スマートメーターとは何か、その問題点

以下に掲載している記事は、会報第99号掲載記事を加筆修正したものです。2016年5月に東京都清瀬市で開かれた学習会、同年6月に東京都多摩市で開かれた学習会での報告内容などを反映しています(2016年6月19日修正)。

網代太郎(電磁波問題市民研究会事務局)

 私は今日は講師という偉そうな立場ではなく、これまでスマートメーターについて自分で調べたり、会の内外の方々から教えていただいたことを、ご報告させていただきます。情報を共有して、皆でこれからどうすべきかを考えていければと思います。
 特に断らない場合は、東京電力の例をご紹介しますので、他の電力会社では若干事情が異なる場合があるかもしれません。

電気メーターの種類
 電気メーターは、3種類あります(1)。

東京電力「スマートメーターの原価算入について」2012年6月12日

 ①機械式(アナログ)メーター 一番よく見るタイプです。一日を通して同じ単価の電気を買うときに使います。東京電力による報告例によれば、メーター1台の値段は新品5400円、中古2400円です。
 ②(スマートメーターでない)電子式メーター 時計機能があって、夜間は昼間より単価が安い電力を買うなどのときに使います。メーター1台の値段は同様に、10300円。
 ③スマートメーター 電気料金単価に関係なく使えます。また、太陽光発電設備などがある家庭では、これまで、電力会社から買った量を測る電気メーターと、電力会社へ売った量のメーターと、それぞれ必要でしたが、スマートメーターは1台で双方向の電力を測ることができます。メーター1台の値段は1万円弱です(2)。

スマートメーターの機能
 スマートメーターを設置すれば比較的すぐに実現できる機能は以下の通りです。

  • 各家庭等の電気使用量を30分ごとに電力会社へ送信
  • 電力の供給開始・停止の遠隔操作
  • 家庭内の「HEMS(ヘムス)という装置と接続した場合、消費者が電気使用量の推移等を確認できる「見える化」

 将来的には、HEMS経由で対応する「スマート家電」等と接続した場合、外部から家電等を操作できるようになる、とされています。

スマートメーターの「メリット」
 スマートメーターのメリットとして国が説明しているのは、主に以下の通りです。

  • 遠隔操作による電力供給開始・停止や遠隔検針による電力会社のコストカット
  • 「見える化」による節電意識の向上#
  • 家の外からの家電操作(による節電)#
  • きめ細かい料金設定による節電
  • 30分ごと(又はリアルタイム)の電力使用データを利用した新ビジネス

 ただし、上記の#印をつけたものは、HEMSやスマート家電を導入した場合に限られます。
 スマートメーターをすべての需要家(=消費者)に事実上押し付けようとしているのにもかかわらず、経産省のウェブサイトには、一般消費者向けにスマートメーターを説明するページが見当たりません。これは、驚くべきことだと思います。かろうじて「スマートコミュニティ」についての説明があり、以下の通り書かれています。
 「これからは、太陽光や風力など再生可能エネルギーを最大限活用し、一方で、エネルギーの消費を最小限に抑えていく社会が必要です。それを実現するのが家庭やビル、交通システムをITネットワークでつなげ、地域でエネルギーを有効活用する次世代の社会システム。スマートコミュニティです」(3)
 このスマートコミュニティを実現する道具の一つがスマートメーターである、ということのようです。
 経産省はスマートコミュニティが実現したときの姿を次のように描いています(4)。

  • 暑い夏、冷房の利用で電力需要が供給予測を上回ったとき、コントロールセンターから信号を出して、あらかじめ設定していたプログラムに基づき(スマートメーター経由で各家庭内のエアコンなどを)省エネモードに切り替えたり停止させる
  • 各家庭の電気自動車の蓄電池から電気を取り出すことで家庭内で必要な電気をやりくりする
  • こうして、電気の使用量抑制に協力してくれた家庭は、省エネやCO2削減に貢献したことで、電気代の割引を受けることができる

