名取市変電所問題 東北電力の問題点とは何か

なぜ、周辺住民には知らせず計画を進めたのか
 宮城県名取市で進められている「名取変電所建設計画」の大きな問題点は、「地域住民への説明は一切行われず」「戸別訪問による地権者との買収計画が進められてい(た)」(住民たちの変電所建設に関する嘆願書より)ことにあります。変電所が出来れば、何本も高圧送電線が作られますし、他の既設の変電所を見ても、変電所周辺の電磁波量は確実に増えます。電磁波による周辺住民の健康影響が心配です。周辺住民だけでなく、そこは子どもたちの通学路にもなっていますから、子どもたちへの被曝も懸念されます。さらに、変電所ができると周辺地価が下落します。
 「変電所建設予定地内の地権者だけの了解」で済む話ではありません。「名取変電所と健康を考える会」が反対するのは極めて当然なことです。

現在2本の高圧送電線が一挙に8本に増える
 東北電力の資料によると、出力は「90万キロボルトアンペア」(前号で『90万ボルトの変電所計画』とタイトルをつけましたが、こちらが正しいので訂正します)で、「接続送電線」は27万5千ボルトが4回線、15万4千ボルトが4回線、となっています。
 現在、近くに新幹線用JR変電所がある関係で、27万5千ボルトと15万4千ボルトの高圧送電線が1本づつ計2本あります。それが一挙に8本に増えます。変電所敷地は4万平方メートル(2ヘクタール)で、小学校が4つスッポリ入る巨大さです。こういう巨大な変電所と蜘蛛の巣のような高圧送電線が周辺にできるというイメージを多くの住民は知りません。地権者は移転に伴う保障がありますが、周辺住民にはデメリットしかありません。
 東北電力が地権者にだけ極秘に買収交渉したのも、こうした計画の具体的全容を周辺住民が知れば反対運動が起こると考えたからでしょう。

敷地境界部分で最大40ミリガウス出るのに「特段の安全対策はしない」という不誠実さ
 住民から出された質問に対し、東北電力は「変電所敷地と一般土地との境界部分は最大40ミリガウス程度」の電磁波が出ると回答しています。それでいて、続けて「日本のガイドラインは1000ミリガウス(当時、現在は改悪され2000ミリガウス)(なので)健康への影響はない→特段の安全対策波しない」と回答しています。境界部分には通学路が含まれます。2007年6月発表のWHO(世界保健機関)の環境保健基準(EHC)は「慢性影響リスクとして、3~4ミリガウスで小児白血病が2倍になるという疫学調査結果を支持」しています。そのため、予防的処置(precautionary measures)として、「設備の新設の際は、自治体、住民、環境団体、不動産業者等の利害関係者との協議」といったリスクコミュニケーションの推進を勧告しています。当然「設備の建設予定地の移転」も協議対象に含まれます。 
 それなのに、「特段の安全対策はしない」というのです。東北電力の不誠実な態度は許されません。

「迷惑施設は集まる」。反対運動の大切さ
 「迷惑施設は集まる」といいます。住民がおとなしい地域に、送電線、基地局、清掃工場、下水処理場等々が集まりやすいのです。この地域には、すでにJR変電所、高圧送電線2本、ごみ焼却炉、携帯電話基地局2基、があります。反対に、住民が団結し、理不尽な押し付けを許さない地域は、おいそれとそうした迷惑施設は建設できません。行政や業者はそのことをよく知っています(事前にリサーチもする)。この近くには、県立がんセンターや大きなホームセンターがあります。また「愛島の郷」という名称の新興住宅地も分譲中です。反対運動の中心メンバーのお一人は由緒あるお寺の住職夫人です。これ以上、愛島(めでしま)地域の環境を壊さないためにも、住民たちは声を挙げることが大切です。
 2011年11月19日に愛島公民館で開催された「東北電力と電磁波研のよる説明会」で、多くの住民たちは「なにが問題か」を知ったと思います。これからが正念場です。【大久保貞利】

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