スマートメーターで東電と交渉 通信部を外したら再び付けることはないと明言

東京電力パワーグリッドとの交渉=11月29日、同社

 スマートメーターについて当会と東京電力パワーグリッド(東電)との話し合いが2019年11月29日、同社で行われました。前回5月9日以来、半年以上が過ぎてしまいました。もっと早期に行うことを求めていましたが、台風による大規模停電などに全社で対応する必要があったとして、この時期までずれ込みました。
 この日は当会事務局長の大久保、当会事務局の網代が参加。東電はスマートメーター推進室企画グループ・Sマネージャーら4人が参加しました。
 当会があらかじめ提出した要求書の項目に沿って、進められました。
 「スマートメーターを強制しない」と言いながら、スマートメーター以外の選択肢を認めない東電の矛盾を、当会はしつっこく突きましたが、東電は逃げ回りました。今回の成果としては、一度スマートメーターの通信部を外したら、次のメーターの交換の際にも通信部はつけない、という言質を得たことです。私たちはあくまでもアナログメーターを要求し続けますが、電磁波過敏症の方々が現実に被曝する電波を減らすためには重要です。
 また、通信部を外した場合にも30分ごとの電力使用量データを東電は取得するのか、と質問してみましたが、担当者もあいまいなようだったので、今後あらためて質問したいと思います。
 さらに、スマートメーターで料金が2~8倍に跳ね上がった問題については「プライバシー」を理由に回答を拒否したため、厳重に抗議しました。 約1時間半にわたるやりとりの概要を紹介します(要求項目ごとにまとめるなどの都合により、実際の時系列と前後している場合があります)。

 要求1 本年5月9日に当会及び特定非営利活動法人日本消費者連盟が御社との間で行った話し合い(以下「前回話し合い」と言います。)において、御社は「不良スマートメーターは内部が焼損する以上の規模の火災(炎を上げる等)は起こさないことをメーカーが再現実験で確認している」旨の説明をしましたが、「御社はその実験に立ち会ったのか」との質問に対してお答えいただけませんでした。その回答をお願いいたします。

 東電 再現試験には立ち会っていて、火災に至らないことも、当社も確認している。

 要求2 事前にチラシなどで通知することなくスマートメーターに交換した不適切事例が複数あるという私どもの指摘に対して、御社は前回話し合いの場において「施工業者に聞き取りしたところ、すべて事前に通知した」旨の回答をしました。私どもが「お客が言うことと施工業者が言うことのどちらを信用するのか」と追及したところ、「持ち帰って検討する」との回答でした。その検討結果をお示しください。
 また、事前に通知がなかったと主張している需要家らは、スマートメーターへの交換を納得していません。納得するよう説得してから交換すべきという経済産業省による各電力会社への指導内容に反しますので、原状復帰の意味からも、これら需要家らに設置したスマートメーターをアナログメーターに再交換してください。

 東電 施工業者とお客様のどちらを信用するとかしないとかという話ではなかったし、持ち帰って検討結果を示すという認識も我々はなかったので、お互いに誤認があったと思う。事前通知がなかったと主張しているお客様については、丁寧にご事情をうかがって、スマートメーターの必要性や効果についてご理解いただけるように、我々も丁寧に対応している。
 当会 施工業者に確認して、客には確認していないのか?
 東電 お客様に対して、個別に対応をさせていただいている。
 当会 個別に対応した中に、アナログメーターに交換してもらえた例もあるのか?
 東電 いえ、そういう事実はない。(当会が提出していた9事例の)お客様にご説明をして、了承を得たという意味だ。
 当会 アナログメーターに変えてほしいと東電に内容証明を出した事例は20以上ある。
 東電 お客様がまだご理解いただけてないということであれば、引き続き弊社のほうで、スマートメーター設置について説明を続けていく。お客様から個別に問い合わせがあった件で、まだ説明を尽くしている最中というところも当然あるかと思う。個別の対応をしっかりさせてもらっている。
 当会 それは結局「諦めろ」と言っているのと、ほとんど同じですよね。スマートメーターが嫌だと言ってるのに替えてしまって、もうアナログメーターには戻さないという前提で、本当に心から納得してもらえる説明ができる状況と言えるのか?納得してもらえない場合にはアナログメーターへ替えることを経済産業省も否定してないのですよ。
 当会 皆さんの前任者が、院内集会のときに、東電はスマートメーターの強制をしたことはないとおっしゃって、我々びっくり仰天したが、強制しないとおっしゃる以上は、ちゃんと言ったとおり、嫌だって言ってる限りは付けないで。
 東電 おっしゃることも分かるが、個々のお客様の事情は違うので、個別にお話しすることが一番正しいと私たちは思う。お客様の納得を得られれば交換するし、納得を得られなかったらお話をずっとする、それは間違っていますかね?
 当会 要求5とも関係するが、納得いかないから、私たちに相談が来る。納得を得られなかったらアナログメーターに替えるという結論にはならないのでしょう? 結局、納得いかなければずっと引き伸ばして、相手が諦めるか、死ぬのを待つということですよね。
 東電 いや、そんなことないです。
 当会 いや、原理的にそうなる。
 東電 過敏症の方とかについては、通信部を外すことで対応してきた。
 当会 通信部は簡単に外せるので、また簡単に付けられそう。だから、勝手に付けないように一筆書いてくれと東電に頼んでみるよう相談者にすすめているが、書いてくれた例はまだ1回もないようだ。また、将来的には一体型のスマートメーターにすると東電は言っており、そうなったら通信部が外せなくなるのではないか。そもそもチラシもまかれないで勝手に交換されたので、大変申し訳ないが、東電が信用できないので、通信部外しも信用できないという方も当然いる。
 当会 通信部を外した人に関しては、もう二度と取り付けることはないか?
 東電 取り付けません。通信部を取り外したお客様については、取り付けないという運用になっている。ヒューマンエラーはあり得るので、それが起こらないようにもちゃんと対応する。
 当会 ヒューマンエラーとは何か?
 東電 万が一(間違えて通信部を)付けてしまった場合でも、外す。通信部を取っているお客様のメーターを替えるときに通信部を付けるということ自体、当社の運用の中にはない。
 当会 プライバシーの問題も含めて総合的に見て、通信部を外しても解決しない問題がある。そこまで勉強した上で拒否している。我々もいろいろな方から相談を受けているが、そういう考えの方々は少ないけれども必ずいる。そういう人たちに対して、ずっと永遠に、何を説明していくのか。納得を得るために説明するのはもちろん皆さんの仕事だからやっていただいて構わないが、それでもなおかつ、最終的に納得できない人に対して、どうするのか。最終的には、スマートメーターを強制するのか。
 東電 お客さんの考えと、弊社の考えにずれがあるとすれば、そこは当社の見解をご説明していく。お客様の個別の事情をお聞きしながら、当社側の見解を丁寧に説明していくというところから、スタートすると思っている。
 当会 そこからスタートして、ゴールはどうなるのか? 永遠に走り続けるわけか?
 東電 事情によってゴールは違う。
 当会 だから、その中に、アナログメーターを認めるというゴールを一つ設けていないと、おかしくないか。そうしないと、いつまでたっても、ゴールに着けない人たちがいますよね。