 経産省が言うスマートコミュニティ・スマートメーターのメリットに対しては、以下のような疑問があります。

  • 再生可能エネルギーの最大限の活用のために、「スマートコミュニティ」がもっとも適切な手段なのか?
  • 仮に上記の通りだとしても、個人宅への「スマートメーター」設置は不可欠なのか?
  • 省エネのために複雑なシステムを導入するのではなく、他にやるべきことがあるのでは?
  • 「コミュニティ」の主役である住民が不在。上から一律に押し付ける構想

 以上のような「そもそも必要か」等については今日は、これ以上触れません。

スマートメーター網の全体像

図1 スマートメーターのAルート、Bルート、Cルート(5)

図1 スマートメーターのAルート、Bルート、Cルート(5)

 スマートメーター網は、A~Cの3ルートで構成されることが予定されています(図1)。
 Aルートがメーターと電力(送配電)会社との間の通信ルートであり、今私たちが気にしているのが、ここです。すべての需要家に関係があります。
 Bルートはスマートメーターと家庭内との間の通信ルートで、これは家庭内にHEMSを設置した家庭だけに関係あります。スマートメーターとHEMSの間の主な通信手段はWi-Fi(無線LAN)であり、やはり電磁波です。
 Cルートは、「電力(送配電)会社」と「新電力小売会社や、電力事業と関係のない第三者の民間事業者」との間の通信ルート、及び「家庭等」と「新電力小売会社や、電力事業と関係のない第三者の民間事業者」との間の通信ルートです。

国の方針
 エネルギー政策基本法に基づき政府が策定する「エネルギー基本計画」が2010年6月に閣議決定され、同計画に「原則全ての需要家にスマートメーターの導入を目指す」と記載されました。その後、2014年に閣議決定された同計画でも「2020年代早期に、スマートメーターを全世帯・全事業所に導入する」とされています。

プライバシーの侵害
 スマートメーター設置のデメリットについて、一つずつ見ていきます。
 30分ごとの電気使用量を電力会社に知られること自体がプライバシーの侵害と言えます。電気使用量の推移によって、その家庭の生活パターンが知られてしまうからです。
 また、その情報が漏洩すれば、空き巣などの犯罪被害に遭う恐れもあります。当然、国や電力会社はセキュリティ対策をとっていると言います。しかし、政府機関や大企業のウェブサイトが攻撃され個人情報が漏洩するケースが後を絶ちません。セキュリティのための技術を開発しても、その裏をかく方法が編み出されるのです。

HEMSデータを利用したビジネス
 先程、スマートメーターの「メリット」の一つに「30分ごと(又はリアルタイム)の電力使用データを利用した新ビジネス」を挙げました。経産省は、家庭のHEMSからリアルタイムの電気使用量データを第三者が取得、利用することによる新しいビジネスを例示しています(6)。たとえば「高齢者見守りサービス」。独居老人宅の電気使用量データを業者が取得して、普段起床している時刻になっても電気が使われない、あるいは普段寝ているころなのに電気が使われていたら、スタッフが様子を見に行ったりする、というビジネスのようです。また、宅配便業者が電気使用量データを取得して、留守なら配達しない、在宅なら配達する、というサービスも示されています。
 このようなサービスを便利と思う人もいるでしょう。しかし、電力使用量データを第三者が取得することで、プライバシー侵害の程度や情報漏洩の恐れは、いっそう大きくなります。
 オランダでは、プライバシー及びセキュリティ上の理由から、2009年4月に議会上院がスマートメーター導入義務化案を否決しました。その後、議会は2010年11月にスマートメーターの自主的導入に対する法的枠組みを規定しましたが、義務化でないので、消費者はスマートメーターを拒否できます。スマートメーターを設置した場合も自動検針機能の一部又は全部を拒否できます(7)。消費者の選択権を保証する極めて健全な政策だと思います。

