「次世代スマートメーター」の検討を開始 拒否する権利も論点に

 経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)は「次世代スマートメーター制度検討会」を発足させました。現在、私たちに事実上強制されているスマートメーターは、2014年から本格導入が開始されていました。計量法に基づく10年に1度のメーター交換が始まる2024年度以降は、現在のスマートメーターとは異なる「次世代スマートメーター」へ交換できるようにするために、その仕様などを検討していこうというものです。検討会は1~2カ月に1回開催するほか、検討会の下に設けたワーキンググループ(WG)でも検討し、今年度中に次世代スマートメーターの仕様の基本的な方向をとりまとめるとしています。
 業界などには、既に次世代スマートメーターを検討する動きがありました。環境エネルギージャーナリストの本橋恵一さんは、自身はスマートメーターに肯定的な立場ですが、現行スマートメーターは、データの規格が統一されておらず第三者にとって利用しづらいなど、役に立っていないことを指摘し、次世代スマートメーターが考えられている、と述べていました。(会報第115号参照)。
 9月に開かれた第1回検討会でエネ庁が示した、検討すべき論点案は、かなり多岐にわたります(図)が、主なところは以下の通りでした。
・スマートメーターによる電力使用量データの取得は現在の30分に1回のままで良いか
・無効電力(送電線を流れているが使われない電力)を測定するかどうか
・スマートメーターの電力会社との通信(Aルート)の方式は現在主流であるバケツリレー方式のマルチホップのままで良いか
・スマートメーターの電力量データを居住者などが取得する「Bルート」のあり方
・ガスメーターや水道メーターもスマートメーターにして電気と共同検針することも見据えた各機器間の通信方法のあり方
・スマートメーターの設置が嫌だという消費者について、オプトアウト(opt-out=脱退、不参加)の検討

「オプトアウトは合理的」
 私は、やはりオプトアウトに注目しました。第1回検討会で、検討会の事務局であるエネ庁の下村貴裕・電力・ガス事業部電力産業・市場室長が論点案を説明する中で「どうしてもスマートメーターの設置が嫌だとおっしゃるお客様もいらっしゃるので、それについてどう考えていくのか、オプトアウトの検討も必要かと思います」と述べました。その後、事務局の別の職員が各論点案に関連した国内外の現状を紹介する中で「オプトアウトというのは健康被害、電磁波の問題、プライバシーの問題からスマートメーターの設置を拒否する権利のことです。アメリカではこう言ったオプトアウトが認められている州があり、希望する方に関してはスマートメーターではなく、通常のアナログのメーターに戻すことがされています。アメリカにおいてはこうしたメーターの取り換えに関しては初期費用と月額費用を請求していて、我が国においてもこうした権利が認められる場合はどのような制度、どのような費用負担であるべきか議論するべきであると考えている」と述べました。
 検討会の委員の中では、松村敏弘・東京大学社会科学研究所教授が「オプトアウトに関しては導入が合理的だと思うので前向きに検討していただきたいと思います」と賛意を示しました。
 ただ、松村委員は、余計なことも言っています。電力会社が電力を十分に供給できない非常事態発生時に、東日本大震災の直後にしたように各家庭などを完全に停電にするのではなく、スマートメーターの機能を使って一時的にアンペアを制限して各家庭の使用量を減らすことによって乗りきるべきとの持論から、「オプトアウトした人だけが危機時にも自由に電気が使えることになり、不公平な状況が起こりうるわけで、そうすると負荷制限がないことに対応する電気料金を取らなければ不公平」などと述べました。この国には、一部の他人が苦しんでいることに対しては鈍感ですが、一部の他人が得をするのは許せないという根強い風潮があります[1]。この委員も、アナログメーターを選んだ人が得をすることが許せないようですが、アナログメーターを選んだ人々が、仮に危機時に「自由に」電気を使ったとして、それが全体の電力需給にどれほどの影響を及ぼすのでしょうか。
 また、オプトアウトは追加料金ありきのような説明をエネ庁はしていましたが、追加料金を不要としている国もあります。
 すべての人々のためのライフラインに安易に追加料金を課すべきではありません。
 いずれにせよ、オプトアウトが俎上にのぼりました。歓迎すべきですが、もちろん、安心はできません。現行スマートメーター導入前に開かれていた「スマートメーター制度検討会」も、スマートメーターを拒否する消費者への対応を検討すべきと一応は提言していたにもかかわらず、エネ庁はそれを無視して何の検討もしませんでした。その結果、対応は電力会社任せとなり、嘘や脅迫、だまし討ちも含めてスマートメーターを強制してきた電力会社の横暴を、国が事実上見逃すという結果になりました。
 今回こそ、オプトアウトについてきちんと検討させるよう、私たち消費者から働きかけていく必要があります。

