新電力会社GPP主催学習会 スマートメーター肯定派も「スマメあまり役に立たない」

グリーンピープルズパワー株式会社主催スマートメーター学習会。左から本橋さん、網代、竹村さん=2018年10月16日、東京都渋谷区の地球環境パートナーシッププラザ(同社提供)

 新電力会社「グリーンピープルズパワー株式会社(GPP)」主催の学習会「スマートメーターとアナログメーターの特性を学ぼう。」が10月16日に都内で開かれ、19名が参加しました。パネリストは本橋恵一さん(環境エネルギージャーナリスト)、竹村英明さん(GPP代表取締役社長)と、筆者(電磁波問題市民研究会・網代)の3人。どちらかと言うと、本橋さんと竹村さんが「スマートメーターはメリットがあるけれど、今のスマートメーターは国などが言うほど役に立たず、問題もある」という立場で、筆者が「スマートメーターはデメリットのほうが大きい」と考えている立場です。スマートメーターに肯定的なお二人によるスマートメーターへの評価が低いことが印象的でしたし、立場は異なっても共感できる部分も多く、新しい知識も得られて、たいへん有意義な学習会でした。
 GPPは原子力発電所を含む大規模な発電所と、それらを前提にした大規模送配電システムに対抗して「再生可能エネルギー」「地産地消」「市民の力」の理念の実現を掲げる新電力会社です。現在は東京電力エリア内の方しかGPPと契約することはできませんが、原発の電気を使いたくないという理由で東電からGPPへスイッチしている方々も多いそうです。そうした顧客などからの問い合わせの中でスマートメーターに関するものも多いことから今回の学習会を企画したそうです。

異なる立場の3人が報告
 国が言うスマートメーターのメリットの一つとして、家庭などの中で電気がどれくらい使われているかを表示する「見える化」による省エネ意識の向上があります。しかし、見える化を行うためにはHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)という装置を購入し、スマートメーターから通信電波経由で電力使用量データを取得する必要があります。これについて、竹村さんは1%の「省エネマニア」には貴重な情報だが99%の人々には無駄な機能だと指摘し、本橋さんもHEMSは高価なのにメリットは小さく、将来性はないだろうとの見通しを示しました。
 また、やはり国がメリットだとしているスマートメーターのデータを利用した新ビジネスについて、筆者は監視社会化につながるなど否定的です。これに対して本橋さんは、積極的な推進論者のようです。ただし、米国とは違い日本のスマートメーターはデータ形式が標準化されていないため、新ビジネスに活用したい第三者にとって使いずらいと本橋さんは指摘。この点も含めて今のスマートメーターは機能的に不十分であり、それらの部分を改善する「次世代スマートメーター」の話が出てきていると述べていました。
 また、スマートメーターの電波について、竹村さんは携帯電話の電波と同程度の弱さであり、家庭内には他にも電磁波の発生源がたくさんあると指摘しました。筆者は、電磁波は弱ければ影響も小さいとは一概に言えないこと、また、過敏症の方々は自分が反応しないように生活環境をクリーンにしているので、スマートメーターが設置された後に体調が悪化すればスマートメーターが原因である可能性が大きいことなどを述べました。本橋さんはスマートメーターの電磁波は海外で問題になっており、自分も問題があるのではと思っている、と述べました。
 本橋さんのお話、竹村さんのお話、質疑応答について、それぞれから筆者の判断で重要そうな部分を中心にご紹介いたします。筆者の主張についてはこれまでもご紹介していますので、会報第99号、当会ウェブサイト「スマートメーターとは何か、その問題点」、または拙著『スマートメーターの何が問題か』(緑風出版)をご覧ください。
 なお、GPPのウェブサイトで当日の動画が公表される予定とのことです。【網代太郎】

本橋恵一さん(環境エネルギージャーナリスト)講演内容から
(抜粋・要旨)

スマートメーター導入進む海外
 主な先進国はスマートメーターの導入を進めている。比較的早い段階でスマートメーターが入ったのがイタリア。なぜかと言うと盗電を防止するため。イタリアでは電気メーターが家の中にあり、住人が勝手にメーターをいじって請求額を少なくしてしまうことも。そこでスマートメーターに替えて、イタリアの電力会社は収入が上がった。
 イギリスは2019年にスマートメーター100%を目指している。イギリスの電気事業者はお客さんに対して見える化を絶対にやりなさい、ということになっている。スマートフォンや、あるいは専用のデバイスによって、うちは今どのぐらい電気を使っているのかが見える。それによって省エネしたり、それに合わせたサービスを受けることができる。この面ではスマートメーターは非常に良いものだと思う。
 同様にスマートメーターをうまく活用している国としてアメリカがある。今だいたい5割の普及率だ。日本と違ってスマートメーターのデータ形式を標準化にしている。グリーンボタンというプラットホームで、アメリカのエネルギー省が先頭に立って作った。だからアメリカでは第三者が容易にデータを使うことができ、データを利用した省エネゲームとか、電気が安い時間帯に電気自動車に充電するアプリケーションもある。

