医療機関内携帯電話使用規制緩和に反対(2014.7電波環境協議会に)

 以下の理由により、「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針(案)」(以下「新指針案」という)に反対し、「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」(以下「旧指針」という)の維持を求める。

1.離隔距離は危険
 旧指針は、手術室、検査室、その他の区域というエリアごとの使用ルールとしていた。これに対し、新指針案は、エリアごとの使用ルールの形を残しつつも、手術室等を除き使用制限を大幅に緩和し、医用電気機器から1m程度離すという「離隔距離」をルールの考え方の中心に置いている。しかし、離隔距離では、うっかりミスや、または、医用電気機器を使用中の患者の存在に気づかないなどにより、思いがけない事故を誘発しかねない。

2.第二世代の携帯電話サービスの廃止、医用機器のEMC基準適応によっても誤作動は発生している
 新指針案および「医療機関における携帯電話等の使用に関する報告書(案)」(以下「報告書案」という)は、携帯電話使用ルールを旧指針より緩和する理由について、第二世代の携帯電話サービスの廃止、医用機器のEMC基準適応等を挙げているが、報告書案記載の実験結果が示す通り、それでもなお医用機器が深刻な影響を受ける場合がある。人の命を左右しかねない医療機関にあっては、より安全側に立った対応を取るである。新指針は患者及び家族のQOL向上も緩和の理由に挙げているが、命あってこそのQOLである。

3.電磁波過敏症発症者の受診・入院が困難になる
 携帯電話など生活環境中の電磁波に反応して様々な症状に苦しむ電磁波過敏症の方々の中には、医療機関内の無線LANなどの影響を受けて受診・入院に困難をきたしている方々もいる。携帯電話使用ルール緩和により、電磁波過敏症の方々の受診・入院が一層、困難になる。

4.医療機関内の電波利用は促進でなく抑制すべき
 携帯電話や無線LANから発信される電波を含む高周波電磁波について、2011年5月、国際がん研究機関(IARC)は、「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」(グループ2B)と評価した。急性影響を引き起こすほどには強くない電磁波であっても、長期間にわたる繰り返しの被曝は健康影響を引き起こすのではないかと、世界中の研究者が議論している。海外の国や自治体の中には、予防原則の観点から、電磁波について国際基準より厳しい基準値や指針値を設定したり、携帯電話のより安全な利用法について市民に周知を図っている所が多い。報告書案は無線LANネットワークを利用した医療機関の「先進事例」を紹介して「医療ICT化」のメリットを強調しているが、ICT化をするのであれば、有線ネットワークによって行うべきである。

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