大停電の恐れ
 「情報セキュリティの世界的権威」である」英国ケンブリッジ大学コンピュータ研究所のロス・アンダーソンらは、以下のように述べています(8)。

  • サイバー攻撃であれ、単なるメーター内のソフトのエラーであれ、その結果としてスマートメーターに不具合が生じると、電力やガスの供給の停止が大規模に起きる恐れがある
  • 遠隔スイッチ操作のコマンド(司令プログラム)、遠隔のソフト更新、複雑な機能性といった特徴が、まさに恐るべき脆弱性をもたらしてしまっている

 先程述べたように、スマートメーター設置により遠隔操作で電力供給をストップできます。外部からのサイバー攻撃だけでなく「上司に怒られてばかりでおもしろくねえ!」とかヤケクソになった電力会社員がスイッチを操作して100万戸を停電させてしまうことも理屈としては可能です。

スマートメーターの健康影響調査
 オーストラリアではスマートメーターについての政策が州ごとに異なり、スマートメーター設置が義務化されたビクトリア州では大勢の住民が健康被害を訴えました。フレデリカ医師が、健康被害を受けたと自己申告した住民92名の症状を聞き取ったところ、症状は多い順に不眠症、頭痛、耳鳴り、疲労、認知障害、知覚異常、めまい、でした。また、大部分の患者は、スマートメーター設置以前に電磁波過敏症を発症してはいなかったとのことです(9)。
 また、米国のウェブサイト(10)などにも、健康影響の報告が多数掲載されています。

スマートメーターの通信方式

図2 スマートメーターのAルートの通信方式(11)

図2 スマートメーターのAルートの通信方式(11)

 スマートメーターの通信方式は図2の通り三つあります。住宅地などで採用されているのが「無線マルチホップ」方式で、メーター同士がバケツリレーのように互いに電波を送受信して、「コンセントレーター」という携帯電話基地局のような施設に情報を集めます。コンセントレーターからは携帯電波や有線を経由して電力会社側へ情報を伝えます。
 集合住宅ではPLC方式が採用されることもあります。これは電気配線の中にデータを流す方法です。有線通信なのですが、データを流すことで電気配線から電磁波が漏洩します。
 三つ目は携帯電話の電波を利用する方式です。
 各電力会社は、これら三つの方式を「適材適所」で採用すると説明しています。ただし、関西電力と沖縄電力は携帯電話方式を利用せず、九州電力は無線マルチホップ方式を利用しないとのことです(2014年12月時点)(12)。

表1 スマートメーターの電波
無線マルチホップ方式 携帯電話方式
出力
周波数
関西電力以外:特定小電力=20mW、920MHz帯
関西電力:無線LAN、PHS=非公開
非公開
通信頻度 非公開 非公開

 スマートメーターから、どれくらいの出力でどのようなな電波がどのような頻度で出ているのかは表1の通り、ほとんど非公開です。電力会社は非公開の理由を「セキュリティ」と言っていますが、公開した場合どのようなセキュリティ上の問題があるのかを質問しても、答えません。

表2 電波の強さ
送信出力
空中線利得
電力密度
日本・米国・カナダの基準値(30MHz~300GHz) 1.8GHzの場合1000μW/c㎡900MHzの場合600μW/c㎡
ICNIRPによる国際指針値、英国・フランス・ドイツ・オーストリア・スウェーデン・オーストラリア・韓国・ブラジルの基準値 1.8GHzの場合900μW/c㎡
900MHzの場合450μW/c㎡
ロシア・ポーランド・ブルガリアの基準値 10μW/c㎡
スマートメーター 無線マルチホップ方式(関西電力以外。計算値) 20mW
3dBi
距離30cmで 最大3.52μW/c㎡
距離1mで 最大0.31μW/c㎡
スマートメーター 携帯方式(第3世代の場合。計算値) 0.15~0.3Wと仮定
-2dBiと仮定
距離30cmで最大 8.36~16.73μW/c㎡
距離1mで 最大0.75~1.50μW/c㎡
宮崎県延岡市大貫町(実測値)(13) 最大0.1~22.0μw/c㎡
スイスの基準値 1.8GHzの場合9.5μW/c㎡
900MHzの場合4.2μW/c㎡
ブリュッセル(ベルギー)の基準値 1.8GHzの場合4.7μW/c㎡
900MHzの場合2.4μW/c㎡
欧州評議会勧告値 0.1μW/c㎡
携帯電話で通話が可能な最小値(吉富邦明・九州大教授による800MHz帯での実験例)(13) 0.00002μW/c㎡

