保育園児を対象とした午睡見守りWi-Fiシステムの電磁波測定

上田昌文さん(NPO法人市民科学研究室)

「見守りシステム」で見落とされている電磁波曝露

 近年になって増加してきた電波の新たな用途として、「ICTを活用した見守りシステム」がある。対象は主として、通学時などに“危険”にさらされる恐れのある学童と、認知症を患っていて徘徊の恐れがあったり、一人暮らしであったりする高齢者、である。
 例えば、大阪府伊丹市では、市内の電柱などにビーコン受信器を配備し、子どもや徘徊する認知症高齢者などの位置情報を保護者・近親者などに24時間体制で知らせる仕組み「まちなかミマモルメ」が導入されている(阪神電鉄との連携事業)。ビーコン発信機を持った子どもや高齢者が設置された受信機に近づくと、通過履歴がサーバーに送られ、保護者や市民ボランティアがスマホで受信するというもので、これを導入して以降、街頭犯罪・侵入犯罪の抑止効果があったとされる(※1)。
※1 電信柱から小学生を見守り、防犯カメラとビーコンを併用――伊丹市

 こうした自治体での導入事例は、総務省の後押しもあって(※2)、実証実験段階のものも含めて、徐々に増加しているものと思われる。例えば、東京都墨田区でも、区が(株)アサヒ飲料と情報通信研究機構(NICT)と共同で、区内の電柱やアサヒ飲料の自動販売機(のうち約100台)に無線ルーターを搭載し、近隣を通過したビーコンの履歴を家族のスマートフォンやパソコンに伝える、という実証実験を進めている。
※2 『児童見守りシステム 導入の手引書』(総務省情報流通行政局)

 ただし、このような広域の導入は費用がかなり高額となり、予算化が必ずしもうまくいくとは限らない。そこで、例えば養護施設や学校や保育園などに、行政が補助金を出しつつ、各施設や保護者らに負担を求めていく、ということになる。施設関係者や保護者らが、「それで安全をより確かなものにできるのなら、多少の負担はやむを得ない」という気持ちに傾きさえすれば、ICTならびに通信事業者にとっては、相当な利益が長期に渡って確保できることになる。
 こうした「見守りシステム」を導入する際には、当然のことながら、対象となる本人たち(子どもや高齢者)もしくはその保護者の同意が必要とされるが、はたして、そのメリット(効果)とデメリット(使用に伴う何らかのリスク)そして負担する費用の合理性などが、事業者からきちんと説明されているのだろうか。
 じつは、私の見る限り、説明されていないどころか、そうした問題があること自体が忘れられがちなのが、「そのシステムを使うことで、どのような電波をどれだけ浴びることになるのか」という電磁波曝露の問題である。

安曇野市に陳情書が出された経緯

 このたび、市民科学研究室が長野県安曇野市在住の女性(Iさん、「電磁波過敏症問題の会」メンバー)から相談を受けて、調査することになったのは、まさにこの問題であった。
 安曇野市にある保育園のうち2箇所(「アルプス認定こども園」「有明の森認定こども園」)において、ソフトバンクの子会社「ハグモー社」が開発した「午睡センサーマット」を試験的に導入することとなった(7月26日に各園から保護者への通知がなされた)。これは、長野県が実施している「保育士業務に関するIT活用の検討」事業の一環であり、ソフトバンクと長野県はこの件で包括連携協定を結んでいる。ハグモー社が導入を持ちかけているのは、大別して二つのシステムがあり、両システムともWi-Fiを用いる。一つが今述べたセンサーマットであり、これは3歳児未満のお昼寝布団にセンサー付きマットを敷き、心拍数、呼吸数、体温などのデータを可視化して把握できるようにして、突然死の防止や保育士の労働軽減につなげるというもの(「hugsafety(ハグセーフティ)」と名付けられている)。もう一つは、専用のタブレット端末(「hugnote(ハグノート)」と名付けられている)を用いて、園児の登園・降園をチェックし、延長保育の時間を管理し、そうした情報を含めて保護者への連絡をデジタルで保護者のスマホに配信するものである(ハグセーフティでもこのハグノート端末を用いる)。松本市ではすでに2018年からこのハグノートの試験的導入が始まっており、2019年度から2年がかりで公立保育園(43園)への本格導入を目指している。
 2019年に塩尻市と安曇野市で試験的導入が決まった時点で、Wi-Fiの電波を幼児が曝露することで健康に影響が出るのではないかと懸念したIさんならびに同じく「電磁波過敏症問題の会」のOさんの2名が、安曇野市に陳情書を提出した(5月27日)。その要点は以下のとおりで、きわめてまっとうなものである。

