欧州委員会 5Gなど厳しい規制提案の市民団体を登録 署名が100万人集まったら 法案を提出するかどうか検討

登録された団体のフェイスブックより

 欧州委員会(EU)は10月7日、「ストップ(((5G))))--接続されつつ防護を」という市民団体を「欧州市民イニシアティブ(ECI)」に登録しました。ECIとは、EUが権限を持つ政策分野について、加盟国7カ国から計100万人以上の署名を集めれば、欧州委員会に対して立法を提案することができる制度です。民主主義が発達した欧州らしい仕組みです。
 駐日欧州連合代表部によるウェブサイト[1]によると、欧州イニシアティブに登録される条件は、

  • 団体(市民委員会)の構成が要件を満たしており、代表・副代表が指定されている
  • 案件が欧州委員会の権限の範囲内にある
  • ECIの制度を悪用、乱用していない、無規律ではない
  • 提案の内容がEUの基本的価値に反していない

--で、これらの条件に合致していれば登録されるとのことです。

 署名は紙かオンラインで集め、1年間以内に以下の条件を両方ともクリアする必要があります。

  • 加盟国のうち7カ国から合計100万人以上の署名を集める
  • 加盟国のうち7カ国から、それぞれの最低必要人数(国ごとに違う)以上の署名を集める。

 上記をクリアしたうえで署名が有効と認定されれば、イニシアティブは欧州委員会に提出されます。欧州委員会はイニシアティブを検証し、法的・政策的な行為を行うかどうかを3カ月以内に決定します。欧州委員会が法案を提出すると決定した場合、欧州議会とEU理事会は通常の手続で法案を審議します。【網代太郎・訳も】

[1]欧州市民イニシアチブとは?

欧州委員会のプレスリリース

 本日、欧州委員会は、「Stop (((5G))) – Stay Connected but Protected(ストップ(((5G))))-接続されつつ防護を」という団体を、欧州市民イニシアチブ(ECI)に登録することを決定した。このイニシアチブの代表者は、欧州委員会に対し、高周波電磁界およびマイクロ波放射によって生じると疑われるある種のリスクからすべての生物をより防護し、5Gおよび関連するデジタル化が環境に与えると疑われるその他の影響から防護し、これらの新しい形態の通信技術で処理される個人データをサイバー犯罪を含めて効果的に保護するための法律を提案することを求めている。
 今回の登録の決定は法的な性質のものであり、この取り組みに関する欧州委員会の最終的な法的・政治的結論や、この取り組みが必要な支持を得た場合に欧州委員会が取る行動に、予断を与えるものではない。
 同団体は関連する法律で定められた正式な条件を満たしているため、欧州委員会はこの団体の登録が法的に認められると判断した。欧州委員会は、現段階では提案の内容を分析していない。
 この登録は、欧州委員会が何らかの形で同団体の内容が実際に正しいと確認したことを意味するものではなく、その責任は同団体にある。実際、この団体の主張の多くは、欧州委員会が入手可能な科学的証拠や、世界保健機関(WHO)から健康リスクの評価を委任されている国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の評価に反するものである。
 同団体の主張は、同団体の見解を示したものに過ぎず、決して欧州委員会の見解を反映したものではない。(以下略)

原文:Commission decides to register new European Citizens’ Initiative

提案内容

目的
 5Gの展開は、健康的な環境、自由、プライバシーに対する私たちの権利を危険にさらしている。欧州委員会に対し、これらの脅威から市民と環境を守るための法律を提案することを求める。

 1 人間、動物、植物は放射線の影響を受けている。現在の曝露規制では、特に脆弱な人々(子供、妊婦、患者、高齢者など)、動物、送粉昆虫、植物を十分に保護できない。-すべての生物を高周波およびマイクロ波から守るための規制を制定する。*
 2 5Gでは、接続される電子機器、アンテナ、人工衛星の数が爆発的に増加する。持続不可能なエネルギー消費、放射線の放出、有害な採掘、汚染が発生し、生物多様性や自然生息地が危険にさらされる。-5Gとデジタル化のあらゆる影響から環境を守るために、より強力な規制を制定する。*
 3 5Gは、接続されたモノからの大量のデータ収集と監視を可能にする。これにより、サイバー犯罪、データ漏洩、窃盗、転売、人工知能の悪用などのリスクが高まる。-私たちのプライバシー、セキュリティ、自由を守るために、効果的なデータ保護を制定する。*