電力会社は消極的だった
 日本でのスマートメーター導入議論は2009年から始まった。今となっては非常に不思議に思われるかもしれないが、電力会社は実はスマートメーターの導入に非常に否定的だった。スマートメーターから入ってくるお客さんの細かい電力使用量データを使っていろいろな新しいビジネスができるようになると考えて、経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)はスマートメーターを進めようとした。しかし電力会社にとっては自分たちは電気を供給するだけであり、しかもデータを扱う会社がお客さんの窓口になったら、自分たちの客がどんどん減ってしまうと考えた。当時の経産省の担当者は「これからの電力会社は今の電力会社のままではなくて家電メーカーにもなるかもしれないし、自動車会社になるかもしれない。電力会社は(スマートメーターのデータを利用して)そういうお客さんをとっていかなくていいの?」と、電力会社の姿勢を批判していた。
 東日本大震災がスマートメーター普及のきっかけの一つになっている。
 スマートメーターはデータを電力会社へ送るだけでなく、逆に電力会社から指示を受けることができる。スマートメーターがある家については、電力会社からの指示で、そこへ電気を送ったり止めたり、契約アンペア数を変えることも自動で出来る。震災後の計画停電では地域全体の電気を止めたが、もしスマートメーターがあったら病院など止めてはいけない所以外だけを遠隔操作で止めることができたのではないか、という議論が起きた。

メリットはあるが使われない
 スマートメーターとHEMSがあれば電気の見える化ができる。うちの中でどこが電気を多く使っているか、何時ごろ一番使っているか、というデータをもとに省エネ対策ができる。
 経産省は電力量データを使った新しいサービスを考えている。ただしアメリカのグリーンボタンに対して、日本のスマートメーターは電力10社がバラバラの規格で、データが非常に使いにくい。しかもHEMSが高いので、スマートメーターのデータはあまりうまく使われていない。何のためにスマートメーターを入れたのだろう。電力会社に言わせると「結局のところスマートメーターって、ただのメーターだからね」。
 HEMSは高すぎるし、それによって得られるメリットが小さいので、将来性があまりない製品なのかなと思っている。これに対して、スマートメーターからのデータは、うまく使えれるようにすれば良いのではないかと思っている。

次世代スマートメーターを検討へ
 P2P(Peer to Peer=送配電事業者を通さず、電気の消費者が発電事業者と、あるいは消費者同士が電力を直接取引する)取引と言って、たとえば太陽光発電がある家から、ない家に電気を売るという取引も検討されているが、スマートメーターはこれに対応していない。
 スマートメーターをIoT(Internet of Things=物のインターネット)のゲートウェイとして利用しようという動きもある。
 スマートメーターは、電磁波とプライバシーの問題はさておいたとしても、実は機能的にも非常に問題があるので、次世代スマートメーターが考えられている。
 HEMSは多分将来性がない製品だと思うが、それとは別に私たちの暮らしの中でIoTは入ってくるかなと思っている。

竹村英明さん(GPP代表取締役社長)講演内容から
(抜粋・要旨)

スマメを条件としない新電力会社
 GPPという電気の小売会社をやっています。お客さんにスマートメーターの電波について「携帯電話と同じ程度です。携帯電話をお使いになっている方は、スマートメーターで調子が悪くなることはないと思います」と説明している。ただ、今網代さんが指摘されたように、体質的に受け入れられない方はいらっしゃるので、そういう方には「スマートメーターを断ることもできるんですよ」と言っている。新電力の中で「スマートメーターを付けなくても切り替えられる」と言っている会社は少ない。GPPは、そう言っている数少ない会社の一つだ。
 ただ、GPPが東電に「スマートメーターを拒否します」とは言えない。メーターは東電の持ち物なので、お客さんが頑張らないといけない。

スマメ拒否のコツは粘ること
 スマートメーターを断るためには、粘ることだ。「私はいやなんです」と。まあ、半日ぐらい粘ると、向こうも仕事をしないといけないので、あきらめて帰る。とにかく時間を稼ぐ、それが大事だと思う。
 アナログメーターのままで切り替えられたユーザーさんは10件ぐらいはいらっしゃる。実は我々も知らないうちにお客さんがスマートメーターを断っていたというケースが結構ある。GPPは昨年は「みやまスマートエネルギー」さんの取次だったが、今年は「まち未来製作所」さんの取次に変わった。そこで、お客さんを「みやま」から「まち未来」にスイッチングする過程で、「みやま」が「スマートメーターでないと供給しないよ」と言っていたのにもかかわらず、アナログメーターのままで供給を受けていたお客さんがいることが判明した。

同時同量のためには役立たず
 日本のスマートメーターは、電力小売会社にとって必要なものではない。電気の需要と供給のバランスを取るためにスマートメーターが必要だと言われているが、すでに電気を使い終わった1時間も先に、やっとデータが来る。リアルタイムではない。関西電力はホームページに「リアルタイム」と書いているが、本当かどうか分からない。リアルタイムに分からないのだから、スマートメーターの機能は、ほぼ無いに等しい。