 (1)Wi-Fi(無線LAN)の導入については慎重に検討してください。
 (2)センサー付きマットレスの使用は、保護者に説明し同意を得た場合に限るようにしてください。
 (3)実験運用に際しては、園内の電磁波測定や健康調査を行ってください。

 6月21日の安曇野市議会福祉教育委員会で陳情の趣旨説明がなされたが、継続審議となり、そのことを受けて、Iさんから筆者に「次回の審議の場で参考人として来てもらえないか」との打診をいただき、筆者は正式にその福祉教育委員会協議会で意見を述べることとなった(8月9日)。

参考人として招致された際の陳述

 筆者は、Iさんから事前に受け取っていた種々の新聞記事や経過報告やハグモー社の資料をもとに、この試験的導入が以下の3点の問題をかかえていることを指摘した。

1)高周波電磁波曝露のリスクについて
 欧州を中心に、世界各国で携帯電話・スマホを主たる対象として「子どもへの高周波電磁波曝露は低く抑えるべき」とする安全性の考え方が主流となってきている。これは、「高周波電磁波のリスクは熱作用だけであり、非熱作用のリスクは科学的に証明されていない」とする日本の電波防護指針(総務省)とは大きく異なる、「脆弱性の高い胎児や幼児や子どもに対しては、そのリスクが科学的に100%証明されなくても、予防的に臨む」という姿勢の現れと言える。Wi-Fiの長期にわたる連続的使用が健康影響をもたらすかもしれないことを示唆した論文もある(※3)。携帯基地局をめぐってその周辺地域で健康の不具合を訴える人が少なからず存在すること、いわゆる電磁過敏症を発症して生活に大きな支障を生じている人が決して無視できるような数ではなく増加傾向にもあることを考えても、ごく幼い頃から子どもが常時高周波電磁波に曝露し続けるという環境は、決して「(現行の)基準値以下だから」「今はどこでも電波が飛び交っているから」というような安易な判断で、容認してしまってはならないものだと考えられる。
※3 Martin L.Pall “Wi-Fi is an important threat to human health” Environmental Research Volume 164, July 2018, Pages 405-416

2)高周波曝露に関するデータの公開と計測の必要性
 「国が定めた基準値を超える電波の強さではない」という業者の主張を確認する上でも、さらに、それを下回っていたとしても「将来起こり得るかもしれないリスクに対して備える」という意味でも、この試験運用においては、Wi-Fiがどのような仕組みで利用されているかを確認した上で、発信機の位置、発信電波の強さの時間的変動、子どもの身体と距離などを考慮した曝露量の推定などのデータが、業者から被験者に、本来ならば前もって提供されなければならない。そうでないと、将来起こり得るかもしれない健康リスクに関して、何の保証も裏付けも得られないことになる。したがって、

  • このような高周波電磁波曝露に関するデータを業者が自ら測定し提供する

か、それができないのならば

  • 測定の能力を有した第三者が、被験者らの同意のもと試験運用の現場に赴いて測定する

ことが必要である。

3)ヒトを対象にした実験データの扱いに必要な倫理的配慮
 最近、福島県伊達市において生じてしまった「(放射線被曝の)個人線量計のデータを、本人の合意なく市が研究者に提供していた」ことが大きく報道され、社会問題となっている。このことからもわかるように、ヒトを実験対象とした調査研究においては、そのデータを取る際に「どのようなデータをどのように取って、それを誰がどのように使うのか」ということについて、被験者から事前に同意を得ておくことが不可欠だとみなされている。そのためには、事業者が実験の計画書を被験者に示し(医療の場合は倫理審査委員会が別途設けられて判断するのが通例)、十分に説明して納得を得た上で、同意書にサインしてもらうことが必要である。この手続きを経ないで安易にデータを取ることは、本来あってはならないことである。

