東京電力と当会、日消連が交渉 火災続きのスマメ新設中止を拒否 不適切設置事例は「ない」と強弁

日本消費者連盟、電磁波問題市民研究会と、東京電力パワーグリッド(東電PG)との話し合い=5月9日、東電PG本社で

 スマートメーター火災が相次いでいることから、当会(電磁波問題市民研究会)と特定非営利活動法人日本消費者連盟(日消連)は、スマートメーターについて設置済みのものの火災対策を最優先し、新設は中止するよう求める要求書を2月19日、東京電力パワーグリッド(東電PG)に提出しました。この要求書には8団体からご賛同をいただきました。
 また、事前に通知することなくスマートメーターに交換するなどの不適切な事例が依然として続発していることから、東電PGの認識を質すとともに、アナログメーターへの交換を望む需要家(電力の消費者)についてはアナログメーターに交換するよう求める要求書を同日、当会単独で東電PGへ提出しました。要求書には、経済産業省へ提出した(会報前号参照)ものと同様の、実際にあった不適切な事例のリストを添付しました。
 これら二つの要求書に対して回答をもらい、交渉する場が5月9日、同社本社で行われました。要求書の提出から回答まで時間がかかったのは、当会独自の要求書に添付した事例について調査の上で回答したいという東電PGから「1例だけ調査が終わっていない」という理由で延期を求められたためです。その後、東電PGから連絡がないため、その1例以外について回答するよう当会から要求し、この日の回答となりました。
 この日は日消連共同代表の天笠啓祐さん、当会事務局長の大久保、当会会員で『香害』の著者であるジャーナリストの岡田幹治さん、当会事務局の網代の4人が参加。東電PGはスマートメーター推進室企画グループ・Sマネージャー、同室スマートメーターオペレーションセンター運用第一グループ・Kマネージャー、同室配電設備グループ・Nマネージャー、業務統括室総務・広報グループ・T広報チームリーダーの4人が参加しました。【網代太郎】

火災対応に係る要求書

要求書の内容はこちら
 以下、要求項目ごとに東電との主なやりとりを示します。

1.スマートメーター新設中止を
 東電 エネルギー基本計画に基づいて2020年度までにすべてのお客様にスマートメーターを設置することが必要だと思っているので、新規設置は続けさせていただきたい。
 不良品メーターによる火災はメーター内の焼損に限られる。お客様設備に影響を与えるおそれが極めて低い。なので、2019年12月末までに完了という目的だが、積極的に(完了の)前倒しをするよう努力しているので、ご理解いただきたい。
 当会 東電側の認識としては、炎を挙げて燃えた火災は不良品メーターでなく、すべて施工不良(施工ミス)だという意味か?
 東電 そうだ。施工ミスについての抜き取り調査は3月末までに完了し、調査結果を分析中。さらなる調査が必要かどうかは、そんなに時間をかけずに経産省に報告し公表する[編注:後述の通り5月22日に公表]。
 日消連 (不良メーターで、メーター内が焼損する以上の)火災が起きないことは、再現実験で確認しているのか?
 東電 メーカーが確認していると聞いているが、再現までかどうかは聞いていない。
 日消連 その実験に東電PGは立ち会っているのか?
 東電 (今答えられないので)持ち帰らせてください。
 日消連 施工ミスの原因(ネジの緩み)については実験で確認しているのか?
 東電 実験なりで、確認している。

2.希望する需要家にアナログメーターを
 東電 (1への回答と同じ趣旨の回答)
【網代】

不適切対応などに係る要求書

要求書の内容はこちら

1.事前通知ない交換について
 東電 施工業者(下請業者)に確認したところ、事前にスマートメーターの交換を通知しなかった事例はなかった。
 当会 下請業者の言い分だけで判断したのか。当会には、交換を通知するチラシの事前配布なしに交換され怒っている人からの相談が多く来ている。ユーザー(お客様)の声は聞いていないのか。
 東電 これは施工業者からの聞き取りです。
 当会 当会はユーザーに対し、東電に内容証明付きで抗議するよう助言している。少なくても20件以上は東電に来ているはずだ。
 東電 内容証明文書は来ているが、そういう内容(事前にチラシ配布がなかった件)のものではない。
 当会 東電本社か支社あてに来ているはずだ。メインの内容がアナログメーターに戻してくれという内容でも、その前提として事前の通知がなく怒っているという内容のはずだ。本社と支社で情報の共有はされていないのか。
 当会 本当はチラシを配布していないのに、下請業者が「東電に対しては配布している」とウソの報告をしていることは十分考えられる。
 当会 東電はお客の言うことと下請業者の言うことのどちらを信用しているのか。
 東電 持ち帰って検討する。

