スカイツリーからのマルチメディア放送送信を知らなかった墨田区

網代太郎(新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会共同代表)

 テレビの地上デジタル放送のための電波塔として東京墨田区に建設中の新タワー「東京スカイツリー」から、携帯端末向け「マルチメディア放送」の電波も送信される見通しとなったことについて、「新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会」が、環境影響評価のやり直しの必要性などを質した公開質問状を9月9日、墨田区長あてに提出しました(当会報前号参照)。その回答が10月18日付で示されました。

 視聴者不在の中、現在のアナログテレビ放送が無理矢理終了させられた後に空くVHF帯電波を利用する「携帯向けマルチメディア放送」を2012年4月から開始し、その受託放送事業者を1社とする方針を総務省が示し、NTTドコモ陣営などによる「株式会社マルチメディア放送」と、KDDIなどによる「メディアフロージャパン企画株式会社」が、その1社の枠を争いましたが、9月8日に電波監理審議会が、NTTドコモ陣営を選定する答申をまとめました。

情報が入らない墨田区

 公開質問状への墨田区の回答内容で、特に驚いたことは、9月8日に答申が報道されるまで、マルチメディア放送の電波がスカイツリーから出されることを、墨田区は一切把握していなかったことです。回答書には「㈱マルチメディア放送が決定されたことは…新聞で初めて知りました」と書いてありますが、担当者に確認したところ、NTTドコモ陣営が東京スカイツリーを利用する計画であると決定前から説明していたことも、まったく把握していませんでした。総務省が事業者の公募を始めた6月の時点から、応募したNTTドコモ陣営はこのことを表明し、報道されていた(1)にもかかわらずです。
 当会は「スカイツリーの電磁波については区民の不安が強く、予定されていなかった電波が出る恐れがあるとの情報を区が事前に把握していなかったのは問題である。また、このことについて区に情報提供しなかった事業者・東武鉄道側の姿勢も問題ではないか?」と質問しました。これに対して、墨田区新タワー調整課の担当者は、「たとえば、工事車両が1日100台の予定から105台に増えたとか、そうした細かいことまで全部東武に報告させる必要があるのか」という趣旨の発言をしました。

「東武に報告させる必要ない」

 日本共産党墨田区議団が今年5月に行った区民アンケートによると、新タワーそのものへの賛成252名、反対128名、わからない9名で、賛成が反対を上回りました。新タワーの建設が始まれば、自分たちに良いことが起こる保証がなくても、願望として期待したくなるのは人情でしょう(その願望は裏切られる恐れが大きいと思いますが)。その一方で、新タワーで心配している問題として、交通渋滞282名に次いで、電磁波など健康被害を167名が挙げました。電磁波への不安は、依然として根強いものがあるのです。地デジのためとされている新タワーから出る電波が増えていく恐れがある事案について、工事車両100台が…程度の「細かい」問題だと認識している区とのギャップはあまりにも大きいのです。
 当会は「区民による電磁波への不安が強いために、法律では定められていない電磁波についても環境影響事前調査の項目に含めたという経緯を忘れてはならない。区として、その姿勢は一貫させるべきだ」と訴えました。
 また、回答の中で「東武タワースカイツリー㈱からは、環境影響評価書で想定していたテレビ局・ラジオ局の中には、実際には東京スカイツリーを利用しない放送事業者もあるため、今回のマルチメディア放送が新たに加わった場合でも、当初の評価書で示した電波強度を超えるものではない旨の説明を受けております」と書かれていたため、「実際には東京スカイツリーを利用しない放送事業者は、具体的にどこか?」と質問したところ、区の担当者は「東武と個別事業者の契約内容は把握できない」と回答。「事業者名に踏み込めないとしたら、環境影響評価書に示された数字の中でどれがなくなるのか、そしてマルチメディア放送が加わっても本当に増えないのか、区が確認する必要があるのではないか」と主張しましたが、区はまったくやる気を見せませんでした。
 区の担当者が「民間事業なので行政の関与は限られる」という趣旨の発言を繰り返したので、神奈川県鎌倉市の携帯電話基地局条例について説明したところ、当会と対応した担当者全員(環境安全課長、新タワー調整課長を含む)が、この条例を知りませんでした。

(1)たとえば6月28日掲載ITmediaプラスディ「ISDB-Tmmか、MediaFLOか?―携帯端末向けマルチメディア放送の公開説明会」

墨田区からの回答

22墨産新タ第102号
平成22年10月18日

新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会
共同代表 大久保 貞利 様
  〃    網代  太郎 様

墨田区長 山﨑 昇

東京スカイツリーに係る公開質問状への回答について

 日頃から、区政に御理解、御協力を賜り厚くお礼申し上げます。
 平成22年9月9日付で貴会から送付されました、東京スカイツリーに係る公開質問状に対し、下記のとおり回答します。

1 ㈱マルチメディア放送が東京スカイツリーから電波を送信する件についての、墨田区の情報把握状況について
 携帯電話向け新放送の電波事業者についてNTTドコモグループの㈱マルチメディア放送が決定されたことは、平成22年9月9日付の日本経済新聞で最初に知りました。その内容については、他の報道や㈱マルチメディア放送のホームページで発表されている以外には、特に知り得ている情報はありません。
 なお、東武タワースカイツリー㈱からは、現在、㈱マルチメディア放送と予約契約の締結に向けた協議中であると聞いております。

2 ㈱マルチメディア放送による電波発信の、東京スカイツリーに係る環境影響評価への反映状況について(反映されていない場合の、環境影響評価のやり直しの是非を含む)

 東京都環境影響評価条例を所管する東京都からは、電波(電磁波)の項目は法定の環境影響評価項目には入っていないため、今回の事例は環境影響評価の変更事項等には該当しない旨の見解を確認しております。
 しかし環境影響評価の項目ではないにしても、電波(電磁波)に対する不安を持つ住民もいるため、スカイツリーの環境影響評価書においては電波強度についても評価を行っておりますが、その中では総務省「電波防護指針」の基準は満たしており、事業者には今後もこれを遵守することを表明しております。
 なお、東武タワースカイツリー㈱からは、環境影響評価書で想定していたテレビ局・ラジオ局の中には、実際には東京スカイツリーを利用しない放送事業者もあるため、今回のマルチメディア放送が新たに加わった場合でも、当初の評価書で示した電波強度を超えるものではない旨の説明を受けております。

3.東京スカイツリーから発信される電波の強さが、イタリアや中国の規制値または指針値を上回るレベルであることによる、周辺住民の健康に及ぼす危険性について

 電磁波による人体の影響につきましては、以前いただきました質問状のなかでもお答えしました(平成18年1月27日)が、総務省の「電波防護指針」における基準値の遵守により安全性が確保できるということが、世界保険機構や国際非電離放射線防護委員会等国際機関の共通認識になっていると考えております。
 また、ご質問2にも関連いたしますが、環境影響評価書では、電波環境の事後調査を事業者が行うこととなっております。したがいまして、区としては以前の公開質問状でも回答しました(平成19年12月3日)ように、定期的・適切な電波環境の測定の実施を事業者に指導していくことが、区民の安全を守ることにつながると考えております。

4.テレビの地上デジタル放送、および㈱マルチメディア放送の他、東京スカイツリーからの送信が決定している電波の情報把握状況について

 東京スカイツリーの運営は東武鉄道グループによる民間事業であり、東京スカイツリーにおける電波の利用についての個別具体的な企業との契約・内容等は、区は報道発表や事業者のホームページ等で公表・公開された情報以外は存じておりませんことをご理解願います。

<<連絡先及び担当>>(略)


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