イタリアの研究 バチカン放送タワーが子どものがんの原因

子供19人のがん死の調査

 バチカン放送の放送タワーが子どもたちのがんに原因になっていると、医学専門家がローマ裁判所に報告した。この報告は、バチカン放送の6つの放送局施設が施設周辺の死亡と関係しているかを調べていたもので、結果はクロとなった。
 この医学専門家とはミラノ国立腫瘍研究所のアンドレア・ミッチェリ教授で、ローマ市の北方にあるチェザーノ地域で、1980年から2003年の間に白血病もしくはリンパ腫で死んだ19人の子どもの死因を調べていた。バチカンラジオ放送の放送タワーはサンタ・マリア・ディ・ガレーリアの近くにある。

がんとラジオ塔電磁波に相関関係あり

 ミッチェリ教授はがん疫学の教授であるが、彼がまとめた300ぺージの報告書は、以下のように述べている。
「バチカン放送局設備から出る電磁波曝露と、子どもたちの白血病とリンパ腫による死亡リスクには、重大で有意でかつ首尾一貫した関連が存在すると研究結果は示している」。
 ミッチェリ教授は、また、次のようにも述べている。
「放送タワーから7.5マイル(約12キロメートル)以内に住む14歳以下の子どもたちに、がんリスクの上昇が見られた。また、放送アンテナの直近に住む住民の間で、ラジオ放射線(電磁波)と成人のがんとの関連を示す証拠も発見した」。

裁判所の依頼に基づく調査研究

 チェザーノ地域で、がんが多発しているという懸念は数年前からあり、訴訟にまで発展していた。そのため、訴訟を扱っていた裁判所が、ミッチェリ教授に調査研究を依頼したのである。
 今回の調査結果によると、裁判所のステファーノ・ペスチ判事はバチカン放送の6つの放送局設備を調べるよう教授に依頼していた。

バチカンはイタリア海軍が原因と主張

 バチカンは今回の報告が明らかになるや、以下のように主張した。
「この地域にあるイタリア海軍の無線タワーも調べるべきだ」。
 しかしながら、『ラ・プブリカ』紙は、以下のように報じている。
「裁判所が依頼された報告書(まだ正式には未発表扱い)では、“今回の発症リスクの原因は、バチカン放送のアンテナからの電磁波であり、イタリア海軍の無線タワーからの電磁波は関係ない”としている」。
 バチカン放送局の総責任者フェデリーコ・ロンバルディア神父は、以下のように反論した。
「バチカン放送のラジオ電波塔は、イタリア国内の規制の範囲内で操業している。今回の報告書は正式発表前にリークされており遺憾だ」。
 バチカン放送局は1931年に設立され、全世界にむけて、61ヵ国の47言語で放送されている。【訳・渡海伸】

原文:MICHALE DAY”Vatican masts blamed for causing cancer in children” 2010年7月15日THE INDEPENDENT

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