「携帯電話の基地局整備の在り方に関する研究会」報告(案)への意見(2014.3総務省に)

「携帯電話の基地局整備の在り方に関する研究会」報告(案)に対する意見

 2014年3月1日     
電磁波問題市民研究会

1 構成員に医療関係者や市民が入ってなく、推進側だけに偏っている
 まず、研究会構成員が、携帯電話会社等推進事業者が多いこと。また大学関係者等も推進の視点が強いメンバーであること、行政側も企画部門、政策部門、総務部門といった事業推進の立場のメンバーであること。これでは携帯電話や基地局による健康影響等、弱者に対する総合的な議論が保証されません。医療関係者や環境団体や被害者たちを入れること、つまり「利害関係者を含めたリスクコミュニケーション戦略」という、WHO(世界保健機関)が指摘している実のある「研究・検討」から始めるべきです。

2 電磁波過敏症の人たちを含めて健康影響への配慮がない
 「民間主導の原則」だと採算が合わない過疎地等には基地局が建たないから、助成金等を使って基地局整備を進めようというのが、今回の報告(案)の結論です。ここには、電磁波過敏症等で電磁波の影響から避けるために過疎地等に避難移住している人たちの苦しみへの理解がまったくありません。「エリア外人口3.9万人」「非人口カバー率0.03%」とは、そうした電磁波の影響に苦しむ人たちにとって、貴重な避難エリアなのです。それをなるべく「カバー率100%」にしようという発想は、携帯電磁波ファッショとも言うべき暴挙です。上記1で指摘したように、「事業推進」の視点しかないメンバーで議論するから、こうした「健康影響への配慮がない」結論になるのです。今必要なのは、「携帯電磁波の届かないゾーンの設定」による電磁波過敏症を保護する政策です。

3 IARC評価「発がん性可能性あり」や欧州の動き等、国際的な動向を見る視点がない
 2011年5月31日に、WHO傘下のIARC(国際がん研究機関)は携帯電話電磁波を含む高周波電磁波(周波数10M~100G)を「2B(発がん性可能性あり)」と評価しました。2009年2月4日に、フランス・ベルサイユ高裁は「基地局電磁波の健康影響を認め、基地局の撤去を命じる」判決を出しました。2007年のEU(欧州連合)公式世論調査では、「欧州人4人のうち3人が基地局電磁波の健康影響に不安を感じる」と答えています。2013年8月30日に、ベルギ―政府は「7才未満の子どもへのいかなる広告と販売を禁じる」「販売の際販売業者は、携帯電話の電磁波の強度を5段階で表示し、『あなたの健康を考えましょう。携帯電話は控えめに使い、電磁波量の低い携帯電話を選びましょう』の文言を添付しなければならない」とする法令を布告しました。電磁波は第二のタバコ、と言えます。そうした国際的な動向を研究会では一切議論していません。あまりにも視野狭窄な報告(案)です。これもメンバーが偏っていることに理由があります。

4「世界一安全で災害に強い社会」はどこにでも基地局をつくることではない
 閣議決定「世界最先端IT国家創造宣言」の一環として「世界一安全で災害に強い社会の実現」のため、どこにでも基地局を作ろう、と報告(案)は言うのですが、原発をゼロにし、分散型社会構造にし、市民が政治に積極的に参画できるような社会こそ、「安全で災害に強い社会」なのです。技術を過信する社会は脆弱な社会です。

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