省エネ-多くの人には無関係
 残るスマートメーターの機能は、消費者がどのように電気を使っているのかというデータをつかめること。このデータはプライバシーをのぞかれるという面もあるが、省エネという意味では悪いことではない。「こういう(エネルギー効率の悪い)機器を使っているようなので、使うのはやめましょう」とか、「いつも○時頃に使用量が高くなるので、その時に使っている機器を他の時間に移してみましょう」と使用量のピークを下げることもできる。しかし、そのデータを必要としない人にとっては、このスマートメーターの機能もほぼ無駄だ。多分99%の人が使わなくて、1%ぐらいの省エネマニアにとっては、貴重な情報になる。省エネマニアと言ってたいへん失礼でした。省エネは大事で、そういう人が増えればスマートメーターも効果を発揮してくるかなと思う。

小さい送電網の実験を計画
 最後にGPPの宣伝をさせていただきたい。私たちがやろうとしていることの一つは、再生可能エネルギーの電気を供給すること。地球にやさしいだけではなく地域の資源、たとえば日本の資源、あるいは東京の資源、東京の近くの山梨、群馬の資源を電気に変えて皆で使う。できるだけ短い距離でエネルギーを使っていく。
 北海道でブラックアウトが起こったが、次に危ないのは九州だと『週刊金曜日』に書いた。そしたら九州電力が、ぼくの言うことを聞いたわけじゃないだろうが、太陽光発電を抑制した。九州では原発が400万kWで、太陽光発電が800万kW。今のような電力需要が最大にならない秋などは電気が余る。余ったままにしておくと供給が多すぎて周波数が乱れてブラックアウトする。私は原発をせめて半分止めておいたらという提案をしたが、九電はそうはしないで太陽光発電を300万kWぐらい、この土日、抑制をした。土日には工場が動いていないので電力需要が減るからだ。(司会が「スマートメーターで抑制しているのか?」と質問)スマートメーターで制御する機能はない。そういう意味でもスマートメーターは使い物にならない。
 北海道で送電網がダウンしていた時も、太陽光発電や風力発電で電気は作っていたのに、周波数が乱れるから送電網に送れなかった。停電で病院の機械が止まって亡くなりかけた方もいたのに。
 だから送電システムを改革しなければならない。原発などの大きな発電所ではない、小さい発電所と小さなエリアの送電網の中で周波数を維持できる仕組みが必要だ。実は、私たちはこれをやろうと来年、企画しているので、乞うご期待。

質疑応答から(抜粋・要旨)

 会場 GPPがアナログメーターをOKにしていることで、何も支障はないか? 検針員の人件費の請求をされないのか?

ブレーカー下りても自分で戻せない
 竹村さん今のところ支障は無い。
 そこはあまり心配はしなくてもいいところだが、実は、スマートメーターの問題で話をするのを忘れた重大な点があった。スマートメーターの重要な機能として、東電などの送配電会社側が私の家に付いているスマートメーターのスイッチを遠隔操作で切ることができる。切ったらどうなるかというと、停電する。GPPが仕事をしようと思っている時にバチッと切れたことがある。しかも、こちらでオンにできない。スマートメーターの場合は配電盤のブレーカーが無くなる。だから停電した時に自分でブレーカーを起こせなくて、東電に電話して「電気を開通させてください」と頼むしかない。で、東電から人が来た。「外に異常ありません、中を調べさせてください」と言われた。許可がないと東電は中に入れない。中を調べるということは、電気屋さんの仕事を東電が肩代わりするということだ。だから調査費として9000円を要求された。勝手に切ることが出来るという仕組みがまず問題だな思い、会社のスマートメーターから入り切りの装置を外してくれと要求をして、外させた。だから、GPPの配電盤には手動で上げ下げできるブレーカーがちゃんと今は付いている。メーターはスマートメーターなので通信機能は持っているが、勝手に切ることはできないという仕組みになっていて、これ実は重要なポイントだと思う。

スマメなぜ大問題になっていない?
 会場 エネルギーシフトの問題は大きな問題になって皆が意識しているのに、スマートメーターのことが大きな問題になっていないのは、なぜなのか?
 網代 それはスマートメーターについて皆に伝えられていないから。「うちの電気メーターがスマートメーターになったね」ということすら認識していない人が大部分だと思う。皆が知らないうちにコソッと替えてしまえというのが日本のやり方。米国の場合は先程スライドで示したように、スマートメーターのデータをだれが欲しがるか-たとえば泥棒が欲しがる、という表があるが、あれはスマートメーター反対団体ではなくて国の団体が作った表だ。米国のような(いろいろ意見はあるかもしれないが一応)民主主義国家は、問題点も洗い出したうえで対策を考えながら進めるが、日本の場合は騒ぎにならないうちにこっそり進める。検索すれば分かるが、エネ庁のウェブサイトにスマートメーターとは何かについて説明したページはない。国民に説明しようという気がさらさらないからだ。


 竹村さんの職場でスマートメーターのブレーカーが落ちて東電から9000円をとられた顛末について、竹村さんのブログ「竹村英明の「あきらめない!」」で紹介されています。「ブレーカーが落ちても復旧しない東電パワーグリッド(東電送配電)会社」

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