2 不適切なケースはアナメに再交換を
 東電 1で述べた通り、不適切なケースはない。
 当会 この1年間だけでも約120件ほど当会にスマメ交換を巡るトラブルの相談が寄せられている。3日に1回の割合だ。次に貴社と会う際は、不適切なケースに会った人を直接呼んで話し合うしかない。
 東電 ……(だんまり)。
 日消連 消費者には選択する権利がある。一方的にアナログメーターがなくなるのは消費者基本法に違反すると思う。

3 東電の説得に納得しない需要家には有効なアナログメーターに交換を
 東電 私たちは閣議決定に基づいてスマメ化を推進しており、スマメ化が需要家にとってもいいことだというスタンスです。
 当会 山梨県の米国人のところに行ってきた。東電は電気を止めるということを行っている。群馬県内でも同様に「電気を止める」ということを、こともあろうに支社が文書まで出した。その件は当会から直接支社担当者に電話を入れ支社は文書を撤回した。しかし山梨のケースは実際に電気を止めた。
 東電 群馬の件は承知している。山梨の件は(米国人から)電気契約の申請そのものが出ていないと聞いている。
 当会 そんな簡単なことなんですか。それならすぐに米国人に契約申請するように連絡するが、それで通電するのですか。アナメに戻すならすぐに申請するはずですよ。
 東電 スマメのままです。
 当会 それでは同じじゃないですか。本人はスマメでなくアナメを要求しているんです。スマメ化を強制する法律はない、と経産省も言ってます。2月13日、私たちは経産省担当者と会ったが、電気を止めたりチラシを事前に配布しない事例を説明したら、「あってはならないこと」と驚いていました。しかも東電以外の電力会社(関電等)は在庫ですがアナメに交換しています。いま暴力的なほど強硬なのは東電だけです。
 当会 契約していないという理由だけでメーターからのコードを切るという例は聞いたことがない。
 東電 甲府支社からの報告と違う点もあり、ここでは判断できない。
 当会 それなら今度は米国人と甲府支社をこの場に呼んで、事実関係を明らかにする形でどちらの言い分が正しいかわかる形で話しましょう。
 (次の予定が入っている、として話し合いを東電は打ち切ろうとしました)
 当会 今回時間がないならば、近々に話し合いの場を持ちましょう。
 東電 (うなづく)

客より施工業者を信用する東電PG
 以下は今回の感想です。
 2018年4月の院内集会で東電担当者は「約1週間前にはスマメ交換のチラシを配布する」と明言しておきながら、実際は配布もなく突然交換している事例が数多くあります。下請業者は親会社の東電からスマメ化についてせっつかされているので、強引にスマメ化を進めています。おそらくスマメ化が進むほど下請業者の利益が上がる仕組みになっていることは容易に想像つきます。こんな構造で下請会社が親会社に「適切にやってます」とウソの報告をするのでしょう。お客様の声を聞かず、下請業者の言い分だけで通そうとする東電は不誠実です。
 山梨の米国人に対し電気を止めたケースは最悪です。日本人相手ならば別の対応をしていたでしょう。東電は配線を切断して電気を止めたのです。ひどい対応です。こんな野蛮なことがまかり通っていいのでしょうか。
 終了後、参加者でお茶を飲みながら感想会をしましたが「どうして大企業はこんなひどい対応なのか」というのが率直な感想です。【大久保貞利】

追記:東電PGが施工不良についての調査結果を発表

 スマートメーター火災のうち、施工不良(施工ミス)が原因であると東電PGが説明している件について、同社は5月22日付で調査結果などを発表しました。火災に至った施工不良7件を担当した作業員7名が施工したスマートメーターを対象とした抜き取り調査(3500個)のうち、火災になる可能性があるネジの緩みが4件確認されました。同社は再発防止策として、火災に至った施工不良を担当した作業員が設置したスマートメーターすべてについてネジの増し締めを行うなどとしています。一方で、それ以外のスマートメーターの全数調査は行わないようです。【網代】

Verified by MonsterInsights