読売新聞の環境過敏症連載に電磁界情報センターがクレーム

 読売新聞が9月8~15日付で、「医療ルネサンス 増える環境過敏症」を5回に渡り連載しました。化学物質過敏症、電磁波過敏症、低周波音という、新しい環境病を取り上げました。
 日本のマスメディアは海外と比べて電磁波問題を取り上げることが極めて少なく、また、「学界の説」ばかりを基準にして記事を書く“学者もどき”のような記者もいます。この連載は、問題が起きている現場へ足を運び、そこの人々の声を取り上げて関係方面に対策を求めており、たいへん評価できる報道だと思います。
 識者はこの連載の中で「電磁波による健康被害は科学的に証明されていないとして、住民の訴えをすべて気持ちの問題と決めつける姿勢こそが、最も科学的でない」(大槻剛巳・川崎医大教授)、「国や自治体が率先して基地局周辺住民らの健康調査を行う必要があ」る(津田敏秀・岡山大学教授)、などとコメントしています。

「科学界における共通認識」とは
 この連載のうち、電磁波問題を取り上げた第3~5回について「電磁界情報センター」は以下の見解を表明しました(1)
 「電磁過敏症」についての世界保健機関(WHO)や各国の政府機関の見解は、電磁界が原因で諸症状が発生すると訴える人々はいるものの、さまざまな研究結果から発症原因が電磁界ばく露である科学的根拠はないとしています。「電磁過敏症」を引き起こす原因についての科学界における共通認識を紹介せずに、客観的視点を欠いた事例報告を紹介するのは、読者に電磁界の健康影響への歪んだ印象を与えかねないと危惧します。(一部抜粋)
 この見解の下には、WHOの「ファクトシート」からの引用として「EHS(電磁過敏症)(略)の症状は確かに現実のものですが(略)EHSの症状を電磁界ばく露と結びつける科学的根拠はありません」と書かれています。同センターが言う「原因についての科学界における共通認識」は、このファクトシートの内容を指しているようです。しかし、ファクトシートはWHOが得ている情報やWHOの見解を伝えるためのもので、WHOによる政治的配慮が反映されており、その内容が科学界における共通認識であるとは限りません。EHSについてのファクトシート(の和訳文)に記された「科学的根拠はない」との文言は不適切であり、「電磁波過敏症と電磁場曝露の因果関係を認める研究があるが、一方で、現時点(2006年)では研究者間で確立された結論には到達していない」と言うべきである、との指摘もあります(2)。また、ファクトシートの内容は、新しい研究成果などにより、たえず検証されるべきものです。
 電磁界情報センターは「中立機関」を自称していますが、この連載への見解は批判ばかりの内容で、記事中の苦しんでいる人々のための提言などは皆無です。電力会社が出す金と人で運営されている同センターの耳には、記事中の識者のコメントはまったく響かないようです。【網代太郎】

(1)電磁界情報センター「9月13日~15日の読売新聞朝刊記事「医療ルネサンス増える環境過敏症」に対する見解」
(2)たとえば本堂毅・東北大学大学院助手(当時)「電磁波過敏症 WHOのファクトシートを読んで」

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