スマホ使用と斜視の因果関係調査へ

 NHKは昨年12月27日、日本弱視斜視学会が斜視とスマートフォンなどの使用状況の因果関係を調べる実態調査を行うことになったと報じました。

10代を中心に斜視が増える
 報道によると、静岡県の浜松医科大学では原因が不明で、短期間に瞳が内側に寄って戻らなくなる「急性内斜視」の患者が増え、それまで年間2~3人だった患者が、3年前から10代を中心に10人前後になりました。また、東京の国立成育医療研究センターの研究グループでも、スマートフォンやタブレットを長時間使う子どもの急性内斜視などについて研究を進めていて「スマートフォンなどの過剰使用により、斜視の発症や悪化をまねく可能性がある」という論文を昨年発表しました。このため、日本弱視斜視学会は、日本小児眼科学会と連携して、12月末から全国の医師およそ1000人を対象に、急性内斜視と診断された子どもが、長時間、スマートフォンやタブレット端末を使用していたのかなど、実態調査を進めることになりました。
 日本弱視斜視学会理事長の佐藤美保・浜松医科大学教授は「10代のスマートフォンの普及率が8割を超えた時期と斜視の子どもが増えた時期は非常に近い。ただ斜視は近視やストレスが原因となることもあるため、慎重に調査と研究をすすめて関連があるか確かめたい」と話していました。

授業でもタブレットを使用
 報道では、静岡県内に住む16歳の高校1年生の男子生徒の事例を取り上げました。この生徒は中学1年生の時にスマートフォンを買ってもらい、中学2年生のころから物が二重に見えるなど違和感が出ました。高校に入ってからは授業でもタブレット端末を使うようになって、1日7時間も画面を見ています。そして昨年7月、友人から「左目が内側を向いている」と指摘されたことをきっかけに眼科を受診し「急性内斜視」と診断されました。

韓国でも論文
 読売新聞のウェブサイトに掲載された「心療眼科医・若倉雅登のひとりごと スマホで子どもの斜視が増加?……韓国で研究論文、日本も同じ傾向か」と題する記事(昨年10月25日付)によると、小中学生がスマートフォンに依存するようになったことが一つの原因となって急性内斜視が増えているという論文が、2016年に韓国の施設から発表されました。7~16歳の12例(男5人、女7人)の報告で、全員が過度なスマホ使用者(過去4か月以上にわたり、1日4時間以上使用)で、1日平均の使用時間は6時間、しかも30cm以内の距離で画面を見ていました。うち9例は遠くを見るといつも、あるいは時々、水平複視(一つのものが横に離れて二つに見える)になりました。
 近いところを見るとき、人は輻湊(ふくそう)といって両目を寄せます。通常、遠方を見るときは輻湊を解除するので、寄っていた目が元に戻るのですが、上記の症例では戻りにくくなっていました。若い人は、目を寄せる動きを促す脳からの指令が強いと考えられ、それゆえに輻湊が続くと指令を解除することが難しくなり、このような現象が生じてしまう可能性がある、と記事は指摘しています。【網代太郎】

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