 電波の強さを計算してみました(表2)。計算値はメーターの周囲に何もない場合の値です。障害物があればもっと小さくなるし、反射したり回り込んだりした電波が集まってホットスポットができれば、もっと大きくなるでしょう。電波の非熱作用による健康影響の恐れも考慮して予防原則を取り入れている国や自治体の基準値や、携帯電話基地局周辺で健康被害の訴えが多数出た宮崎県延岡市大貫町での実測値などと比べて、決して安全な値とは言い切れないと思います。
 米国カリフォルニア州では、スマートメーターからの電波による健康被害を懸念する消費者がスマートメーター反対運動を展開しました。その結果、2011年9月、CPUC(カリフォルニア州公益事業委員会)は、同州大手電力各社に対して家庭部門でのスマートメーター導入に際し、消費者が拒否する場合はアナログメーターでの計量を続けるよう指示しました(14)。アナログメーターへ戻す場合は、初期費用と追加の月額料金がかかることが問題ですが、一律に強制しようとするするよりは、まともでしょう。

アナログメーターの在庫がない?
 スマートメーターを拒否したい需要家に対して「アナログメーターは製造していないので、在庫はない」というのが電力会社側の常套句になっています。しかし、本当でしょうか?
 「日本電気計器検定所」という会社があります。これは日本電気計器検定所法に基づいて設立された経産省所轄法人です。同社の広報誌『くらしと検定No.3』(2011年6月)には、以下の通り書かれています。
 「期限が切れた電気メーターは、その多くが再利用されています。オーバーホール(分解、洗浄、部品交換)をして、その後検定を受け、合格したものだけが再度検定有効期限まで使用されます」「一般家庭の電気メーターはトータルで30年程度使用されることになります」
 メーターは設置してから有効期間内の10年以内に交換されますが、一部は再利用が可能であり、中古のアナログメーターがたくさんあると考えられます。

新品アナログメーターも製造中
 一方で、新品のアナログメーターは、電力会社が言うように「製造中止」されたのでしょうか。すべての新品電気メーターは、メーカー自身か、上記の会社・日本電気計器検定所で検定を受けなければなりません。同社東京本社検定部に問い合わせたところ、「三菱電機、大崎電気は、機械式メーター製造を続けている」とのことでした。国が全需要家の電気メーターをスマートメーターに替えようとしている中でも、アナログメーターの需要があるのです。主な需要は「子メーター」です(子メーターに気付くきっかけも東さんがくださいました)。

図4 子メーター(15)

図3 子メーター(15)