ハグセーフティの電磁波計測とその結果

 じつはこの参考人陳述がなされた日は、安曇野市の2つの保育園で導入試験がなされている日と重なっていたので、その2つの園のうちの一つ、「アルプス認定こども園」で、実際に園児が午睡している時間に電磁波測定が行えるように、事前にIさんらや安曇野市議の小林じゅん子さんらに取り計らっていただいたのだった。測定にあたっては、同園の主任保育士のKさんに全面的にご協力いただき、また「電磁波過敏症問題の会」のOさんには測定の助手を務めていただいた。
 次に示すのは、この8月19日の測定結果をふまえて、安曇野市議会福祉教育委員会で、陳情を採択するか否かを決める審議に資するように、筆者がまとめた『ハグセーフティ 試験使用時における電磁波計測 報告書』の主だった内容を転載したものである。

【以下、『報告書』より抜粋】

1)測定対象機器
 ハグセーフティ(通信モジュール搭載センサーマット本体(ⅰ)、WiFiルーター(ⅱ)、アプリ内蔵タブレット端末ハグノート(ⅲ))

2)使用した計測器
 (Ⅰ)高周波(マイクロ波)電磁波測定器TM-195
 (Ⅱ)低周波磁場計測用 トリフィールドメーター model TF2

3)無線使用の状況
 ハグセーフティについての業者側の説明(図1)によれば、「マット型IoTセンサーで検知した呼吸や心拍の状態は、Wi-Fi接続を通じて自動的にクラウドにアップロードされ、「ハグノート」アプリで確認することができる。」とあり、次の図解が示されていることから園内のある部屋(子どもを午睡させる部屋)に設置されたマット型IoTセンサー(ⅰ)が発信機となって、通常のWi-Fiで使用される周波数帯域の高周波が発信され、屋内の別の部屋(アルプス認定こども園では事務室)に設置されたWi-Fiルーター(ⅱ)を経て、「hugmo IoTクラウド基盤」にそれが届き、そこで情報処理がなされて、その結果が再びWi-Fiルーターに送られ、それがアプリ内蔵タブレット端末ハグノート(ⅲ)に届く、という方式であると推定される。
 従って、ⅰ、ⅱ、ならびにⅲの機器に近接した位置で測定し、その近接した場所にいることになる赤ちゃんならびに職員の曝露の程度を推し量ることが必要である。

4)測定地点
 次の8箇所において測定した(図2)。
 ①機器(ⅰ)から距離5cm(床からも5cm)の位置(寝ている園児の足元近辺)。測定時に園児が2名いたので、それぞれについて測定した(園児A、園児B)。比較のためこの機器を作動させている場合と、OFFにした場合の両方で測定
 ②センサーマット中央、床から約30cmの位置(園児の腹部の上近く)。測定時に園児が2名いたので、それぞれについて測定した(園児A、園児B)
 ③園児の頭部から距離5cm(床からも5cm)の位置。測定時に園児が2名いたので、それぞれについて測定した(園児A、園児B)
 ④機器(ⅲ)から距離5cmの位置(見守りをしている職員の手元の近く)
 ⑤別室(事務室)に設置されたルーター近辺 距離5cmと30cmの位置(いずれも床から約1m)
 ⑥事務室中央(⑤のルーターからは4mほどの距離がある)
 ⑦保育園入口を出て2mほどの位置(200mほど離れた位置に基地局の存在が確認できた)

図2 測定位置。左・中央の図はhttps://iotnews.jp/archives/107462から。右は手書きイメージ

5)測定結果(表)
 高周波については、それぞれ1分間計計測での最大値を示している。
 低周波磁場については、1分間計測で大きな変動が見られた場合に最大値を取り直した。
 園児Aは園児Bより機器ⅲに近い位置にいた(その距離の差は3mほどあった)。
 表中の「―」は測定を行っていないことを示す。

