スマートメーターのオプトアウト(拒否権) 経産省と送配電各社へ要求書を提出

送配電各社から回答
経産省は29日回答予定

一般送配電事業者10社からの回答

 経済産業省がスマートメーターのオプトアウト(拒否)を認める方針を打ち出したことについて、当会は、アナログメーターを希望する需要家(電力消費者)にはアナログメーターを設置することや、追加料金徴収方針の見直しなどを求める要求書を、8月19日付で全国の一般送配電事業者[1]10社へ、同20日付で経済産業省へ提出しました。10社は「アナログメーターは製造が終了しており提供しておりません」「費用負担の在り方等については、国の同審議会等の決定に基づき対応してまいります」などと回答しました。経産省あてについては9月29日に当会が経産省資源エネルギー庁(エネ庁)の担当者と会って回答をいただき、意見交換などを行うことになりました。
 要求書には4団体からご賛同をいただきました。経産省宛の要求書は、この問題でこれまでお世話になってきた大河原雅子衆院議員の事務所を通して提出しました。一般送配電事業者宛には郵送しました。
 10社からの回答は、表現に若干の違いがあっても内容は同じで、全社で調整したうえで回答したようです。

アナログメーターは「原則として提供しておりません」
 要求書で私たちは「オプトアウトで、アナログメーターの設置を希望する需要家には、アナログメーターを設置してください」と求めました。これに対する各社の回答は「当社で扱う従来型計量器(誘導型)[2]の製造が終了しており、新規の調達ができないことから、原則として従来型計量器(誘導型)を提供しておりません」(中国電力ネットワーク)でした。ただし、10社のうち、東北電力ネットワーク(東北電)と、東京電力パワーグリッド(東電)の2社だけは「原則」という言葉がありませんでした。東電は不当にも近年、アナログメーターへの交換を例外なく拒否していて、その姿勢が回答にも現れているものと理解できそうですが、東北電も同様の姿勢なのでしょうか?
 製造が終わったからとメーターのメーカーに責任を押し付けるのは許されません。10社が発注すればメーカーは製造を再開するでしょう。

追加料金は「国の審議会の決定に基づいて対応」
 エネ庁の「次世代スマートメーター検討会」で、オプトアウトの場合に追加料金を徴収する方針が打ち出されたことについて、この方針を見直してほしいとの要求に対して、各社は「費用負担の在り方等については今後国の審議会等で検討がなされるものと承知しており、当社は同審議会等の決定に基づき対応してまいります」(北陸電力送配電)と回答しました。しかしこの回答は、後述するように、国の動きとは食い違っています。
 その他の要求内容と、それらへの回答については、要求書、回答をご覧ください(九州電力送配電からの回答を掲載しました)。

オプトアウトは国、事業者のどちらが検討?
 当会は5月11日、オプトアウトの今後の検討予定などについてエネ庁担当者からヒアリングを行いました。担当者は「今後は、今回の検討会ではなく、別の委員会とか審議会で検討される。具体的にどこで、いつから検討するのか、まだ決まっていない」という主旨の説明を行いました(会報第130号参照)。
 ところが、実は筆者(網代)は最近になってようやく知ったのですが、5月25日に開かれたエネ庁の「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会」の「第35回電力・ガス基本政策小委員会」で、オプトアウトについて検討されていたのです。同小委の資料に「オプトアウト制度の具体的な手続きや開始時期等については、託送供給等約款[3]にも関係するところ、その対象や方法を含め原則全社一律とし、一般送配電事業者においてその詳細を検討することとしてはどうか。なお、金額については、検針員による検針コストや必要な設備費用等を基に、海外の事例なども参考にしながら、各社で必要な費用を定することなどを基本としてはどうか」とエネ庁が提案。議事録によると、オプトアウトについて委員から意見は皆無で、異論がなかったことをもって提案通り決定されたようです。
 私たちがエネ庁の担当者からヒアリングを行ったのは、同小委が開かれた日の、わずか2週間前です。その時点で、同小委の開催が決まっていなかったはずはありません。「どこで、いつから検討するのか、まだ決まっていない」というエネ庁の説明は、おそらくウソでした。公文書改竄事件などとはレベルが違うにせよ、この国の官僚の腐敗ぶりは目に余ります。

次世代スマメ検討会の論点から外れる
 9月1日、「次世代スマートメーター検討会」が中間取りまとめ以来、およそ半年ぶりに再開しました。その配付資料には「オプトアウトについては(略)本年5月の第35回電力・ガス基本政策小委員会において、『オプトアウト制度の具体的な手続きや開始時期等については、託送供給等約款にも関係するところ、その対象や方法を含め原則全社一律とし』、一般送配電事業者においてその金額等を含む詳細を検討することとされた」と記載されています。そして、同検討会で今後議論する五つの論点から、オプトアウトは外されていました。
 要するに、オプトアウトの具体化について、国は送配電事業者へ丸投げしたと読み取れるのです。
 しかし、今回の10社からの回答は、国の審議会等の決定に基づくとしており、国と事業者の言っていることが食い違っているのです。9月29日、エネ庁担当者はどう回答するのでしょうか。【網代太郎】

[1]戦後長らく電力事業を地域ごとに独占してきた、「東京電力」「関西電力」など「○○電力」10社からそれぞれ分社した、送配電を担当する事業者が「一般送配電事業者」。電力小売自由化の後も送配電については地域ごとに独占しており、需要家はどの電力小売事業者と契約しても、メーターによる計量を含む送配電については10社が担当する。
[2]「誘導型計量器」は、アナログメーターのこと。
[3]「託送供給等約款」は、小売電気事業者等が一般送配電事業者の送配電設備を利用して電気の供給を行なう場合の料金・その他必要な条件を定めたもの

要求書と回答

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