 要求3 山梨県在住米国人方に居住者が納得していないのにスマートメーターが設置され、配線がされておらず、電気が供給されていない件について、御社は前回話し合いの場において「居住者から電気契約の申請が出ていないから」旨の説明がありました。これに対し、スマートメーターの配線が接続されていない理由になっていないと、私たちは批判しました。この経緯についてご回答ください。
 また、この米国人もスマートメーターに納得していないので、上記2と同様の理由により、アナログメーターに再交換してください。電力が供給されない状況が長期に続いているのは御社による重大な人権侵害であることを深刻に受け止め、ただちにアナログメーターへ交換のうえ、電力を供給してください。

 東電 メーターのお客様側の(屋内への)線がつながっていない理由について過去の経緯を確認したが、スマートメーターを付けた後に線を外したという経緯はなかった。アナログメーターが設置されていた時から外れていて、スマートメーターに取り換えた時にもそのままにしていた。
 国の方針であるエネルギー基本計画が出されているので、アナログメーターの提供は当社は行っていない。需要家様にはそれを説明するとともに、スマートメーターから通信部を外した状態で電気が供給ができるように提案をしている状況。細かいやりとりは、メールとか文書等でのご質問に対して文書回答をさせていただいている。
 当会 電力小売業者である東京電力エナジーパートナーの約款は、スマートメーターを義務付けていないと弁護士が話していた。速やかにアナログメーターに交換して電気を供給すべき。

 要求4 東京新聞報道によると、スマートメーター交換後に、電気料金が2~8倍に跳ね上がった需要家が複数います。その原因について、お示しください。

 東電 個人情報の取り扱いにより具体的な回答は控えさせていただきたい。取り付けているスマートメーターは、全て検定に合格したものだ。
 当会 ふざけるなと言いたい。たとえば、自動車に欠陥があって事故が起きて、どこのだれが亡くなったというのはプライバシーだが、欠陥自体はプライバシーと何の関係もない。
 東電 今の前提は、スマートメーターに欠陥があった場合の話。今、そこまで我々としてもはっきり申し上げられないから、何が原因か…。
 当会 それならば原因はまだ調べ中で分からない、と言えばいい。なぜプライバシーとか言う?
 東電 冒頭申し上げたとおり、取り付けるスマートメーターは、検定に合格したもの。
 当会 検定に合格したもので異常が出てるのだから、なおさら深刻なのでは。
 当会 日本だけでなく、海外でもスマートメーターの誤検針が起きている。
 東電 そういった事例があったらメーターを取り外して検定所なり、メーカーなり、自社で点検した上で、メーターが問題ないということは確認させていただいている。
 当会 問題ないのに、なんで誤検針が?
 東電 まだ、はっきり分からない。
 東電 メーターに問題があると限った話ではないと思っていて、当然、使用側にも問題があるかも分からないし。
 当会 料金が8倍になるような使用側の問題とは何?
 東電 いや、一般論で…。
 当会 「プライバシー」という言葉が出てきた時点で、東電は「答えられません」と言ったのだと私たちは受け止める。場合によっては、答えられる原因、というか、答えなければいけない原因かもしれないではないか。
 東電 答えられるか答えられないか、今、はっきり言えません。
 東電 それでよろしいか。
 当会 それだったらいいと思う。

 要求5 御社は従来から「スマートメーターの強制はしていない」旨、強弁していますが、スマートメーター以外の選択肢がない現状は、事実上の強制に他なりません。強制すべき法律がない以上、強制すべきではありません。御社がスマートメーター設置を説得してもなお納得しない需要家については、アナログメーターを設置してください。

 東電 国が定めたエネルギー基本方針に基づいて2020年までにスマートメーターを設置する。引き続きお客さまにスマートメーターの必要性や効果を理解していただくように丁寧に対応していく。前回と我々のスタンスは変わらない。【まとめ・網代太郎】

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