測定の現場で起こっていること 吉富先生の講演をもとに

 先日、当会が開催した吉富邦明先生の講演はとても好評で、かつ密度の濃い内容でした。ここでは当会で測定を担当している鮎川が吉富先生の講演で、実際の現場とリンクしているところや、現場で感じたことなどについて紹介します。

総務省の説明と現場の実情
 吉富先生のお話の中で、基地局周辺の電波(電磁波)の実態についての解説がありました。総務省は「アンテナは指向性があり、数百m先の地点を中心に電波が進む」ので「アンテナに近ければ電波が強くて、遠ければ弱いわけではない」「アンテナのある建物の真下でも基準値をはるかに下回る」との説明に関して、実態にあまり即していないとのお話でした。
 測定をしていて、この件は全くその通りで、同時に実はとても苦慮しているところでもあるのです。基地局は大平原の中にポツンと1本建っているわけではありません。周囲にビルがあったり、マンションがあったりします。その影響で突然高い数値を示すところや、数値の高い地点のすぐ近くであるのに逆に低い値を示す場所があることもあります。また、アンテナのある建物の真下で非常に高い数値を示したケースも多くあります。
 それ故、それらの複雑な状況を考慮したうえで、さまざまなポイントを丁寧に測定する方法を取っています。総務省の説明を信じて、ここは問題ないだろうと測定を怠ると、とんでもない事態に陥ることがあります。
 測定の現場では、なぜここがこんなに高い数値を示すのだろうかというポイントも多くあります。そこでその周囲を測定したり、シールド材を置いたりして、電磁波の発生方向や強弱をさまざまな方法で突き止めています。
 ある程度の予測はつきますが、予測だけでは分からない高い地点があったり、低い地点があったりするなど、正確な状況は測定をしてみないと分からないのです。

目の前に苦しむ人がいる
 吉富先生はマイクロ波聴覚効果について、専門的な見地も含め詳しく解説してくださいました。難しい内容をかみ砕いた、分かりやすい説明に多くの方が理解できたのではと思います。
 印象的だったのは、その解説に続いてお話しされた「大事なことはメカニズムよりも、延岡の人たちは実際に耳鳴りがしているということです」という言葉です。
 メカニズムを解明していくことは非常に重要です。メカニズムが分かれば対処法や予防法が分かる可能性が出て来るとも考えられるからです。ただし、現実には目の前に耳鳴りなどの症状に苦しむ人がいるのです。
 また、数値が仮に低くても同様に耳鳴りなど、体調不良に苦しむ人もいるのです。これもまた測定の現場で感じることです。測定をして数値が基準値以下であっても、電磁波を感じる人がいます。だから基準値以下だから問題ないですよとは言えません。測定を依頼された方が過敏症である場合は、比較的低い値であってもあらゆる場所で電磁波を感じているので、家の中で一番電磁波の影響の少ないところや、電磁波の対処ができる場所を探すことになります。吉富先生が例に出した段ボール箱にアルミホイルを貼り付けて、その中に頭を入れて寝るという方法もその一つです。
 つまり、測定の数値だけで、ここは低いから大丈夫とか、基準値以下だから問題ないなどとは言えず、その数値とそこに住む人の状況などを考慮しないとならないのです。

基地局周辺の電磁波による健康問題は深刻
 吉富先生がまとめでお話された、「基地局周辺の電磁波による健康問題は深刻である」という言葉は非常に重く感じました。 当会に測定を依頼する人にはいくつかのパターンがあります。大きく分けると1つ目は単に電磁波の影響が気になりはじめ、自分の家は大丈夫であるかを確かめるため、2つ目は周囲に携帯電話基地局ができたが、うちには影響があるかを確かめるため、そして3つ目は家族の誰かが急に体調が悪くなったが、それは近くの携帯電話基地局の影響だと思うが、本当にそうなのかを確かめるためです。
 この3つ目の場合は電磁波の数値は高く、あるいは数値は高くなくても家族の誰かが過敏症に苦しんでいる場合が多いのです。その場合も測定で家の中で一番影響の低い場所を特定し、さまざま対処法をお伝えします。しかし、応急的に対処したところで過敏症に苦しんでいる人は劇的にはよくなることはありません。しっかり対処してもよくて徐々によくなっていく程度です。そして、近くにある基地局と対峙して毎日生活しなければならないです。
 自分の体の変化を基地局からの電磁波の影響ではないかと疑い、こうして測定を依頼してくる場合は、何らかの対処ができますが、潜在的にはもっと多くの人が実は苦しんでいるのではと思います。原因が分からず耳鳴りがするなどの体調不良を訴える人がもっと多くいるだろうと考えると、基地局周辺の電磁波による健康問題は本当に深刻であると思います。

電磁波測定をするのも対処法の一つ
 当会では電磁波測定(有料)を行なっております。低周波については、比較的安価な測定器(4万円程度)でも正確に測定できますが、高周波については精度の高い測定器を使わないと、発生源が特定できないとか、家の中で一番電磁波の低い場所を探せないなど、重要なポイントを見逃す恐れがあります。
 まずは測定して電磁波の発生源を突き止めることも対処法の一つです。【鮎川哲也】

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