表 測定結果

6)考察
 その1:ハグセーフティを使用しない場合は、園の内外全体がきわめてありふれた電磁場環境にあるとみなすことができる。

<理由>

  • 園の高周波環境としては測定[t]からわかるように、携帯基地局周辺環境でよくみられる電力束密度の大きさを示しており、ハグセーフティが作動していない室内においては、建物が遮蔽効果を発揮しているためか、測定[e]でみられるように、さらに微弱な大きさになっている。すなわち、ハグセーフティがないとすれば、ごく一般的にみられる、放送電波ならびに基地局からの電波を主とした電波環境にあるものと考えられる。
  • 低周波磁場については、測定[n]と[r]にみられるような大きな変動を示すのが、使用機器の近辺に限られており(こうした事象は機器によってよく生じることである)、場所を問わず、0.3~0.6mGの大きさにとどまっていることから、きわめて一般的な環境であると判定できる。

 その2:ハグセーフティを使用している場合の、ルーター(機器ⅱ)近辺ならびにタブレット(機器ⅲ)近辺に生じている電磁波は、ごく一般的に用いられているWi-Fi使用時のルーターやタブレットの近辺の電磁波の強度(電力束密度)と変わらない。

<理由>

  • これは、他の一般的な計測事例と比較しなければ厳密なことは言えないが、市民科学研究室がリクエストに応じて個人宅でルーターやタブレット端末の近辺で測定した際に得た値のオーダーと変わらない値になっていることから、このように判断できる。これらの機器は、機器使用時にその機器から30cmも離れれば、0.1μW/cm2以下になることが多く、それを若干超えたとしても(この場合は測定[r])、その機器のごく近くに常時人がいるわけではないことを考えれば(近くなり過ぎないように気をつけることができることを考えれば)、その機器によって大きな曝露が生まれているとは考えにくい。ただしタブレットは手元での使用が前提となっており、携帯電話・スマーフォトン端末が頭部近辺においてそうであるのと同様、(身体に近接させての使用から来る)大きな曝露を避けるためには特別の工夫や配慮が必要となる。

 その3:午睡中の園児にハグセーフティを使用することで、その園児たちは通常の環境では遭遇しないかなり強いレベル(数μW/c㎡(1.0μW/c㎡~10.0μW/c㎡)程度)の高周波電磁波を曝露することになる。

<理由>

  • 測定[a][b][c][d]からハグセーフティの使用によって、園児は足元に数μW/c㎡から場合によっては10μW/c㎡の強さの高周波電磁波を曝露することがみてとれる。園児の寝相によっては身体の他の部分に同程度の強さの曝露が生じる可能性もある。
  • 測定[j][k][l][m]からハグセーフティの使用によって、園児は頭部には0.1μW/c㎡程度の曝露が生じていることがみてとれる。
  • ハグセーフティという装置の性質上、発信機であるマット型IoTセンサー(機器ⅰ)と寝ている園児の間の距離を取ることが難しく、園児が午睡の時間(毎回2時間程度想定される)にハグセーフティを使用する場合には、数μW/c㎡(1.0μW/c㎡~10.0μW/c㎡)の強さの高周波電波を園児が曝露し続けることになるのは避けられない。
  • 一般的に、大きな電波塔(放送局送信設備ならびに中継施設)やレーダーなどを用いた特殊施設の近隣地域を除いて、10μW/c㎡を超えるような強さの高周波が恒常的に存在することはまずない(※4)。また、携帯電話基地局周辺地域は地点によって数桁の強度の差がみられたりするものの、通常の居住空間では1.0μW/c㎡を超えるような場所はかなりまれである(※5)
    ※4 論文「東京タワー周辺地域における送信電波の電力束密度測定」(市民科学研究室)
    ※5 「携帯電話基地局とわたしたちの暮らし」(総務省)
    →この資料の6ページに記された「0003.0mW/c㎡」は、単位を換えると0.3μW/c㎡に等しい。

