スマートメーター 東電、経産省、総務省と会談

 電気を使っている家庭、事業所などの電気メーターの全部をスマートメーターに交換するという国の方針にもとづき、全国の電力会社がスマートメーターの導入を進めたり、または導入に向けた準備を行っています。しかし、電波を送受信することから、海外では健康影響の訴えが出ています。また、各家庭などでの電気使用量情報が30分ごとに把握されることから、プライバシー侵害を懸念する声も根強いです。
 当会は昨年7月に、経済産業大臣、東京電力(東電)社長、電気事業連合会(電事連)会長宛に、書面でスマートメーターについての質問と要望を行うとともに、担当者との意見交換の場を設けるよう求めました。8月に東電と電事連から書面でご回答いただきましたが、内容に納得できない点があり、回答漏れもあったので、10月に両者へ再度書面を送付しました。11月に回答書をいただきましたが、なお十分な回答ではありませんでした。また、会談による意見交換は両者とも拒否しました。さらに、経産省からは一切回答がありませんでした(以上、会報84・86号で既報。質問と回答の全文は、当会ウェブサイトの「申入れ・要望等」をご参照ください)。
 当会で対応を再検討し、質問などの項目を絞ったうえで、今度は東電、経産大臣、総務大臣の3者へ書面を送付し、会談に応じていただくよう粘り強く要求し続けました。その結果、2~3月、それぞれの担当者との会談を実現しました。それらの概要をご報告いたします。
 電波を送受信するスマートメーターを導入するという国の方針じたいに、当会は反対です。ただ、スマートメーターを自分の家などに設置されることを拒否したい市民への対応については、経産省も東電も方針をまだ決めていないようで、今後市民が声を上げていくことによって、少なくとも拒否したい市民は拒否できるようにしていきたいと思いました。
 また、東電では4月からスマートメーターの導入を始めるとしていますが、3月下旬になっても具体的なことがあまり決まっていないことが印象的でした(本当に決まっていないのか、それとも隠しているだけなのか、はわかりませんが)。

東京電力

 3月26日、東電スマートメーター推進室のI課長代理、N課長代理の2名(説明等はI課長代理が担当)と、当会事務局メンバー3名が、約30分間会談しました。なお、同推進室は30~40名態勢とのことでした。
 まず、「スマートメーターが通信を行う頻度、時間をお教えください」「無線マルチホップの場合、コンセントレーターとの距離が近いスマートメーターは、その距離が遠いものと比較して、相対的に通信の頻度、時間が増えるという理解でよろしいでしょうか?」との当会からの質問に対し、I課長代理は「これまで書面で回答した通り、セキュリティに万全を期するために技術的な情報は社外へは一切開示しないという扱いにしている」と説明しました。
 当会は「仕様をすべて詳細に公開するよう求めているわけではない。なぜそこまで隠すのか」「それらの公表によってセキュリティが損なわれ、公表しなければセキュリティが守られるとは考えにくい」「電磁波による健康影響を訴えている人たちが現実にいる。その方々の健康に関わる問題だから質問している。自分の家の電力使用量を送信するのは30分に1回とのことだが、無線マルチホップ方式の場合、自分の家だけでなく周りの家の情報も送受信するのだから(図参照)、通信の頻度は30分に1回より多いと思われるし、コンセントレーター(各家などと電力会社側との通信を中継する基地局のような機能のもの)の近くのほうが通信頻度が多いように思われる。そのような情報があれば、電磁波に悩んでいる人たちがそういう場所を避けることができる」と指摘しました。
 I課長補佐は「われわれも隠そう隠そうと思っているわけではなく、できる限り理解していただきたいと思っているが、当然、開示できる範囲は社内で議論して決めている」などと答えました。
 私たちは、再検討するよう、強く求めました。

バケツリレーのようにメーター間で電波を送受信しあう無線マルチホップ方式(東京電力「スマートメーター通信機能基本仕様」2012年3月21日)

バケツリレーのようにメーター間で電波を送受信しあう無線マルチホップ方式(東京電力「スマートメーター通信機能基本仕様」2012年3月21日)

電磁波測定は実施することに
 「スマートメーターからの電波の強さの測定調査をしていますか? している場合は、その調査結果及び結果に対する貴殿のお考えをお示しください。調査をしていない場合は、調査の実施を求めます」との当会からの質問・要望に対して、これまで東電は文書で「国の定める基準(電波防護指針)に基づき、人体や電気機器類に影響を及ぼすことのないよう開発を進めている段階のため、現段階でお答えできる状況ではありません」と回答していました。
 この日、I課長代理は「社内で検討をしてきたが、測定してデータを示して電波防護指針を守っていることの理解を得ていく」と述べ、今後、測定を実施する方針であることを示しました。
 「国内及び海外におけるスマートメーターによる健康影響の訴えについて、調査をしていますか? している場合は、その調査結果及び結果に対する貴殿のお考えをお示しください。調査をしていない場合は、調査の実施を求めます」との質問・要望に対し、I課長代理は「調査はしているが、他社で起きていることを当社が回答する立場ではないということで、これまでは回答を差し控えてきた。その後、差し支えない範囲で、とのご要望をいただいたので、先般、資料を(当会へ)お送りした」と述べました。
 この資料とは、経産省の「第13回スマートメーター制度検討会」で配布された、「スマートメーターの導入・活用に関する各国の最新動向」(三菱総合研究所、2013年11月)です。これには、米国カリフォルニア州で健康被害の懸念から反対運動が起こりスマートメーターを拒否する人は既存の機械式メーターを選べるようになったことや、国によっては全戸設置が義務づけられていないこと(オランダ、ドイツなど)など、海外におけるスマートメーターの導入状況が示されています。

