問題
カナダにおける携帯電話は、1987年は10万台であったが、2010年の終わりには2400万台に増加した。この普及により、その安全性に対する疑問が浮上してきた。携帯電話は低レベルの無線周波数(RF)のエネルギーを放射している。携帯電話によるこのRF電磁波エネルギーは、非電離放射の一つであり、AMやFMさらにテレビ放送に使われているのと同じである。
カナダの携帯電話は規制の要求に適合し、RFエネルギーによる人体への被曝を制限している。カナダ保健省は、RFエネルギーによる人体に対する被曝の安全ガイドラインを開発した。
誰が影響されるか
長期間もしくは長時間の携帯電話使用者における、脳腫瘍の増加を示している疫学研究は少ない。携帯電話使用者対するその他の疫学研究、実験研究、及び動物のがんについての研究は、この関係を支持していない。国際がん研究機関(IARC)が最近にランク付けしたのは、「人体にがん発生の可能性あり」であり、限られたデータが、RFエネルギーのがん発生原因の可能性を示していることを認めている。現状では、結論を出すための科学的証拠はあまりにも小さく、さらなる研究が必要である。
カナダ保健省が携帯電話使用者に気付いてほしいのは、RF被曝を低減するために、実践的な処置をとることができることである。また、保健省が勧めていることは、保護者が子どもたちに携帯電話からの被曝を少なくすることであり、その理由は、子供たちは様々の環境変化に特に敏感なためである。現在においては、子供たちに対する携帯電話の健康影響の可能性について、科学的な情報が不足している。
消費者が出来ること
○携帯電話の使用を短くする。
○電話を掛けるより携帯メールを利用する、もしくはハンズフリー機器を使用する。
○18才以下の子どもが携帯電話の使用を制限することを奨励する。
カナダ保健省がしていること
RFエネルギー被曝の安全ガイドラインを、カナダ保健局は開発した。カナダ保健省ガイドラインに強調している制限値は、RFエネルギーの健康への影響について、確立された科学的研究中の発表に基づいている。これらの研究のデータを使用することで、カナダ保健省は、健康に影響のあるとされているよりも50分の1の値を、一般人の被曝制限値とした。
カナダ保健省の科学者たちは、この分野の科学的研究において、継続的に安全ガイドラインを発表しており、カナダ国民を健康と安全を守っている。このガイドラインは2009年に改訂しており、次の改訂は2012年に計画している。
背景状況
ラジオ周波数(RF)エネルギーは、携帯電話や携帯電話基地局より継続的に放射され、非電離放射線の一つの形態である。これは、AM/FMやテレビの放送信号に使われている形態と同じである。X線装置から出るような電離放射線と違って、携帯電話からのRFエネルギーは、人体の化学的結合を破壊することは無い。
接続や通話に必要な最小の電力で動作するように、携帯電話は設計されている。固定された低出力の携帯電話基地局からの無線信号を、携帯電話は受信して変換する。携帯電話基地局が一般的に置かれる所は、屋上や搭上や電柱である。携帯電話基地局より回りに放射されるレベルは、安全限界より十分に小さく、健康への影響は考えられない。携帯電話に送られる電力は変化し、ネットワークの形態や携帯電話基地局との距離に依存する。携帯電話が受ける電力が一般的に上昇するのは、最も近い携帯電話基地局よりさらに遠い基地局に移動する場合である。
携帯電話はカナダ産業省で規制されている。また、携帯電話基地局の設置や免許の監督をしている。この場合に考慮されるのは、環境への影響や基地局鉄塔が設置される前の、その場所の利用の状況であり、さらに、これらの基地局鉄塔が、規制の要件を満たしているかである。カナダ産業省はカナダ保健省のRF被曝ガイドラインを適用する部門であり、規定された限度を超えないように、携帯電話や基地局から一般大衆を保護する。【約・野村修身、網代太郎】
原文:カナダ保健省 “Health Canada Offers Practical Advice on Safe Cell Phone Use” 2011年10月4日