 貸しビル、アパートなどでは、各室の電気メーターをすべて電力会社が検針して電力会社が直接各室へ料金を請求する所がある一方、電力会社はビルやアパート全体で使った電力量だけを検針して料金をビルオーナー側に一括請求する所もあります。後者の場合、オーナー側が一括して支払った電気料金を各室の使用量に応じて配分するために用いられるメーターを子メーターいい、電力会社が検針するメーターを親メーターといいます。親メーターも子メーターも、モノとしては同じ電気メーターです。
 子メーターも通常のメーターと同様、有効期間内の交換が法的義務です。通常のメーターは電力会社が交換してくれるし、交換時に費用を支払う必要がありません。しかし、子メーターはオーナー側が(交換業者に発注して)交換しなければなりませんし、交換費用もオーナー側負担です。冒頭で示したように、アナログメーターなら新品5400円、中古2400円程度で買えるのに、スマートメーターは約1万円します。子メーターはオーナー側が検針するので、スマートメーターの通信機能は無意味です。交換業者に「アナログメーターはありません。スマートメーターを買ってください」と言われたら、オーナーは「無駄金を使わせる気か、冗談じゃない」と怒るでしょう。
 交換業者に電話で尋ねたところ「スマートメーターは高価なので、子メーターは機械式(アナログ)メーターにするお客がほとんど。機械式メーターをメーカーに発注して(在庫不足で)入ってこないということはない。もし将来スマートメーターの価格が下がりメーカーが機械式メーターを作らなったならば、子メーターもスマートメーターになっていく可能性もある」と教えてくれました。

電力自由化にスマートメーターは不可欠ではない
 4月から、電気をどの電力小売業者から買うのか選べるようになります。業者変更の際は「スマートメーターの設置が必要になる」と国も電力会社も言いますし、新聞などもそう報じています。しかし、その理由はほとんど説明されません。
 資源エネルギー庁に尋ねると、小売業者の変更(スイッチング)の際に「スマートメーターの設置が必要になる」理由は二つありました。一つは「インバランス料金の精算」、もう一つは「同時同量支援データの提供」です。

インバランス料金
 電気というものは、一般的な商品とは違い、貯めておくことが難しく、また、重要なライフラインなので「売り切れました。停電します」というわけにもいきません。時々刻々と変動する需要量に合わせ、供給量をピッタリ一致し続ける「同時同量」を行う必要があります。電力会社が独占的に供給していた時代は、各家庭などで電力をどれくらい使われているかを把握しなくても、電気の周波数の変動が一定の範囲内に収まるよう供給量を調整することによって、需要と供給を一致させることができました(電気の需要と供給のバランスが崩れると、周波数が変動します)。
 電力自由化により、新電力が参入した後は、新電力各社がそれぞれ自分たちの顧客との間で同時同量を行うことが原則になります。ただ、電力会社と比較して扱う電気量が少ない新電力にとっては瞬間瞬間で一致させるのは困難であるため、30分間ごとの総量を一致させれば良いことになっています。また、実際に使用される時間の1時間前までに提出する需要の計画値と実際の需要を一致させれば良いことにもなっています(これを「計画値同時同量」と言います)。同時同量が達成できなかった場合の電気の過不足分のことを「インバランス」と言います。
 新電力は計画値に応じた供給を行いますが、実際の需要が計画値を上回り供給が不足するインバランスが発生した時には、一般送配電事業者(電力会社)が発電会社から電気を買って不足分の電力を補います。逆に実際の需要が下回った場合は、一般送配電事業者が余剰分を引き取ります。過不足分について新電力と電力会社の間で精算する電気料を「インバランス料金」と言います。
 インバランス料金は、電力小売全面自由化に伴い、従来の固定価格から、市場連動価格になりました。このため、30分ごとにインバランス料金を精算する必要があることから、消費者の30分ごとの電気使用量を把握する必要があり、スマートメーターが必要になるという理屈です。

ロード・プロファイリング
 海外へ目を向けると、スマートメーターを導入する以前から電力自由化をしている国や、スマートメーターの全戸設置を目指さずに電力自由化を行っている国は、たくさんあります。そのような国では、サンプルデータを用いて消費者グループの消費パターンを推計する「ロード・プロファイリング」という方法を採用しています。「この手法を用いることによって、需要予測の透明性・中立性・精度の向上を図るとともに(略)通常の(アナログ)メーターのままで推計された需要をもとにインバランス決済を行うことが可能となる」(16)と、資源エネルギー庁が作成した資料の中で説明されています。
 また、スマートメーターを設置していない家庭が新電力と契約した場合に、月単位の使用量でインバランス料金の精算を行うことが可能であると国は認めています(17)。
 スマートメーターでなければインバランス料金の精算ができないというわけではないのです。

