに個別の事案に応じて、電力会社のほうでオプトアウトに対応をしていただいていると承知している」と回答しました。
 前述の検討会とは別のエネ庁の審議会[2]が「オプトアウト制度の具体的な手続きや開始時期等については、一般送配電事業者においてその詳細を検討すること」と5月に決めていました。実際には、スマートメーターを拒否する需要家に対して事業者は、アナログメーターへ交換したり、または(本来はアナログメーターへ交換すべきですが)スマートメーターから通信部を外す対応をしているため、オプトアウトは既に始まっているとも言えます。しかし一方で、需要家がスマートメーターを拒否したときに事業者側がそれをすんなりとは認めないケースも、いまだに報告されています。このようなあいまいな状態であるうえに、審議会が「開始時期」をこれから検討するという決定をしたため、四の五の言わず、即時・無条件にオプトアウト認めるべきだ、と私たちは要求をしたのです。
 エネ庁の担当者が「事業者はすでにオプトアウトに対応している」との認識を示したことにより、もしも今後、スマートメーターを拒否したときに、事業者側が「ウチではそういう対応はしていない」などと言うことがあったら、「エネ庁が言っていることと違う」と、事業者側を追及することができます。

有料化は「事業者と一緒に検討」
 当会からの「オプトアウトの際に追加料金を徴収するという方針を見直してください」との要求に対し、G室長補佐は「スマートメーターの電気の安定供給や再エネ導入促進などの社会的意義、オプトアプトで追加コストがかかるという実務的観点、そして、オプトアウトせざるを得ない需用家の事情について、どうバランスをとるか、そういったことを総合的に考えて、オプトアウトをどうするかについて、しっかりと電力会社と一緒に検討していきたい」と回答しました。
 会報前号でも書きましたが、審議会[2]で5月に「オプトアウト制度の具体的な手続きや開始時期等については、託送供給等約款[3]にも関係するところ、その対象や方法を含め原則全社一律とし、一般送配電事業者においてその詳細を検討する」ことに決まり、9月に再開された検討会[1]の論点からオプトアウトが外されました。この経過から私たちは、オプトアウトの検討についてエネ庁が事業者へ丸投げしたと理解しました。しかし、これも会報前号に書きましたが、私たちの「追加料金徴収の見直し」要求に対して、事業者10社は「国の審議会の決定に基づいて対応」と回答したのです。
 エネ庁と事業者のどちらが検討するのかについて、今回、エネ庁は「事業者と一緒に検討」と回答しました。
 当会は「事業者にオプトアウトのコストについて計算させていて、その結果が出たら、どこかの審議会で(追加料金について正式に)決めるということか」と質問。これにG室長補佐は「どの場でどういう形で決めるかは決まっていない」と回答。また、審議会などを開かないで決まることもあるのか」と質問したところ、G室長補佐は「そこは私もまだ考えていない。何となくイメージみたいなものがあるが、ちょっとそこは確定的ではないので……」と、意味深な言い方をしました。
 なぜエネ庁は、奥歯にものが挟まったような言い方をするのでしょうか。何かを隠しているのでしょうか。前回、G室長補佐らの前任者たちと5月に会った時には、オプトアウトについて「どこで、いつから検討するのか、まだ決まっていない」と回答されましたが、実は、その2週間後に、審議会[2]でオプトアウトについて議題に上ったのです(会報前号既報)。このようにウソをつかれた経緯もあるので、私たちは、角度を変えながら何度も質問しましたが、有料化の検討に関して、具体的なことは聞き出せませんでした。
 進捗状態などについて私たちが問い合わせした時には対応することを約束していただいたので、時々問い合わせることにしました。11月19日の筆者による電話での問い合わせに対して、オプトアウトの検討については進捗はなく、次世代スマートメーターの機能や仕様の検討が優先されている旨、G室長補佐は説明しました。
 ちなみに、私たちが前任者からウソをつかれたことを聞いたとき、G室長補佐は驚いた様子で「(ウソをついたのではなく、会議を開くことは決まっていたが)直前にオプトアウトの議論も入れることになったのかなと想像はするが、真相は分からない」と述べていました。

「アナログメーターは調達が困難」
 「オプトアウトで、アナログメーターの設置を希望する需要家には、アナログメーターを設置してください」との私たちの要求に対して、G室長は「電力会社に確認したところ、アナログメーターを作っているメーカーが廃業してしまって、調達が困難という話だった。電力会社において個別に対応して、可能な範囲で(アナログメーターへの交換に)対応していると認識している」との回答でした。
 当会が「アナログメーターを製造していたメーカーが廃業した事実はない」と抗議すると、G室長は「アナログメーターの部品を製造していたメーカーが廃業した」と、回答を修正しました。
 当会は「電力会社が発注すればアナログメーターを製造するはず」と指摘しましたが、エネ庁担当者側から具体的な反応はありませんでした。

「この場で聞いている」
 「オプトアウトを希望している需要家から意見を聴く場を設けてください」との当会の要求に対して、G室長は「こういった場を通じてご意見をうかがいたい」と回答しました。しかし、私たちは要求書(会報前号に掲載)に「検討会を引き継いで今後の検討を行う審議会の場においてオプトアウトを希望している需要家から、その切実な理由など、意見を直接聞く機会を設けてください」と書いています。検討会では、ほとんど議論のないまま、事務局が提案した「有料化」が決まりました。検討会の委員らが、オプトアウトを求めている人々の事情や思いを知らないから、ほとんど意見が出なかったのでしょう。私たちはそのことを改めて指摘しました。
 あわせて、スマートメーターによって世界中で被害が出てトラブルになっていることを、エネ庁はもっと深刻に受け止めるべきである、と訴えました。【網代太郎】

[1]次世代スマートメーター検討会
[2]総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会
[3]「託送供給等約款」は、小売電気事業者等が一般送配電事業者の送配電設備を利用して電気の供給を行なう場合の料金・その他必要な条件を定めたもの

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