データ取得を30分ごとより増やす
 データの取得頻度は現在の30分に1回を、15分に1回、または5分に1回に増やすことが検討されるようです。その理由として、インバランスの精度を上げて需給調整についての一般送配電事業者の負担を減らすなどと説明されています[2]。
 取得頻度が増えれば当然、発信される電波の量も増えます。コンセントレーター(スマートメーターと通信する基地局のようなもの)も増やす必要があります。
 そもそも、全世帯にスマートメーターを設置するという発想から一歩も抜けていません。現在のスマートメーターは小売会社がデータを得るまで最大60分かかります。需給調整のためには、リアルタイムに消費量が分かるメーターのほうが役に立つし、そのデータは一部の世帯から取るだけで十分との指摘もあります[3]。

スマートメーターの現状
 ところで、検討会には現行スマートメーターに関するさまざまな資料も出されており、スマートメーターの現状を知るのに役立ちます。
 エネ庁が第1回検討会に提出した資料によると、2020年3月末現在、全国で6105万台のスマートメーターが設置され、設置率は75.2%となっています。
 全国の一般送配電事業者10社が第2回WG(11月11日)に提出した資料によると、スマートメーターのうち無線マルチホップが83.7%(約5050万台)、携帯電話の電波を使う1:N方式が15.9%(約960万台)。配電線を利用する有線のPLC方式については記載がなく、残りすべてだとすると0.4%になります。
 一方、Bルートの申し込みはわずか3万4000件で、スマートメーター設置数の0.1%にも満たない数です。Bルート経由で住宅内のディスプレイなどに電力消費量情報を表示して節電意識を高めたり、家電とつなげて便利に使えたり、電力消費量データを利用して新たなサービスが生まれるとさんざん宣伝されましたが、予想通り、ほとんどの市民はそれらを望んでいませんでした。大部分のスマートメーターはあらかじめBルート通信機能が搭載されムダに高価になっており、私たちの電気料金に上乗せされています。

ガス、水道スマートメーターの動向
 三菱総合研究所が第1回検討会に提出した資料には、ガス、水道のスマートメーターや、電気のスマートメーターによるガス、水道の共同検針の事例、動向が紹介されています。
 それによると、ガスでは、メーターとの通信により自動検針やガス漏れなど監視を行うシステムの導入が進められています。有線方式(電話回線、ADSL回線)と、無線方式(PHS、携帯電話、LPWAなど)があります。通信機能は先行するLPガスが25%、都市ガスは5%で導入済みで、東京ガスは全戸導入に向けて開発を進めています。
 水道では、水道事業者、水道関係企業などで構成する公益財団法人水道技術研究センターが、水道スマートメーターの検討を行っています。また、東京都水道局は2024年度までに約10万個の水道スマートメーター導入を計画しています。
 共同検針としては、スマートメーターの通信機能などを利用してガス、水道の計量値を併せて遠隔検針するサービスを北陸電力が2020年4月から提供し、中部電力は2020年度内にサービス開始予定です。
 ガス、水道を含め、勝手にスマートメーターに交換されないよう、警戒が必要です。【網代太郎】

[1]この国では行政も裁判所も、原爆症や公害病の被害認定のハードルを高くしがち。認定から漏れた一部被害者が苦しむことよりも、認定された「ニセ被害者」が得をすることのほうが許せないという意識が根底にあると思われる
[2]電力小売会社の計画に基づいた供給量と実際の消費量の差がインバランス。一般送配電事業者(10電力会社から送配電部門を分社化した東京電力パワーグリッド、関西電力送配電など)がインバランスを調整する
[3]網代太郎『スマートメーターの何が問題か』緑風出版、173頁

 

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