同時同量支援データ
 新電力各社は30分間の電気需要計画値を、1時間前までに提出します。その日の予想最高気温などの自然条件、曜日などの社会条件から、過去のデータも活用して分析を行い、できるだけ計画値と実際の差が小さくなるように(インバランス料金が少なくなるように)計画を立てます。しかし、予想できなかった天候の急変などで、需要が想定外の動き方をすることがあります。そのため、スマートメーターから送られてくる30分ごとの実際の電気使用量である「同時同量支援データ」をもとに、新電力は計画を練り直すことができます(ただしシステムの制約から、スマートメーターから新電力へデータが届くまでに最大60分かかります)。この同時同量支援データの提供が、新電力との契約にスマートメーターが必要だとされる、もう一つの理由です。
 同時同量支援データの提供のためにスマートメーターが必要だとしても、一軒一軒の家庭の使用量データすべてを漏れなく集めなければならないでしょうか。全体としての傾向が見えるデータであれば良いわけなので、同時同量支援データの提供が必要だとしても、スマートメーターを拒否したい需要家にスマートメーターを強制すべき理由にはなりません。
 付け加えれば、インバランス料金の精算の項で述べたことと同じですが、スマートメーターを導入する以前から電力自由化をしている国や、スマートメーターの全戸設置を目指さずに電力自由化を行っている国は、たくさんあります。そのような国でも、同時同量を行うことができているのです。

行動の提案
 今後の行動について、みなさんに提案することで、まとめにします。

  • 国や電力会社等に、電波の出力・周波数・通信頻度・実測値等の公表を求めましょう。スマートメーター設置を拒否したい需要家は拒否できることを求めましょう。
  • 国や電力小売業者に、スマートメーターを設置しない需要家が小売業者を変更できるよう求めましょう
  • 「スマートメーターの在庫はない・もう製造していない」「電力小売会社の変更はスマートメーター設置が必要」というような、国や電力会社の情報操作(ウソ)に対抗するため、引き続き情報交換をしていきましょう

(1)東京電力「スマートメーターの原価算入について」2012年6月12日
(2)東京電力「スマートメーター導入に向けた取り組み状況について」2013年11月26日
(3)(4)経産省「スマートグリッド・スマートコミュニティとは」
(5)資源エネルギー庁電力・ガス事業部「スマートメーターの導入促進に伴う課題と対応について」2014年12月9日
(6)経産省商務情報政策局情報経済課「HEMSを通じて取得した電力利用データを利活用した新ビジネスの創出の検討について」2014年3月17日
(7)三菱総合研究所「スマートメーターの導入・活用に関する各国の最新動向」 2013年11月
(8)Ross Andersonら「Who controls the off switch?」
(9)Frederica Lamech「Self-reporting of symptom development from exposure to radiofrequency fields of wireless smart meters in victoria, australia: a case series」
(10)EMF Safety Network
(11)東京電力「スマートメーター仕様策定・調達に関わる取組概要について」2013年9月11日
(12)資源エネルギー庁電力・ガス事業部「スマートメーターの導入促進に伴う課題と対応について」2014年12月9日
(13)吉富邦明・九州大学教授による講演「携帯基地局周辺の電磁波と健康被害」電磁波問題市民研究会主催2015年2月14日
(14)三菱総合研究所、前掲資料
(15)経産省関東経済産業局「証明用電気計器(子メーター)の検定について」
(16)資源エネルギー庁「系統利用制度変更案(別添 資料集)」
(17)資源エネルギー庁「契約の変更(スイッチング)手続~前回御指摘事項等について~」

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