リニア工事で談合

 リニア中央新幹線建設工事の入札のうち、大林組が「名城非常口」(名古屋市)新設工事の入札で不正があったとして12月8、9日に偽計業務妨害容疑で東京地検特捜部の家宅捜索を受けました。そして、他の工事でも事前に不正な受注調整をしていた疑いがあるとして、特捜部と公正取引委員会(公取委)は12月18日に鹿島建設と清水建設の本社を、翌19日に大林組と大成建設の本社などを、それぞれ独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で家宅捜索しました。
 4社は「スーパーゼネコン」と呼ばれる建設業者最大手です。総工費9兆円のリニア関連工事では、24件のうち15件の工事を4社が代表する共同企業体(JV)が3、4件ずつ分け合う形でほぼ均等に受注。4社は、入札前に協議(談合)して受注予定者や入札価格を決めていた疑いを持たれています。
 JR東海による民間事業のため、刑法に基づく談合罪は適用されませんが、独占禁止法(独禁法)は、民間企業の発注工事でも、公正な競争を阻害する行為を禁じています。
 民間による事業とは言え、国債を財源とした財政投融資で国が調達した資金3兆円がJR東海に貸し出されています。JR東海は総事業費の3分の1を民間より低金利で調達でき、負担が5千億円ほど減ると言われています。さらに、公共事業として進められている整備新幹線と同じく、全国新幹線鉄道整備法に基づいて建設されています。リニア建設は単なる民間事業ではなく、政府が深く関わっている国家的なプロジェクトです。
 4社のうち大林組は、4社で受注調整したことを認め、課徴金減免制度に基づき、公取委に違反について自主申請しました。課徴金減免制度は2006年に導入され、カルテルや談合などの情報を公取委に自主申請した企業に、申請順に5番目まで課徴金を減免する制度です。申請期限は公取委の調査開始から20営業日までとされています。
 一方で、大林組以外の3社は、一部で受注を希望する工事に関する情報を交換した可能性はあるものの、具体的にどの工事を取るかといった調整を行ったとまでは言えないなどとして、申請期限である1月22日までに申請しませんでした(清水建設は申請したとの報道もあります)。後は特捜部などが、どこまで追及できるかにかかっています。
 JR東海も談合に関与していたようです。JR東海のリニア担当元幹部から大成建設元常務が設計や価格などの工事情報を得て、他の3社の幹部へ伝えていたと、報道されています。

「入札は白紙にすべき」
 談合事件について、マスメディアは「JR東海は『今後の契約に影響する』として、契約の経緯や発注額などを明らかにしていない。強制捜査を重く受け止め、情報を公開すべきである」(神戸新聞12月19日)「(JR東海)幹部は今回の事件による工期への影響はないとしているが、事業を適正に行うことが工期以上に重要なはずだ。談合が疑われる入札はいったん白紙にすべきではないか」(秋田魁新報12月22日)などと厳しい目を向けています。
 談合事件を受けて、リニア中央新幹線事業を問い直すグループで構成する「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」は、JR東海に工事の中止とゼネコン各社との契約解除などを求める声明を12月27日に発表しました。
 また、1月19日には、国土交通大臣によるリニア工事認可の取り消しを求める訴訟(当会もサポーターになっています)の第8回口頭弁論の開催後に、原告団と同ネットワークの主催により参議院議員会館で「リニア工事談合事件の徹底解明と工事中止を求める集会」が開かれ、110人が参加。フリージャーナリストの横田一さんが講演しました。横田さんは、リニア談合は公共事業をばらまいて見返りに投票などを求める自民党の伝統的な政治の産物であると指摘しました。報告集会には、福島みずほ、本村伸子、辰巳孝太郎、山添拓の各国会議員も参加しました。【網代太郎】

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