名取変電所問題 名取市愛島地区に90万ボルトの大変電所計画

地域への説明もなく始まった
 宮城県名取市の愛島(めでしま)地区に東北電力が90万ボルトの大変電所建設を計画しています。「名取変電所と健康を考える会」(代表三浦信子)が変電所計画を知ったのは、今から2年前の2009年9月で、東北電力が変電所建設のために土地の測量で来たのがきっかけでした。すでにその段階で地権者には戸別訪問し土地買収計画を進めており、地権者以外の地域住民への説明はまったくありませんでした。
 名取(なとり)市は仙台市に南に隣接した市で人口は約7万2千人。市内に仙台空港があります。東北電力は市内の愛島地区に大規模な一次変電所を新設する「必要性」として、「仙台空港アクセス鉄道沿線の開発等により、今後著しい電力需要の伸びが想定されていること」をあげており、現在ある「南仙台変電所」(仙台市太白区郡山地内)への電力供給能力を強化するために建設が必要だ、としています。また名取市高舘熊野堂地区に配電用変電所も新設が必要ともしています。
 変電所について説明しましょう。発電所でつくられた電力は、最初は「超高圧変電所」で減圧し、次に「一次変電所」でさらに減圧し、最後は「配電用変電所」で6千6百ボルトまで減圧し、さらに電信柱の「柱上変圧器」で200ボルトないし100ボルトに減圧し家庭に配電されます。
 愛島の名取変電所は「一次変電所」で、出力は90万kVA(キロボルトアンペア)であり、「超高圧変電所」から送られてきた27万5千ボルトの送電線を引き入れ、それを減変圧し15万4千ボルトの送電線として各地に配電する仕組みになっています。面積は4万㎡(4ヘクタール)で小学校が4つすっぽり入る巨大さです。

周辺で40ミリガウスも出る
 問題は電磁波の発生量ですが、東北電力の回答は「変電所敷地と一般の土地との境界部分で最大40ミリガウス程度」だと説明しています。それでいて「健康への影響はないものと考え、電磁界への特段の安全対策は実施しない」としています。その理由は「国の基準は2000ミリガウスで、それをはるかに下回る」からというのです。みなさんはどう思いますか。
 「名取変電所と健康を考える会」代表の三浦信子さんは、曹洞宗・永禅寺住職の奥様です。「考える会」では、東北電力の変電所建設計画に対し質問書を提出したり、市長あてに嘆願書を提出したり、あるいは地域の人たちへの働きかけ等をこれまで行ってきました。

11月19日に説明会開かる
 11月19日(土)午後2時から、愛島公民館で愛島地区青少年健全育成会が主催して説明会が開かれました。当初の予定は、はじめに東北電力が30分「変電所建設について」説明し、次に地域住民が「電磁波と健康について」20分お話し、3番目に私が「電磁波問題について」45分講演する、そしてその後質問時間を持つ、という段取りでした。ところが突然東北電力は説明のため1時間欲しいと横やりを入れてきました。
 当日の説明会には約60名が参加しました。ふたを開けると、東北電力の説明は社員が2名で他にコンサルタント会社社員1名の計3名が1時間20分にわたって「いかに変電所は必要でかつ安全か」「WHOもあまり電磁波を問題にしていない」「疫学調査はあまり根拠がない」といったお粗末なものでした。
 私ははじめはたんたんと事実だけ述べようと思っていましたが、あまりにも東北電力側がえげつないので、相手の問題点、矛盾点を衝く形で30分ほど講演しました。講演後には大きな拍手をいただき、その後の質問時間では女性たちが次々と手をあげ、東北電力に対し批判的な意見を述べ、会場は変電所建設計画に対する抗議の場になりました。この説明会が契機になり、反対運動が盛り上がることを強く期待します。【大久保貞利】

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