携帯電話基地局周辺における健康調査報告 「兵庫県川西市の健康調査と電磁波過敏症について」

加藤 やすこさん(ジャーナリスト)

電磁波過敏症
 電磁波過敏症という病気が増えている。このペースで増えると2017年に総人口の50%が発症するというグラフを、先ほど荻野晃也先生が示した。花粉症を含む鼻炎アレルギーの発症率は今43%だということを考えると、その数字が実現してしまう可能性があると思う。
 電磁波過敏症の主な症状は、不眠や中途覚醒などの睡眠障害、頭痛、めまい、集中力がなくなる、記憶力がなくなる、倦怠感、疲労感、動悸がする、頻脈、不整脈、いらいら、不安感、食欲不振、下痢、吐き気、嘔吐などがある。一つしか症状が出ない方もいれば、複数の症状を持っておられる方もいる。これは不定愁訴というよくありがちな症状で、大したことはないのかなと思われるかもしれないが、電磁波の強い環境では、こういった症状に24時間悩まされることになる。
 電磁波過敏症は1970年代に最初に北欧で、パソコン労働者の皮膚が赤くなる、かゆみ、痛みなどが報告された。
 2005年、世界保健機関(WHO)は、電磁波過敏症という新しい疾患が存在することを公式に認めたが、電磁波過敏症と電磁波との因果関係については消極的な見解を示しており、精神的な影響を示唆している。
 総務省の見解もWHOに基づいており、防護指針をすこし超えても「ただちに影響があるというものではありません」と言っている。放射線とまったく同じ言い分だ。
 専門医は発症者に以下をアドバイスしている。被曝によって体内に活性酸素が増えるので抗酸化物質(必須ミネラル、ビタミンを適度な量)を摂取すること。食事療法。入浴療法。歯の詰め物を取る。できるだけ被曝を避ける。
 携帯電話基地局の近くでは24時間のべつまくなしに被曝する。携帯電話の使用者だけでなく、胎児、赤ちゃん、高齢者、アレルギーなど病気の人もだ。
 私たちの会で2009年に発症者へアンケートをとった。発症原因について「携帯・PHS基地局」との答えが最も多く、(70人中28人)。2番目のパソコン(15人)の倍であり、非常に大きなウエイトを占めていると思う。
 2002年、米国政府の障害問題に関する委員会が、電磁波過敏症と化学物質過敏症について「アメリカ障害者法の下の障害者として認められるであろう」と、連邦政府の文書の中で公式に発表した。これを受けて、アメリカ国立建築科学研究所がIEQ(インドア・エア・クオリティ)という報告書を出した。これは過敏症の方が建物をちゃんと利用できるように、公共施設や商業施設にクリーンエアルームを作ろうということで、クリーンエアルームの条件として以下などを挙げている。
(1)禁煙、香料がない
(2)最近、改築や改装をしていない
(3)携帯電話の電源オフ
(4)コンピューターなど電気設備の電源を切るか、プラグを抜くことができる
(5)蛍光灯を切ることができる
 トイレや通路にも同様の配慮を求めている。

欧州評議会議員会議
 欧州評議会議員会議(PACE)は昨年5月、電磁波被曝の削減を求める報告書を採択し、加盟47国に勧告した。欧州評議会は主に国際基準の策定を主導しており、「刑を言い渡された者の移送に関する条約」は日本も批准している。日本はオブザーバー国として参加しているので、無関係ではない。
 報告書は、以下などを勧告した。
○長期曝露のための予防的基準(0.1μW/c㎡=日本の1万分の1。将来的には0.01μW/c㎡=日本の10万分の1)
○若者や子どもへの意識向上キャンペーン実施
○電磁波過敏症の人のために、電磁波フリーのエルあをつくるなどの対策をとる
○学校での携帯電話、無線LANの禁止
○携帯電話や無線LANなどのアンテナの位置を地方自治体、住民、市民団体と相談して決める

川西市の健康被害
 2005年12月、NTTドコモ基地局が稼働し、基地局の高さは20mだが、周囲に傾斜地があって、家によってはアンテナがちょうど目の前にあるという状況だ。2008年4月3日に電波が停止され、その後撤去された。
 私たちの会で、電波が止まる前と止まった後で、基地局から200m以内に住む住民にアンケート調査を行った。有効回答は12人(12~70歳)。症状の数、発生頻度、強さを記入してもらったら、数、頻度、強さともに、停止後は減少した(図)。
 アンケートに協力してくださった方の住宅で電場を測定したら、1階は停止前の64%に、2階は73%に減少した。このときの測定器は100KHz~3GHzで、ドコモの電波だけを測ったわけではない。ドコモの電波だけを測った報告書が京都弁護士会にあるが、そこではさらに顕著な差が出ている。

海外の疫学調査
 ポーランドのウッチ市という2番目に大きな街で基地局周辺に住む420名を対象に疫学調査が行われた。頭痛を訴える人が57%いた。距離別では100~150mのエリアに住んでいる方で最多で36.4%を占めた。記憶力の低下では、150m以上で最も多く24.4%だった。距離によって症状が違うのは興味深いところだ。
 ドイツのリムバッハ村で疫学調査が行われた。1年半にわたって住民のホルモン分析をした。すると、外的なストレスに対抗して体内で作られるアドレナリンやノルアドレナリンというホルモンが、基地局稼働後に上昇した。被曝量が高いと変化が大きいことも確認された。

基地局の情報公開
 フランス、イギリス、ドイツなどでは、基地局の位置情報をネットで公開している。しかし日本では「破壊活動のおそれがある」「企業の利益を損なうおそれがある」として位置情報は非公開だ。しかし、どこに基地局があるのか、いつ建つのかといった情報は知る権利の問題でもあるし、健康と財産を守るための必須情報だ。これまで、基地局を建設したが、反対運動のため稼働前または稼働後に、撤去または移転されたケースもあり、携帯会社にとってもデメリットだと思う。やはりきちんと情報公開をして、住民との合意を得て、どういうふうにどこに建てるべきか、そういう議論をちゃんとする必要がある。
 今、各地で基地局マップを市民が作る動きがある。札幌市でも「さっぽろ基地局探検隊」が基地局のマップをインターネットで作って公開している。基地局の位置をクリックすると、基地局の写真と詳しい住所が出る。海外では政府がやっていることだが、市民が自分たちの身を守るために情報を共有していくことも非常に大事なことだと考えている。


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