通信は「無線かPLCで」
 「スマートメーターと電力会社側との間の通信は、電波でなく有線で行う仕様に」との要望に対しては、東電のこれまでの書面による回答と同様、この日も「幅広く意見を公募したプロセスで決めており、場所によって最適な方法をとる。電波を使うが人体や電気機器に影響を及ぼさないように配慮をしていく」という説明でした。
 携帯電話電波を使った送受信、特定小電力を使った無線マルチホップのほか、集合住宅では電気配線を利用したPLCを利用する場合もあるとのことでした。

「電波送受信」は交換前に通知
 これまでの東電による文書での回答によると、「スマートメーター取替工事の約1週間前には、周知チラシ等により事前通知したします」とのことでしたが、「スマートメーターが電波を送受信することは通知内容に含まれていますか?」との質問については「スマートメーターの機能の説明内容については、現在検討中」として、回答を得られていませんでした。
 しかし、この日、I課長代理は「その後の検討により、まだ最終確定ではないが、電波などを使って通信するという内容は入れる方向」と答えました。

初めは地域を限定して導入
 「従来のメーターからスマートメーターへの交換を希望しない需要家には、交換を拒否できることとしてください」との要望について、東電はこれまでの書面で「現時点で具体的な対応方法は決まっておりませんが、今後、お客さまのご要望等をふまえて対応を検討してまいります」と回答していました。
 この日、I課長代理は「4月からスマートメーターを一斉に関東一円に広げていくのではなく、まずは一部地域で設置をしていくことを考えている。その中で、いろいろな声を収集しながら、検討させていただく」と説明しました。そのエリアはどこなのかについては「まだ検討中。4月早々には決めたい」とのことでした。
 当初、東電が導入を計画していたスマートメーターは、東電独自の仕様でしたが、原発事故発生を経て、多くのメーカーが参入しやすい国際基準仕様にしてコスト削減すべきだと各方面から指摘を受け、仕様を変更したとI課長代理は説明しました。このことは報道もされています。
 東電は当初仕様のメーターの実証実験はやりましたが、変更後の仕様のメーターは実証実験も含めて、現時点ではまだ1台も設置していないとのことでした。
 このほか、当会からは「スマートメーターで使われる高周波電磁波は国際がん研究機関から『発がん性がある可能性がある』と評価されていることからも、スマートメーターはかなり慎重に対応してほしい」「情報は良い面だけでなく、悪い面も出して、選択を消費者に委ねるようにしてほしい」「今回、東電に会談を申し入れてから実現までずいぶん時間がかかったが、市民との意見交流は東電にとっても決してマイナスではないはず。スマートメーターへの市民の関心はこれから高まってくると思われすし、あまりガードを堅くしないでほしい」などの意見、要望を伝えました。

経済産業省

 3月19日、経産省資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力市場整備課のK係長、N係長ら3名(説明等はK係長が担当)と、当会事務局メンバー3名が、約30分間会談しました。

通信頻度公開すると「攻撃される」
 東電への同様、スマートメーターの通信の頻度・時間と、コンセントレーターからの距離との関係について質問し、K係長は「電力会社に確認したが、セキュリティの観点から、答は差し控えさせていただきたいという回答だった」と答えました。当会が「納得できない」と言うと、K係長は「われわれが問い合わせたところでは、どう電波が出るのかが分かると、そこへ向けてアタック(攻撃)しようという人が出てくる可能性があると電力会社は言っている」と説明。当会は「頻度などがわからなくても攻撃したい人は攻撃できるはず。隠す理由にはならない」と反論しました。
 スマートメーターからの電磁波測定調査の要求について、K係長は「われわれのほうで電波を測定しているわけではないが、各電力会社あるいはメーターのメーカーが開発の過程で総務省のルールを守っている」との認識を示しました。
 国内及び海外におけるスマートメーターによる健康影響の訴えについての調査の要望に対しては、K係長は「総務省のルールに基づいて作られているので、現時点では人体への危害の防止は図られているのではないかと考えている。総務省とも今後、しっかり連携して海外事例も含めて情報交換をしていきたい」と答えました。当会が「海外でいろいろトラブっていることはネットにも出ているが、それも把握していないのか」などと質問し、経産省としても情報収集するよう訴えました。
 スマートメーターと電力会社側との間の通信は、電波でなく有線で行う仕様にするよう各電力会社を指導してほしいとの要望に対して、K係長は「われわれとしては、法律が守られている以上、これを使いなさいと指導することはできなくて、メーターの設置環境や通信コストなど、諸々を踏まえて各電力会社のほうで決める」と回答しました。