*具体的な提案は別紙のとおり。

別紙
高周波・マイクロ波からすべての生命を守るための規制を制定する
 最新の研究を含む、産業界から独立した何百もの査読付き科学研究により、高周波電磁界(RF EMF)が現在の制限値の数百万分の1の強度で有害な生体影響を及ぼすことが証明されている。私たちは、環境と人間の健康に対するリスクから守るために、RF EMFに予防原則を適用することを要求する。
<EU法で実現すべき10の案>
 1.人間(特に子供、妊婦、患者、高齢者、病弱者、電気過敏症患者(EHS)、放射線で負傷した人、電気医療機器やインプラントを使用している人を保護するために、熱影響だけでなく、すべての健康・生物学的影響に基づいたRF EMF曝露制限を制定し、予防原則を適用する
 2.勧告1999/519/EC[訳注:EUが一般公衆向け国内規制値としてICNIRPの国際指針値を導入することを推奨したもの]および職場指令2013/35/EU[訳注:EUが労働者向け国内電磁波規制値としてICNIRPの国際指針値とほぼ同等の国内規制値を導入することを義務付けたもの]を更新する。これらは「定期的に見直し、再評価されるべき」
 3.勧告1999/519/ECおよび職場指令2013/35/EUは、「入手可能な最善の科学的データに基づかなければならない」としている。私たちは、以下のような科学的・実証的なガイドラインの中で、最も保護的なものに制限値を設定することを要求する
  -欧州評議会決議1815
  -バイオイニシアチブ2012
  -ビルバイオロジー評価ガイドライン
  -EUROPAEM EMF Guideline 2016
 4.生物医学の専門知識を持ち、利益相反のない科学者によって追加曝露ガイドラインが作成されるようにする:RF EMFの生物活性パラメータを評価するための新しいパネルを任命するか、「保健衛生、環境及び新興リスクに関する科学委員会(SCHEER)」の活動を拡大する
 5.無線機器、アンテナおよびその動作の試験では、RF EMFの生物活性パラメータをすべて評価するようにする
 6.無線接続をケーブルに置き換える。病院、幼稚園、学校、老人ホーム、すべての公共施設などでただちに行うこと
 7.無線接続に伴う危険性と、その影響を最小限に抑える方法(例:ケーブルの使用)について、一般の人々を教育する
 8.加盟国に対し、自治体に低・無放射線地帯を設けるよう助言する。すべての自然保護区と公園を低・無放射線地帯とすること
 9.人間の健康と生物的完全性(bio-integrity)を守るために、EU市民にRF電磁波を浴びる前にインフォームド・コンセントを求める
 10.予防原則に基づいて、動植物の保護のためのRF EMFの曝露限度に関する指令を制定すること

5Gとデジタル化のあらゆる影響から環境を守るため、より強力な規制を制定する
 5Gとモノのインターネットの導入は、エネルギー効率の高い持続可能な未来への一歩となるどころか、汚染と資源の枯渇に大きく貢献する。2025には、世界の電力消費量の20%を占める可能性がある。
<EU法で実現すべき10の案>
 11.指令2011/92/EU[環境アセスメントについての指令]を更新し、5G展開とすべての電気通信を附属書1のプロジェクトに含め、これらのプロジェクトを指令が規定している環境アセスメントまたはスクリーニングの対象となるようにする
 12.欧州グリーンディールの行動計画において、有線および低エネルギーのソリューションを優先することで、デジタル通信技術に起因する大量の電力消費を削減する
 13.「電気・電子機器からの廃棄物」(WEEE)、その他の廃棄物、および電子機器に使用される希土類鉱物や金属の採掘による環境への影響を「汚染ゼロ行動計画」に含めること
 14.アンテナや衛星を含むすべての接続機器の資源とエネルギーの浪費を厳しく制限する2009年のエコデザイン指令の更新
 15.RF EMFの生物学的に有害なパラメータをすべて汚染物質として認識する。すべての関連するEU政策と指令にそれらを含める
 16.環境モニタリング計画、2030年に向けたEU生物多様性戦略、EUの自然回復目標、生息地・鳥類指令、ナチュラ2000に、RF EMFのすべての生物学的有害パラメータのモニタリングを含める
 17.環境への悪影響が解決されるまで、世界中で5G衛星のメガコンステレーション[訳注:静止衛星よりも低い高度に配置された複数の衛星を連携させて地上の通信に利用させるもの。会報第123号参照]を直ちにモラトリアムすることを求める
 18.欧州宇宙政策において、すべての宇宙プロジェクトの環境影響評価を優先する

私たちのプライバシー、セキュリティ、自由を守るために、効果的なデータ保護を制定する
 あらゆる機器が365日24時間、私たちのデータを収集し、差別を再現したり悪化させたりすることが証明されている人工知能によってビッグデータとして処理されるという「身体とモノのインターネット」のシナリオにおいて、現在のデータ保護は不十分である。また、5Gへの投資の70%が、顔認識カメラやドローンなどの監視システムへの投資であることも非常に気になる。
<EU法で実施すべき5つの案>
 19.接続されたモノや身体を含む個人データの保護に5Gが与える影響の評価を開始し、現行のデータ保護法への準拠を評価する
 20.無線による収集(医療データや銀行データなど)にデータ最小化の原則を適用することで、増加するサイバー犯罪から市民を守る
 21.欧州データ保護委員会が差別やデジタル著作権の侵害に対して積極的かつ独立して戦うようにする
 22.個人データを自動化された手続の対象とする場合には、各人の明示的な同意を求める
 23.生物医学の専門知識を持ち、利益相反のない科学者が中心となって、デジタル・イノベーションを認可するかどうか、あるいはどの程度認可するかについて、公開討論会を開催する:新しい倫理委員会を任命するか、欧州科学・新技術倫理グループ(EGE)の活動を拡大する
(以下略)

原文:Stop (((5G))) – Stay Connected but Protected

 

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