スマートメーターで経産省と交渉 事実上の強制方針見直さず

 スマートメーターが全世帯に事実上強制されている問題で大河原雅子衆議院議員のお取りはからいにより、当会(電磁波問題市民研究会)は8月5日、経産省の担当者と話し合いを持ちました。経産省側の姿勢は、前回の話し合い(2月13日)から前進はなく、むしろ後退した印象でした。
 スマートメーターを拒否したところ、配線も切断されて電気を使うことができなくなっている山梨県在住の米国人ニック・フォレストさん(仮名。会報第118号参照)が、今回初めて経産省との話し合いの場に参加。当会からは野村修身代表、大久保貞利事務局長、事務局員の相澤愛子と筆者(網代太郎)が参加しました。経産省側は異動により前回から全員の顔ぶれが変わり、I資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課電力産業・市場室室長補佐(企画調整)、S同(電気計器担当)、A同室係長(審査・計器)、Y商務情報政策局産業保安グループ電力安全課課長補佐。そして、大河原議員と野村秘書が参加してくださいました。
 私たちが事前に出した質問・要求の概要と、当日の回答などの概要を以下にご報告します。

電力会社の指導に消極姿勢
 質問等1 経産省は「スマートメーターの導入を望まない需要家への対応について検討する」旨、2018年4月の院内集会で表明。その検討結果として、本年2月13日、経産省は私たちに「イギリス、フランスでもスマートメーターの電磁波に対する健康影響に対する見解は日本政府と同じスタンスであり、(スマートメーターを希望しない)需要家には丁寧に説明をするというスタンスも同じだった。これも踏まえて、スマートメーターを希望しない需要家には丁寧に説明するよう電力会社に伝えたというのが、検討の結論」である旨、説明した。これに対して当会が「イギリスやフランスでは、スマートメーターを望まない需要家には強制していないと承知している」と指摘したところ、担当者は「その認識はなかったので、改めなければならない」と回答した。諸外国ではアナログメーターの選択が認められている事実を計算sんようがしっかりと認識したうえで、需要家に理解を得られない場合はアナログメーターを設置するよう電力各社を指導してください。指導が難しいと経産省が主張する場合、その根拠を具体的かつ詳細に明らかにしてください。
 これに対して経産省・Iさんは「調べた結果、スマートメーターがイヤだというお客様には丁寧にご説明するということは、諸外国もそうだと聞いているので、望まないお客様とは、よく話をしてということだ」と、前回とまったく同じ回答をしました。
 加えてIさんは「スマートメーターと同様にアナログメーターを設置せよとも法律上なっていないので、アナログメーターを設置せよという指導は難しい」とまで言いました。前回の話し合いで経産省側からそのような発言はありませんでした。電力会社は「国の政策」を理由にスマートメーターを強制しています。すべきでない強制を電力会社自らがやめないのであれば、経産省による指導以外、何の手立てがあり得るのでしょうか。大河原議員も「(法的根拠を持ち出さずとも)社会常識として『強制はできないのだから(アナログメーターを)付けられます』という通達は出せるのでは」と指摘しました。

東電の説明を鵜呑み
 質問等2 スマートメーターへ交換する際には、「約1週間前にチラシを配布する」という約束を東京電力パワーグリッド(東電)は守っていない。2月13日に、当会は経産省に東電等が上記のような不適切事例があることを報告し、経産省の求めに応じて、後日、具体的な事例集も提出した。これらの事例について調査等を行ったか? 行った場合はその結果をお示しください。
 これに対する経産省・Iさんの回答は、私たちが5月に東電から直接聞いた回答とまったく同じで、「施工業者はチラシをまいたと言っている」というものでした。客の訴えを無視して施工業者の言い分だけを信じる東電の説明を、経産省はそのまま受け入れていました。
 質問等3 スマートメーターを拒否しているのにスマートメーターに交換されたと訴えている需要家については、「丁寧に説明して納得していただいてから交換する」という経産省の方針にも反しているので、原状復帰の意味からもアナログメーターへ再交換するよう、電力各社へご指導ください。特に、スマートメーターの交換後に体調不良になったと訴えている方々や、スマートメーターを拒否したために電力の供給が止められてしまったニックさんなど、深刻な状況にある方々については、大至急アナログメーターへ再交換させてください。
 経産省・Sさんは「日本のメーカーでアナログメーターを現時点で作っている会社はない。(中古アナログメーターの)修理やオーバーホールをする事業からも撤退していると聞いている。なので、東電以外の各社が在庫限りにおいてはアナログメーターへの交換という対応はたしかにしているものの、そのうち在庫が枯渇してくる可能性がある」と、他人ごとのように述べました。しかし、筆者が後日、日本電気計器検定所に問いあわせたところ、中古アナログメーターの修理などを行う業者が関東にも1社あるとのことで、Sさんの説明は正確ではありませんでした。
 筆者は経産省の担当者らに対して「アナログメーターを製造している会社がないとか、オーバーホールする会社が本当にないとしたら(電力会社による事実上の強制を黙認して)そうなるまで放っておいた経産省に一番責任がある。アナログメーターの在庫を確保する手はずを経産省が先頭に立って考えてもらいたい」と要求しました。
 筆者はまた、「選択肢が一つしかないのに『強制ではありません』という理屈が通じると思うか」と質問したところ、経産省・Sさんは「通信部外しの選択肢は一応ある」と回答。筆者が「東電は通信部外しは暫定的な措置だと言っており、ずっと外されたままの保証はない」と反論しましたが、経産省側からの再反論はありませんでした。

海外の火災事故は調べていない
 質問等4 スマートメーターから出火した火災の原因の徹底究明を行うためにもスマートメーター交換工事は究明が済むまで一時中止してください。スマートメーターの火災事故は海外でも多発していることから、東電が言うように施工ミスまたはメーターの不良だけが原因であるとは考えられず、海外で発生している火災事例も含め、経産省で独自に調査を行ってください。
 経産省・Yさんは、東京電力による従来の説明を繰り返すだけなので、大河原さんが「じゃあ(海外の事例は)まだ調べてないってことですね」と質問すると、Yさんは「そうですね、すみません」と述べました。

ニックさんの件は対応を約束
 東電がニックさんの家に電気を供給していない件について、ニックさんは「今すごい暑いよ、扇風機ない、冷蔵庫ない、全部ないよ。Is this OK?」と追及すると、経産省・Iさんは「OKではない」。大河原さんも「アナログメーターに替えるのは大工事ではない。通電も、人権問題だからすぐやるべき。東電のほうに理はないですよ、これ以上粘ってもね。だから、もうさっそく、それは実現してくださいよ。こんなこと自体が経産省で指導できないっていうのはあり得ない」と、アナログメーターに交換したうえで通電するよう求めました。
 しかし経産省側は「通信部を外したスマートメーターという現状で良ければ早急に電気を供給できると思う」と東電側に立ったことしか言わないため、当会・大久保はあらためて解決のために動くよう要求し、経産省・Iさんは「はい」と答えました。
 また、スマートメーターの配線を切ったことについて、ニックさんがスマートメーターのまま通電しては困ると言ったからだという、東電による理解しがたい説明を、経産省はそのまま受け入れていることも分かりました。経産省の姿勢はあまりにも無責任です。【網代太郎】

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