7)結論(勧告)
 (1)高周波曝露の人体影響は、「基準値以下だから無い」と断定できるものではないことを心得ておかねばならない。
 数μW/c㎡ほどの高周波電波(この場合は放送電波、携帯通信やWi-Fiに用いられるマイクロ波)を恒常的に曝露した場合の健康影響は、現時点においては、完全に「有る」とも「無い」とも断定できるだけの科学的証拠は積み上がっていない。例えば、日本においては過去最強のマイクロ波環境となっていたアナログ電波時代の東京タワー周辺地域においても、小児白血病など発症リスクの増加などは調べようがなく、各国でなされた電波塔周辺地域の疫学調査も結果は「有る」「無い」が混在し、相互比較も難しい状態である(※6)。また、携帯基地局周辺では、様々な疾病や身体的不調との関連が疑われている事例もあり(※7)、これに類した報告も海外のものを含めていくつも存在するが、それらをもって「影響有り」と断定するわけにはいかない。ただし、Wi-Fiの人体影響をレビューした最近の論文が「影響有り」を示唆していることからわかるように(※3)、「国の防護基準を下回っている強度の電波であるからまったく影響がない」と断定できないことは確実であり、そのことを無視しては今後の防護や規制がまっとうなものとならないと、心得なければならないだろう。
※6 報告「東京タワーからの放送電波の強度分布と周辺地域の電磁波リスク」
※7 携帯基地局周辺の電磁波と健康被害

 (2)胎児、新生児、乳幼児などの幼少の子どもを、通常の居住環境ではまれにしか観測されない、数μW/c㎡のレベルの強さの高周波電磁波に晒すのは、国際的には非難されかねない、非常識な事態と言える。
 フランスをはじめとするいくつかの国々が、子どもの電磁波曝露に対して慎重な対応を取り始めていることの背景には、「子どもが大人とは異なった感受性・脆弱性がある」ことを示す膨大な科学的知見が積み上がってきているという事実がある。たとえ「通常のWi-Fiの使用時に大人が頻繁に曝露するだろうレベルとさして異ならない」としても、自らの利便性のために自身への曝露を自身で選択して許容できる大人と、今回のハグセーフティのようにまったくの幼少期にある子どもを、大人の都合によって曝露させるのとでは、話が大きく異なる。ハグセーフティ・システムの導入によって園児の午睡時の安全強化がはかれるというのであれば、それを立証するデータを業者から得た上で、試験的使用時にどの程度の実際的効果(業務負担軽減を含めて)がみられるかを検討しなければならないだろう。そしてそのことで何らかのメリットが明らかになったとするなら、幼い子どもを高周波に晒すことのデメリットとそのことを比較考慮して、園自身でハグセーフティを導入するか否かを決めるのが筋であろう。
 (3)この(1)及び(2)を論拠として、ハグセーフティを導入することで「園児の午睡中の死亡リスクを低減する」というような明確なメリットが示されない限り、園児が被るかもしれない将来的な健康影響を考慮して、導入を見合わせるのが妥当だと考える。

【以上、『報告書』より抜粋】

陳情の採択へ

 筆者がこの報告書を送ってから約1ヶ月後、9月12日に安曇野市議会福祉教育委員会において、市立認定こども園のICTによる業務効率化についてのIさんらの陳情が採択された。そこでは、
 (1)Wi-Fi(無線LAN)の導入については慎重に検討する
 (2)センサー付きマットレスの使用にあたっては、保護者に説明し同意を得るようにする
ことが確認された。今回の試験導入では業者の説明チラシと園側の「案内」による告知のみだったことを思うと、これは明らかな前進と言えるだろう。
また、Iさんらの
 (3)実験運用に際しては、園内の電磁波測定や健康調査を行ってください
という陳情項目に関しては、筆者による測定の実施を受け入れたこと、また、園側からの「試験期間中に園児に体調の変化は見られなかった」との報告を受けたことで、まずは対応したことになる。むろん、数日間(午睡時の合計時間で10数時間未満)のWi-Fiの電波の曝露で急性的な体調の変化がみられたら、それこそ驚くべきことになってしまうが、上記『報告書』のなかで述べたように、高い感受性を持つ幼児期に恒常的にそれなりに高いレベルのWi-Fiの電磁波を曝露することは、将来において慢性的影響をもたらすかもしれないことに留意しておかねばならない。
 全国的に展開されていく可能性の高い、この保育園児を対象とした午睡時の「見守りシステム」ハグセーフティは、はやり、対象が幼児であるだけに、安易に導入してはならないものであろう。導入を検討している自治体や保育園に再考を求めたい。

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