スマートメーター危険説は「刺激が欲しい方々の茶飲み話」CS支援センター質問に回答

 化学物質過敏症支援センター(CS支援センター)が発行した『CS支援第95号』(2017年2月23日付)に掲載された、羽根邦夫氏による「大気汚染と血液脳関門と認知症、そして化学物質過敏症」と題する記事(以下「今回記事」と言います)に「スマートメーターを危険とする説が、日常生活に刺激が欲しい方々のお好きな、茶飲み話程度であった」という文言が書かれたことについて、当会は公開質問状を提出しました(会報105号既報)。質問項目は、以下の通りでした。

 1.電磁波過敏症の方々は「刺激がほしくて茶飲み話」をしているのではなく、スマートメーターの電磁波を真剣に心配しています。本件記事中の文言は、過敏症の方々を侮辱するものであり不適切であるから、貴法人は撤回のうえ謝罪すべきであると私たちは考えますが、貴法人はどう考えますか? 理由とともにお答えください。

 2.スマートメーターによって電磁波過敏症が悪化したという訴えを複数の方々がされていることについて、貴法人はご存知ですか? ご存知の場合、それらを貴法人はどのように受け止めていますか?

 この質問状に対する回答書が届きましたのでご紹介します。
 また、この回答書を私たちがどう受け止めたかについて、解説を掲載します。

CS支援センターからの回答

2017年3月31日

電磁波問題市民研究会
代表 野村 修身 様

2017年3月24日付公開質問状へのお答え

特定非営利活動法人
化学物質過敏症支援センター
理事長・事務局長 広田 しのぶ

 長年にわたり電磁波及び化学物質過敏症問題に取り組まれる貴会に敬意を表します
とともに、ご活動に感謝申し上げます。
 3月24日付質問状にあります2点のご質問に、以下のようにご回答申し上げます。

1のご質問へのご回答
 CS支援センターは電磁波過敏症の方々を侮辱する意図は全くありませんが、貴会の不適切とのご指摘に対しまして、この文言を撤回いたします。

2のご質問へのご回答
 スマートメーターによって電磁波過敏症が悪化したとの訴えを複数の方々がされて
いることについて、CS支援センターでは下記のような事情で直接には存じ上げませんが、貴会の会報誌により承知しております。お困りのご様子も容易にお察しできますし、憂慮しております。

CS支援センターに寄せられるスマートメーターに関するご相談について
 CS支援センターの相談窓口に寄せられるご相談は2010年度には年間2000件に達し、近年はそのうち3割近くが電磁波に関するご相談です。それらのご相談のうちスマートメーターにより電磁波過敏症が悪化したとの訴えは、2017年3月30日現在1件もお聞きしておりません。スマートメーターに関するご相談はメールによるものを含めここ3年ほどで合計7件ありましたが、将来スマートメーターが設置されるとどうなるのか、あるいは近隣に設置されたがこれから体調が悪化するのか等、不安を訴えるご相談で、いずれも設置された後の体調悪化を訴えるものではありませんでした。

貴会によるスマートメーターの電磁波測定について
 スマートメーターの危険性を訴える他の団体の機関紙の記事からも、実際に運用されているスマートメーターの電磁波の測定値を知りたく、私どもで測定できないものか可能性を探っておりましたところ、貴会の「電磁波研会報99号」(2016年3月27日付)に「スマートメーターの電磁波測定」として、電磁波過敏症を発症した方のご自宅マンションでの測定数値が掲載されました。アナログメーターの数値も測定していらっしゃるのですが、文章の中にそれぞれの測定値が記されており、分かりづらいので私どもで下記のように表にしました。
[表は略]
 測定者によりますと「スマートメーターに限らずガスメーター水道メーターなどはトビラの中に収納されているケースもよくあります。そこでこのマンションの場合もトビラが閉じられているのでトビラを閉じた場合も測定しました。」とあり、トビラを閉じた場合での測定値も掲載されております。
一戸建ての場合と違いマンションは居住者等が頻繁に近くを通る場所に設置されるた
め、通常はトビラが閉じた状態でしょうから、トビラを閉じて測定した数値を太字でそれぞれ表中に示しました。結果はスマートメーターもアナログメーターも全く変わらないと言っていいような数値です。
「測定したスマートメーターは毎時00分と30分に計測のため電波を発信しているとのことでしたが、その時間に急に数値が上がることはありませんでした。」とあります。

 測定値から高周波も低周波も直近で測定した場合と50cmの距離をとって測定した場合とでは、たった50cmの違いでも電磁波が減衰する様子がよく分かります。ましてトビラを閉じればご覧のような結果となっています。スマートメーターの測定数値に影響を与える高周波、低周波は事前の測定ではいずれも低かったとのことですから、スマートメーターでESが悪化したと訴えるこの発症者のご自宅だけではなく、複数の測定結果をお示しいただければと考えます。

 先にも書きましたようにCS支援センターがこの件で憂慮しますのは、環境中の電磁波のうちスマートメーターによる電磁波の危険性が強調されるあまり、他の要因への視点が損なわれる恐れがあるのではないかということです。
 化学物質過敏症や電磁波過敏症の発症原因にはさまざまな外的要因があり、それに対抗する内的要因とのせめぎあいで発症してくるものです。
「電磁波研会報104号」(2017年1月29日付)「電磁波による攻撃」では「被害妄想」的な症状が出る方々について言及しておられます。不安という症状の出やすい発症者が訴える“電磁波による攻撃”は、その方の感じている違和感を必死で表現しているものと感じております。筆者は「過敏症にきちんと対処して改善を図ることによって、そのような症状も治まっていくでしょう。」と書いておられますが、誠にその通りで、さまざまな要因を探求し、それぞれに対して対策をとることが重要であると考えます。