拒否したい人への見解は“なし”
 電磁波やプライバシー漏洩の不安などから従来のメーターからスマートメーターへの交換を希望しない需要家には、交換を拒否できるよう指導してほしいとの要望に対してK係長は「法律で日本は10年に1度メーターを取り替えなければならないので、取替にあたって、こういう新機能を持つメーターになっていて、交換しなければならないことを、お客さんにしっかり丁寧に説明しながら、取り替えさせていただくということ」「お客様の了解なしに電力会社以外の第三者に30分ごとの電気消費量データが公表されることはもちろんない」などと回答しました。
 当会は「たとえ電力会社が提供しなくても、官公庁や大企業のウェブサイトがやすやすと攻撃を受けているぐらいだから、得られた個人情報は不正な手段によってでも必ず流出すると思う。だからこそ、そういうことは絶対に嫌という人に従来型のメーターを続ける権利を認めるべき」と反論。
 また、当会が「メーターを10年で交換するのはわかるが、お客さんの希望とか不信感を聞かずに一方的にスマートメーターに取り替えるのはいかがなものか。海外では強制しないところもある。経産省は、電力会社と客の問題だから不介入なのか、それとも所轄官庁として対応をとるのか」と質問しました。しかしK係長は、電力会社が客に対応するという一般論に終始し「拒否する権利」について答えてくださらなかったので、当会が「今のところ、拒否したい場合について経産省は検討していないという理解で良いですね」と質問すると、K係長は「スマートメーターの本格導入にあたってご指摘の点を踏まえて、どういう課題が出てくるのか、今後いろいろあるだろう中で検討したい」と答えました。当会は「今現在は、きちんとした見解がないということで、理解します」と念を押しました。

総務省

 2月27日、総務省総合通信基盤局電波部電波環境課のM課長補佐、移動通信課のS係長の2名と、当会事務局メンバー2名が、約30分間会談しました。
 スマートメーターの通信の頻度・時間について、S係長は「920MHz帯RFIDシステムの技術的条件」という資料(これとほぼ同じもの )を当会へ示し、この資料のうち「アクティブ系小電力無線」「20mW以下」がスマートメーターが採用するシステムだと説明。このシステムを使う条件として、電波送信は①4秒送信したら0.05秒以上休む、②0.4秒送信(総和1時間あたり360秒以下)したら、0.002秒以上休む-のどちらのルールを守る必要があるとのことです。総務省としてはこのルールの範囲内であれば良いのであって、実際にどの程度の送信時間、送信頻度なのかは関知しないとのことでした。
 コンセントレーターからの距離と通信頻度の関係について、M課長補佐は「ユーザーがどういう運用の仕方をするかなので、われわれのほうでは承知していない」と述べました。

要望の声が強ければ測定の検討も
 スマートメーターからの電磁波測定調査の要求について、S係長は「スマートメーターは出力20mW以下が技術基準で、登録証明機関で審査を受けて無線基準適合証明を受ける必要がある。基本的に市場に出てくるメーターについては、審査を受け、技術基準を満たしたもの」と説明。つまり、基準を満たしているから測定調査は必要はない、ということを言いたかったようです。
 M課長補佐は「スマートメーターに限った健康影響についての調査は実施していない。ただ、電波の健康影響とか、電波が安全なのかどうかの調査は、これまでもやってきているし、今後も続ける」と補足しました。
 当会は「携帯電話基地局からの電波については実際に調査しているか」と質問。M課長補佐は「一般環境で携帯電話から出る電波がどれくらいの出力になっているかというか実地調査は、ちょっと昔に実施した例はある」と回答し、当会は「でも、スマートメーターについての実地調査は考えていないのか」と質問。M係長は「スマートメーターなど小電力系は、基本的には携帯電話に比べてかなり小さいシステムだし、携帯電話のように体に極度に近づけて使うようなシステムでもないので、小電力を対象にして調査を実施した例はない」と回答。さらに当会が「アメリカのカリフォルニアなどではやっているのでは」と質問すると、M係長は「アメリカの方式が日本と同じなのか、私は承知していないが。測定せよとのご要望は、もちろん承るし、今後、そういった声が強く寄せられれば、有識者の先生と次の調査や研究をどうしていくかを検討するうえでの参考にさせていただくこともある。ご意見があったということは、内部で残すようにはさせていただく」と述べました。
 また、WHO発刊をが予定している高周波電磁波を対象とした環境保健クライテリアについて、何か情報がないかと質問したところ、M課長補佐は「未確認情報だが、ドラフト(下書き)作成作業に向けて準備がされているそうだが、多少遅れ気味になっているそうだ。ドラフトが年内に出るかどうかは、わからない」とのことでした。【網代太郎】


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