KDDIは3月9日、国内通信事業者として初めて埋設型5G基地局の運用を開始したと発表しました。このタイプの基地局について私たちは「マンホール型」基地局という表現になじみがありますが、同社は「ハンドホール形状」という表現を使っています[1]。
発表によると、運用を開始したのは2022年12月で、場所は東京・大手町のKDDI大手町ビル敷地内。同社は2018年から埋設型基地局の商用運用開始に向けた検討を進め、2022年12月に電波発射に成功し、今年2月まで電波伝搬特性などの検証を行い半径約50mの通信エリアが確保できることを確認したと説明しています。従来の鉄塔やビル屋上に設置する基地局は景観に影響を与えることがあるため、今後、埋設型基地局の活用により、美観地区など景観への配慮が必要な場所のエリア化の加速を目指すと、同社は述べています。
埋設型基地局は、ドコモも開発を進めています。
基準値の10分の1~100分の1の電波
埋設型基地局からの電波に対する規制については、2021年3月に総務省情報通信審議会が答申[2]を出し、これに基づいて、埋設型基地局の測定方法が同年7月に定められました[3]。答申に掲載された曝露評価によると、埋設型基地局から電波防護指針の10分の1~100分の1程度の電波を曝露する可能性があります。そもそも電波防護指針が緩すぎるものであり、その100分の1程度の電波で基地局周辺の住民が健康影響を訴えた事例があります。埋設型基地局が今後増えれば、新たな健康影響が増えるのではないか、また、電磁波過敏症の方々がますます生活しづらくなるのではないか、心配です。【網代太郎】
[1]マンホールは、下水管や地下ケーブルなどの点検や掃除などのために設ける、人が入って作業できるようにした施設。ハンドホールは、地中に埋設する電話線などの敷設・修理のために設ける桝。手だけを入れて作業する(カネソウ株式会社のウェブサイト)。
[2]地中埋設型基地局等の新たな無線システムから発射される電波の強度等の測定方法及び算出方法に係る技術的条件」に関する一部答申
[3]電波法施行規則の規定に基づく告示(無線設備から発射される電波の強度の算出方法及び測定方法)を改定