電磁波に関してCS支援センターの考え方
 CS支援センターは発症者の生活に密着して回復への道のりを伴奏することがつとめです。携帯電話の危険性はたいへん大きなものですが、印刷物が読めず、転地・移動を余儀なくされる発症者を情報弱者にせず、日常の用を足し、孤独から救います。電子レンジも推奨はしませんが、体調の悪い発症者を助けて、暖かいものを食べさせてくれます。そのとき、その場で発症者にとって何が危険なのか、何をいちばんに避けるべきか、正しく知ることこそ必要であると考えます。

 私どもCS支援センターは今まで貴会の会報誌で多くの知識を得てきました。これからもたくさんのことを学ばせていただく所存です。

 末筆でございますが、貴会のますますのご発展をお祈り申し上げます。

以上

解説:CS支援センターは原点に戻るべき

 CS支援センターからの回答書のポイントは、以下の通りです。

  • 同センターは、今回記事中の「スマートメーターを危険とする説が、日常生活に刺激が欲しい方々のお好きな、茶飲み話程度であった」との文言を撤回したが、当会が求めた謝罪はしていない。
  • 撤回の理由は「貴会(電磁波研)の不適切とのご指摘」であるが、同センター自身がこの文言を不適切と認識したのかどうかについては言及がない。
  • 当会によるスマートメーターの電磁波測定事例を挙げて、スマートメーターの電波が「低い」ことを強調。
  • 同センターが『CS支援第90号』に掲載した記事(以下「前回記事」と言います)中の、スマートメーターは「電磁波過敏症でも無視できます」という結論について、その結論が基づいているデータの誤りなどを当会は公開質問状でも重ねて指摘したが、同センターによる回答書は、この点にまったく触れず。
  • 同センターは、スマートメーターによって電磁波過敏症が悪化した事例を、当会会報を通じて「承知」している。
  • 「CS支援センターがこの件で憂慮しますのは、環境中の電磁波のうちスマートメーターによる電磁波の危険性が強調されるあまり、他の要因への視点が損なわれる恐れがあるのではないか」と回答書で述べ、スマートメーターの危険性は小さいので強調すべきではないとの同センターの考え方をにじませている。

 以上から、同センターは回答書を通して「問題にされた記事には、間違ったことは書かれていない」と訴えたいのだろうと、私たちは受け止めました。また前回記事で示した、スマートメーターは「電磁波過敏症でも無視できます」という見解を、同センターが今も維持していることもうかがわれます。
 同センターは当会による測定例をスマートメーターが「危険」でない根拠の一つにしているように見えますが、測定結果はいろいろな条件に左右されます。ただ1件の事例からすべてを判断するのは科学的な態度とは言えません。実際、当会による他のスマートメーターの測定例では、同センターが引用した当会の測定データより、はるかに強い電磁波を測定しています。
 仮にスマートメーターの電波の値が低いとしても「過敏症でも無視できます」と言い切れるはずもありません。化学物質過敏症で反応する化学物質の種類、濃度が発症者によって様々であるのと同様、電磁波過敏症の発症者も様々です。電磁波の強弱のみならず周波数や変調方式、頻度などによって発症者それぞれに異なる影響を及ぼすでしょう。京都大学基礎物理学研究所の村瀬雅俊准教授も「『特定の周波数、特定強度の電磁波は、特定時間作用することによって、生体にホルモン作用を及ぼす』という”電磁波ホルモン作用仮説”がさまざまな実験事実によって裏付けられてきている」(『物性研究』vol.84 no.2, p.232)と論文で述べ、電磁波の強弱と生体影響の強弱は単純に相関しないことを示唆しています。
 ある発症者にとって現実に症状が出るもの(すなわち、他の発症者にもその可能性があるもの)こそが遠ざけるべきものであるという、過敏症対策としての基本中の基本を忘れていなければ「過敏症でも無視できます」「茶飲み話」という言葉が出てくるはずはありません。
 化学物質過敏症の研究・診療の第一人者である石川哲さん、宮田幹夫さんらによる『化学物質過敏症』(文春新書)には、以下の通り書かれています。「医学というのは、残念ながら後追いの学問である。まず病気が先にあり、それを追いかけていくことによって因果関係を証明していく。仮説に基づいて新しい発見なり理論なりを生み出していくサイエンスとは違う」「とりあえず患者の言っていることを信用することからはじめる以外にないのである」。
 もちろん、犯罪集団から電磁波攻撃を受けているという、病気以外のことがらについては、話がまったく別です。
 CS支援センターは上に引用した言葉を今一度かみしめ、過敏症支援の原点に立ち返っていただきたいと強く願います。
 なお、同センターへのスマートメーターの相談が3年間で7件とは驚きです。当会へは今年3月までの1年間だけで91人から相談を受けました。同センターはスマートメーターの相談に対して「過敏症でも無視できます」という不適切な説明をしたかもしれないので、同センターへの相談が少なかったことは、不幸中の幸いと言えるでしょう。【網代太郎、鮎川哲也】


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