市民の声や請願を受け
東京都多摩市が、市議会への政策提案(陳情のようなもの)をきっかけに、携帯電話事業者各社に対して、基地局設置の周辺住民への事前周知を求めたこと(2015年)、さらに、市議会への5G規制の陳情を受けて、再び要請することになったこと(2020年)を会報第128号でご紹介しました。事前周知が徹底されれば、ある日気がついたら自宅の目の前に基地局が建っていた-という事態は、避けられる可能性が大きくなります。
同様の取り組みは、他の自治体でも行われていましたので、ご紹介します。
東京都調布市
東京都調布市議会の2014年6月定例会に、市民から「調布市ほっとするふるさとをはぐくむ街づくり条例施行規則」に定める「周辺環境に著しい影響を与えるもの」に携帯電話基地局の設置を追記することを検討するよう求める」陳情が市議会に提出されました。審議の結果、採択されました。
採択を受けて調布市が検討した結果、携帯電話基地局からの電波は安全であるという国などの見解から、市として規則への追記はしないこととしました。しかし、市民の不安解消を図り、隣接地権者や近隣住民に丁寧かつ十分な説明を行うよう、各携帯電話事業者各社へ同年12月15日付で依頼しました。
そして、2020年3月24日、市は再び各社に要請しました。同市都市計画課によると、再度の要請については、市議会での陳情やその他の動きを受けてのものではなく、5G開始による市民からの問い合わせや不安の声が市に寄せられたことから行ったそうです。
市による要請内容は以下の通りです。
- 携帯電話基地局の設置に当たっては、隣接地権者や近隣住民に十分な事前説明を行うよう努めること
- 事前説明の対象範囲は、当該地の敷地境界線からその高さと等しい水平距離又は10mのいずれか広い方とすること
- 説明範囲外の住民等から説明の要望があった場合は、説明に努めること
- 近隣住民への説明に先立ち、携帯電話基地局の設置計画について案内図、設置図及び計画図等を都市計画課開発景観係へ送付すること
これに対して、各社からは次の主旨の回答があったとのことです。
- 携帯電話基地局を設置する際は、各社の規定に基づき、引き続き丁寧な説明を行っていく。
- 携帯電話基地局を設置する際は、各案件ごとに都市計画課開発景観係にご相談させていただく。
千葉県野田市
千葉県野田市議会の2020年12月定例会に、「携帯電話等中継基地局(5G基地局及びそれ以外も含む基地局)設置に関する条例制定についての陳情」が提出されました。
審議では、新しい風、日本共産党、市民ネットワーク、民主連合の各会派の議員が賛成の立場から、政清会、六諭会、公明党の各会派の議員が反対の立場から討論を行い、採決の結果、賛成少数で不採択となりました。
陳情は不採択でしたが、これをきっかけに野田市で検討を行い、携帯電話各社に、以下について要請しました。
- 市への事前報告
・設置場所(住所及び敷地・建屋のどこに設置するのか分かるもの)
・設置されるアンテナの大きさ及び地上からの高さ
・周辺地域の住民に対する説明と周知の内容及び実施範囲
・事業者及び代理人の連絡先 - 周辺住民への事前説明
・設置計画及び工事内容に関する事項
・当該携帯電話等基地局から発信する電波に関する事項
・その他、周辺地域の住民が説明を要望する事項
各社からは、以下の主旨の回答があったそうです。
- 市への事前報告:基地局の設置の際は、各種法令及び各事業者の規定に従い、事前に市へ相談する。
- 周辺住民への事前説明:基地局の設置の際は、各事業者の規定により、近隣住民の方々へ事前の説明を行う。
- その他:電波の安全性については、電波保護指針を遵守している旨を丁寧に説明する。
野田市のウェブサイトには「携帯電話等基地局の設置にあたって、携帯電話事業者から情報提供を受けた際は、隣接地権者及び近隣住民のみなさまへの丁寧な説明を行うよう指導してまいります」と記載されています。
携帯事業者を追及できる
要請を行った市で、携帯事業者が事前の周知もなしに基地局を設置しようとしたり、住民の質問に答えなければ「市への回答と違うではないか」と追及することができます。
一方で、基地局電波で実際に苦しんでいる方々にとっては、これらの対応では生ぬるいと感じるでしょう。その気持ちは理解できます。しかし、国が危険ではないと言っているものを自治体が規制したら、携帯事業者から訴訟などの反撃を自治体が受ける恐れがあります。自治体を支えて反撃を跳ね返せるだけぐらいの私たち市民の盛り上がりを、電磁波問題の分野で作っていきたいものです。